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罠師の魔王と取説少女のダンジョン経営(旧題:六畳一間ダンジョン攻防記)  作者: 佐崎 一路
地下2階 オープンに向けいろいろと改造しました
34/50

地下2階 7部屋(その11)

 さて、相手は元ダンジョン・マスターらしい。

 現在のステータスや名前(もしかすると見かけも)偽装されている公算が強いが、まず間違いなく俺よりも強くて経験豊富なのは間違いないだろう。

 本来はダンジョン・マスターが、準備期間中のダンジョンに攻めるのは規約違反で、下手をすれば一発でBAN(死亡)する案件らしいのだが、ダンジョンを持たない野良のダンマスに関しては運営でも考慮していなかったらしく、いまだに回答が来なくてヤミがマスター・ルームで呻吟している。


 悩んでいる間にマスター・ルームまで攻め込まれて、『Soul Crystal』を破壊でもされたら俺の方が一巻の終わりである。

 ヤミは『運営』は一種のシステムであると言っていたが、俺の見解としてはそのシステムとやらは人間の意思の延長線上に造られたものではないかと疑っている。

 なんとなく物事の価値観や自己満足なところが、人間特有のエゴに近いものが感じられるのだ。


 つまり、面倒ごとになった場合、結果をもって――この場合は、『Soul Crystal』が破壊されたことで――イレギュラーな事態をナアナアで済ませる。時間稼ぎをしているような気がする。

 要するに、カードゲームを使ったRPGなどで、ゲームマスターがゲームの進行上、著しくバランスが崩れた場合に、即興で勝手にルールを改正するような不条理がまかり通るということだ。

 

 そうならないためには、是が非でもこの場を自力で納めなければならない。

 とはいえ相手の立ち位置が不明である現在、迂闊な手出しもできない状況だ。


 そんなわけで、まずは相手の出方を見るために俺が直接、件のアレッタ・カルヴィーノ(偽名)と対峙することにしたのだ。

 ま、さすがに怖いので、ある程度距離を置けるこの地下一階のボス部屋において、亀裂を挟んでの邂逅となったけれど、相手の手に魔剣〈ノートゥング〉がある以上、ゆめゆめ安心はできない。

 いつでも逃げられるように『ダンジョン・ムーブ』の準備をしながら、俺はなるべく内心のビビりを表に出さないよう。手元のカンペを読みながら、ぶっきらぼうにアレッタに語りかけた。


「――さて。招かれざる客人よ。何故、我が家に土足で足を踏み入れたのか、その理由を聞かせていただけるかな?」


 攻撃の姿勢を見せたら、いつでも逃げられるよう彼女の全身の動きを子細漏らさず注意しながらの問い掛けである。

 一瞬、虚を突かれたような表情を浮かべたアレッタだが、

「……そう。気が付いているわけね」

 そう流暢な魔族語で返事を寄こした。


 あ、そういえばこの世界の大陸共用語なんてスキルもあったな。普通に魔族語が通じる相手だからよかったけど、今後、現地人と話す機会もあるかも知れないから、そっちのスキルも習得しておく必要があるだろうな。まああ、この場を切り抜けたらの話だけれど。


 それから自分に喝を入れるように、ひと呼吸おいて、

「ならば問答は無用よ! 命が惜しくば、お前の持つ『Soul Crystal』の権利をあたしに譲渡しなさい!」

 そう高らかに宣戦布告してきた。


「『Soul Crystal』の権利? 何のために?」

 というかそんなこと可能なのか?


「あたしがこのダンジョンを有効活用するためよ! あたしはアレ(・・)とは違うわ。譲渡をされたかといって、あんたを殺すことも、着の身着のままで放り出すこともしない。必要なスキルは与えるし、協力するなら場合によってはこのままダンジョンに置いてやってもいいわ」

 さらにアレッタは、なんか無茶苦茶を言う。

 よくわからんが、もしかしてこいつ居直り強盗……それも一番たちの悪い地上げ屋みたいなもんか?


「……そんな要求が聞けるわけがないだろう」

 常識的に考えて。


「だったら、力ずく……ってことになるわね」

 それこそ望むところだという口ぶりで、〈ノートゥング〉を構えるアレッタ。目付きが尋常じゃない。これは本気だ。


《アイアン・ゴーレム》も、俺の危機を感じたのかファイティングポーズを取って、一歩アレッタの方へ足を踏み出した。


「いや、そもそも準備期間中のダンジョンを他のダンジョン・マスターが攻撃すること自体が規約違反だと知らないのか?」

「いまのあたしはダンジョン・マスターじゃない。一介の冒険者よ!」

「そんなへ理屈が通じるわけがないだろう? 運営に確認をしたが、お前さんは元ダンジョン・マスターとして登録されたままになっている。その能力や武器がその証拠だろう?」

「――っっっ!?!」


 ま、登録はされているけれど、だから今回の事例が規約違反になるとは、いまのところ回答が来てないんだけどね。

 そんな俺の嘘ではないけれど本当の事でもないハッタリ(ブラフ)を前に、しばし途方に暮れた表情を浮かべるアレッタ。


 うん。運営から回答がないってことは、俺以前に問い合わせた事例もないってことだろうから、アレッタも本当のところは知らない筈。このまま目的を見失って帰ってくれれば……。


「嘘よーっ!! 嘘に決まっているわ!! あたしは『Soul Crystal』を手に入れて、ダンジョン・マスターへ戻るんだから~~っ!!!」


 だが、そうは問屋が卸さなかった。

 現実を受け入れられないアレッタは、駄々っ子のように絶叫をして、手にした〈ノートゥング〉を力任せに、俺目がけて数メートルの距離を隔てながらも振り下ろす。


 刹那、俺の目には〈ノートゥング〉からほとばしる剣線――というか、白線のような光る線――が一直線に向かってくるのが見えた(﹅﹅﹅)


 右に避けるとわずかに足が引っかかって切り飛ばされる。逃げるなら左だ!

 瞬時にそう本能的に悟った俺は、恥も外聞もなく左へ転がって躱した。


 それと同時に、5mは離れていたはずなのに、さっきまで俺がいた位置の地面がぱっくりと割れて、さらには背後の壁にまで傷が奔っていたほどである。


(やべえっ、ここにいると死ぬ!)

 そう悟った俺は、ほとんど本能的に地下二階へ降りる階段へと転がり落ちて行った。


「あ、待――」

 追いすがろうとしたアレッタの前に、《アイアン・ゴーレム》が立ち塞がるのを視界の隅に留めながら、

(これが俺のAuthority、『真眼:君子危うきに近寄らず』の効果か!)

 そう確信するのだった。

8/21 誤字修正しました。

×そう確信るるのだった⇒○そう確信するのだった

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