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50・黒猫姫、再び

綾萌「悠一、大変だ。一大事だ!」

佐山「何だ急に」

綾萌「妊娠したい!」

佐山「近付くな」

綾萌「何を言っている。冗談に決まっているじゃないか」

佐山「なら何故にじり寄って来る。離れろ」

綾萌「ふっ、それは例え神であっても不可能だ」

佐山「お前無神派だろ」

綾萌「そんな細かい事を気にしてはいけない。抱きつきたい」

佐山「なっ、やめろ!うわぁぁぁ!」




つづーく

早朝。深娜は不可解な圧迫感に魘されていた。苦しい程では無いのだが身動きも満足に出来ず、まるで金縛りになった様に動くことが出来ない

「・・・・ん」

不快な目覚めに、思わず険の表情で覚醒した深娜の目の前に現れたのは


「・・・・・みみ?」

黒いふさふさの毛に覆われた耳が2つ。綺麗な三角形は猫の耳。そして艶やかな黒髪が伸びている

「・・・・ふゅぅ」

黒猫姫こと美鈴ちゃんが胸に顔を埋めて熟睡していた

「・・・・・・」

暫しの沈黙の後、黒猫姫の頭を掴んで引き剥がそうとするが、まるで吸い付いてる様に離れない。寧ろさらに顔を押し付けてきた美鈴ちゃんに、朝から盛大な溜め息を吐いた深娜は、霞をヤろうと心で誓い黒猫姫の頭を優しく撫でた





「おぅ。おはよう」


朝の挨拶の返事にボディー一発頂きました。最近気付いたけどさ、たまに生きてる事が嫌になってくるんだよコレ。ノーモーションの癖に威力有りすぎ。膝をついてなんとか耐えきったが、それでも許してくれない深娜は追撃の蹴りを構える。しかしそこに割って入ってきたのは、長身で少し古風なしゃべり方が特徴の飛高さん

「貴様。どんな権利を持って霞殿に手を上げる」

「返答次第じゃ私達も動かなきゃいけないんだよねー」

深娜の背後にはいつの間にはつぐみさんが立っていた。つかアンタ等どっから沸いてきた。今までのここに居なかったよな

「美人は神出鬼没なんだよー。霞さんもそこんとこチェックね」

相変わらず中学生並みの身長しかないつぐみさんは、ニコニコ笑いながら包丁なんて物騒な物を持っている

「して、返答は」

「今まで隠し事してて昨日本人以外の口から聞き出した。しかも詳しい説明をしないまま何も言わないでさっさと出掛けたんだけどこの男。殴られても文句言えないわよ」

「・・・・」

「・・・・ふむ」

反論の余地も無い俺と考え込む飛高さん。すると深娜の背後にいたつぐみさんが手招きで飛高さんを呼ぶ

ポニーテールを揺らしながら近付いた飛高さんになにやら耳打ちをして部屋の隅に移動。俺と深娜は取り敢えず見守ることにした


数分後に話が纏まったらしく、茶髪低身長とポニテ長身のデコボココンビが俺の両サイドに着いて立たせる。それから両腕をがっちり掴み足を踏む。完全に拘束されました

「ささ、みーちゃん。今の内に一発」

「霞殿、今は耐える所です。見せ場ですよ」

「えぇ!情状酌量の余地はこれっぽっちもなぐぽぉっ!?」

この女、いつか俺を殺すかもしれない。本気で危機感を覚えながら現実世界にしばしお別れした






目を醒ましたら目の前に耳があった。いや冗談抜きでさ、猫耳が見えるんだよ

そっと猫耳付の頭を優しく撫でると、くすぐったそうに身を捩る黒猫姫。ゆっくり起き上がった美鈴ちゃんは満面の笑みを浮かべている

「お早うおね・・・お兄ちゃん」

「うん、お早う。何を言いかけたかは聞かないよ?」

全力で頷いた美鈴ちゃんは、俺の上から退くと足早に深娜の所へ走っていき、何故か胸を揉んだ

三秒程して大変満足したらしく、極上の笑みで帰ってきた

取り敢えずこの件に関しては見なかった、とゆう事で目撃者の中での意見が一致したのでいつも通りの朝を向かえた。向かえたったら向かえた!




俺の胡座の上でご満悦の美鈴ちゃんは、背を預けて耳を揺らしている。俺の横ではうつ伏せになって美鈴ちゃんにちょっかいを出してるつぐみさん。そして台所から人数分のお茶を持ってきた飛高さん。湯気が見えるが気のせいに違いない

「どうぞ。つぐみのはここに置くぞ」

にゃ~と鳴いて返事を返すつぐみさんを一瞥して、リンゴジュースを美鈴ちゃんにわたす

「ありがとうひー姉さん」

「・・・ひー姉さん?」

飛高さんに渡された熱いお茶を平然と飲む深娜は眉をひそめる

「ひだかだからひー姉さん。つぐみはつー姉さん」

コップを両手で持ってゆっくり煽る美鈴ちゃんは、未だ寝てる二人の部屋を見る

「かやは・・・かー姉。こうちゃんはこぅ姉」

何気に呼び捨てなんだが他意は無いだろうと思って指摘はしない。さん付けの有無は単に歳の差だろう

「霞さーん。今失礼な事考えてなかった?」

「いいえ全然」

お茶を溢さないようゆっくり飲みながら軌道修正

「深娜はなんて呼ぶ?」

「お姉ちゃんはお姉ちゃん。お兄ちゃんはお兄ちゃん」

当たり前と言わんばかりに宣言した美鈴ちゃんは、お姉ちゃんこと深娜をジッと見る

「・・・・何?」

「ママじゃダメ?」

深娜が速効で噎せたのは言うまでも無い



更に小一時間程して、ようやく目覚めた二人を出迎える黒猫姫とそのお供


寝起きで若干頭の回転が悪い二人はボーっと美鈴ちゃんを眺めて首をかしげる。傾げてから俺に視線を向けてゆっくり近付いてくる加弥。何となくお茶とジュースを飛高さんにパスして美鈴ちゃんをつぐみさんにパス。防御の姿勢で待ち受けると目の前でペタンと座った加弥

・・・あれ?まだ寝てるなコイツ

半開きの目で覗き込んできた加弥は、そのまま俺の膝の上に座り二度寝に突入した

「かーやー朝ですよー。早く起きてー」

「みゅう・・・・」

ダメだこれは。完全に睡眠モードに突入しやがった。軽く揺すってみるが逆に手が捕まってしまった

や、ちょっと待って。掴むのはいいけど抱き締めるのやめてくれない?必然的に手は胸の方に向かっちゃうからさ。ダメだよマジで

本気で抵抗してると、立ったままボーっとしてた洸夜が漸く覚醒した。覚醒一発目で俺と加弥の醜態を目の当たりにしてキレた

「霞君の無節操!」

よく分からないキレ方をした洸夜は、加弥を無理矢理ひっぺかしで俺の上に座った

「ここがいいのー」

起きてない!この子まだ寝惚けてる!重度の寝惚けに陥ってる!

弾かれた加弥は美鈴ちゃんに抱きついて頬擦りしていた

「ん~モチモチ」

「かー姉くすぐったい」




朝から大人二人に醜態を晒した寝坊助二人組は、猛省しながら部屋の隅で体育座りしている。時折虚空を眺めて赤面し、再び頭を抱える行動を繰り返す二人は一時保留扱いとして、朝食作りに台所に向かう

後ろをちょこちょこ付いてきた美鈴ちゃんは、手伝いがしたいらしくずっと俺を見上げている。包丁は使わせちゃ駄目だから皿の準備やハムやトマトを取ってもらっているが・・・切りたいの?

「(コクコクコク)」

激しく頭を振る美鈴ちゃんの目は真剣だったので俺は折れてしまった。椅子を引っ張りだしてきて美鈴ちゃんを立たせる。包丁を持たせて後ろから手を重ねる

昔母親にこうやって教えてもらっていたもんだ

ピザトーストの材料を切り揃え、お好みの盛り付けとイタズラ様の不思議トーストを作製。後はトースターでチンするだけだ

「お兄ちゃん、ありがとうなの」

「どういたしまして。でも一人で包丁は使っちゃダメだからね?」

「うん。約束するの」

椅子から背中に飛び移った美鈴ちゃんを背負い直して居間に向かう

いつの間にか沸いてきた慎を含めたら男女比率2:6。なんつうかクラスの連中に知られたら確実に血祭りにされるよな絶対

ソファーに腰掛けようとすると、近くにいた飛高さんに器用に飛び移り肩車してもらっている

「いやぁ美鈴っちと飛高さんの組み合わせ姉妹に見えるな。霞もそう見えね?」

「お兄ちゃんそれ誰?」

「ひ、ヒデェ!美鈴っち何気にひでぇ!」

「美鈴ちゃん。コレは見ちゃダメだよ?駄目の代表だから」

「コッチもヒデェ!お前等俺に恨みでもあんのか!」

「いや、なんつうかな」

「そんざい否定?」

「俺何でこんなボロクソ言われなきゃいけないの!?」

取り敢えず殴ってから無視する事にして座りなおす。それにしても確かに二人とも姉妹っぽく見えるな

「ねーねー、ひーちゃん的に姉妹って言われてどうなの?」

「・・・・うむ」

「・・・・・」

肩車してる美鈴ちゃんを持ち上げて両脇に手をかけ顔を合わせる

簡単にやってるが、小学校高学年程の子を腕の力だけで支えてるぞこの人。肘伸びてるのによく出来るなおい

しばし見つめ合っていた二人は、何かを分かりあったのか頷き合ってまた肩車を始めた

「問題ない」

「ひー姉さんやさしい」

まぁお互い認め合っているならいいんじゃないかな?

「ひーちゃんって子供大好きだもんね」

「ああ。子供の純粋な眼が好きだ」

飛高さんは美鈴ちゃんを肩車したまま、器用にお茶を飲んでいる

ホント姉妹みたいに見えるなー。美鈴ちゃんも楽しそうにキョロキョロ見回している

「昔は霞殿ともよく遊んでいましたな」

「そういえばそうでしたね」

「ええ。霞殿がまだ小学1年だった頃は此方に伺った事もありましたね」

「いやぁ今思うと懐かしいですね」

「一緒にお風呂にも入りましたしね」

「そんな事ありまし・・・・・殺気!」

ソファーを飛び越え裏に隠れる。さっきまでいた場所には加弥が飛び蹴りをかましていた

「なにするのさ加弥!めっちゃあぶねぇよ!」

「シャラップ!なにそんな羨ましい体験してんのよ!」

「えぇ!?記憶にすらないよそんな事!」

「だまらっしゃい!コウちゃん!霞確保!」

いつの間にか背後に構えていた洸夜に成す術なく捕まり御用となってしまった。飛高さん、アンタのせいだぞ

視線で飛高さんに抗議をすると、何かを感じたらしい大人のお姉さんは頷き台所へ向かった

全員が首を傾げる中、戻ってきたお姉さんは問題ないと頷いて見せた

「まだパンは焼けていなかったぞ」

小さい頃培われた僕等のアイコンタクトは錆びれてしまったようだ





私的制裁も無事?に終え、皆でピザトーストを頬張っている。無論意図的にハズレを引いたのは慎である

「なんつうか、ピーマンの種って食感としちゃ悪くねーけどよ、具が種だけは無しだろ。ただのケチャップ味のパンだぞ」

「だからハズレ」

「さいですか」

とりとめの無い会話を交わしながら食べ終えた朝食。次のプログラムは合同勉強会となっている。いかにきちんと勉強して、手早く課題を終わらせ残りの夏休みを満喫するか。そんな使命に燃える僕達・私達は今日も学問に励みます

「つうわけで加弥、いい加減この公式覚えようね?去年の夏休みも同じ事やった筈だよ?」

「えぅぅ。だって似たような式沢山ありすぎるんだもん」

「加弥ちゃん、ほら、ここの計算もコッチと同じ式が使えるから思い出して?」

「あれ?いつこの問題解いたの!?」

ダメだ。加弥にここまで期待するのは間違いだ。少しずつ分かって貰わないとほんの少し前の記憶すら怪しくなる

洸夜もそう感じたらしく、前の問題から一緒に復習を開始した

一方、加弥と同レベルの慎に教えてる深娜先生はというと

「・・・姉御、ここ分かんねぇんだけど」

深娜はチラッと問題を見てから教科書をパラパラと捲り、問題の部分について載っているページを開いて渡した

「そこよく読みなさい」

「・・・あざっす」

教科書を受け取った慎は俺に眼で訴えてきた

なに?スキンシップが欲しい?一昨日来やがれ

そう送り返して今度は美鈴ちゃんを見る。美鈴ちゃんに熱弁する飛高さんとつぐみさん。理数系につぐみさん、語学関係は飛高さんが担当らしい

「よーし。みっちゃん復習いってみよー!はい問題!」

「問1、化学式HNO2とは?」

「あしょうさん」

「はい正解!次いってみよー!ひーちゃんお次のお題!」

「問2、菌類のうちで、虫に寄生していろいろな形の小実体をつくる菌の総称は?」

「とうちゅうかそう」

「Excellent!ひーちゃんなんかノってきたよ!次いってみよー!」

「問3、シェークスピア作四大悲劇、【マクベス】【オセロー】【リア王】後一つは?」

「ハムレット」

「みっちゃん天才!もうおねーさん超嬉しい!」

「因みに『大根役者』の事をハムとも言うそうだ。下手な役者程ハムレットをやりたがる事から由来されている」

「ひーちゃん何気にうんちく知ってるね」

「ひー姉さん、マクベスってどんなの?」

すると何故か俺を手招きする飛高さん。なんすかいったい。ご高説でもしろっていうの?

「簡単に例えると、霞殿がマクベスとしたら、私やつぐみにそそのかされてそこにいる皆を倒す。そして王になるが没落するといった話だ」


間違ってはいないが態々俺を呼ぶ必要あったか?後美鈴ちゃんに教えてる項目ほぼ確実に夏休みの宿題関係ないよな?

「みっちゃんなら夏休みの宿題終わってるよ?後は未来の大学目指して勉強だもん」

「美鈴には、是非東大を目指して貰いたい」

大人のそんな願いを知ってか知らずか、不思議そうに見上げてる美鈴ちゃん。まぁ本人がいいなら別にいいけどさ



そんなこんなで無事今日の学習を終えた面々は好き勝手楽しんでいる

慎とつぐみさんはテレビの前で尋常じゃない指さばきでゲームで対戦している

「ふっふっふ。やるじゃんまこちー。アンタ強いよ」

「つぐみさんもつえぇ。幸澤さん並みにつえぇ」

「ほぅ。まこちーがそこまでいう幸澤って人とも戦いたいなぁ」

「そこら辺は霞か姉御に相談して。多分ネットランキングで超上位クラスだから」

「むふふー。楽しみだなぁ。あ、因みに私のランキングネームは『つーみん』だから」

「うぇ。つぐみさんも超上位じゃん。こりゃ楽しみだなぁ。あ、俺上位で『FUGIMAKO』ね」

「『FUGIMAKO』?ふぎになってるよ」

「あん時ローマ字とかも分からん馬鹿だったからスペル間違ったんだよな」

「あはは。ばーかばーかふぎまこ」

「うわぁ超大人気ねぇこの人!」

そんな会話をしながら、画面から一瞬も目を逸らさずコマンド入力してるアンタ等の方が俺から見ればばーかだよ



他の女子組は美鈴ちゃんと遊んでいる。遊んでいるっていうか深娜は読書、美鈴ちゃんは深娜に膝枕してもらってて加弥と洸夜とお話。飛高さんはパソコンを使ってちょっとお仕事中。何だかんだ爺さんを脅して無理矢理貰った有休だが、真面目な飛高さんはこんな時でも仕事はこなすみたいだ


取り敢えずつぐみさん、あんたも飛高さんの1/5くらいでいいからデスクワークしろ。なんで俺がやらなきゃいかんのだ


ちょっと頭にきて、お昼の素麺の時につぐみさんとふぎまこのお椀に練りわさびを大量に入れて、少しスッキリして午後も悠々自適に過ごした俺達。無論つぐみさんから私的制裁もあったが、飛高さんと美鈴ちゃんが直ぐに助けてくれたので打撲とかもなかった。あの人どっからトンファーとか持ち出しやがったんだ


まぁそんなこんなでお風呂Time。女性陣に最初に入って頂こうと俺は思うんです。ほら、男が入った後に女性が入るって少し抵抗あると思うからさ。だからね、何が言いたいかって言うとさ

「美鈴ちゃん、深娜お姉ちゃんと入ろうね?」

「いや。今日はお兄ちゃんと入る!」

「美鈴、いいから早くいくわよ!支度しなさい」

「うーー!」

深娜に引き摺られながら脱衣場に消える美鈴ちゃん。つぐみさんも何故かついていったので必然的に加弥と洸夜は飛高さんと入る事になった

脱衣場の方でつぐみさんが『みーちゃん胸デカ!』とか『お姉ちゃんおっきい。つー姉さんちっちゃい』とか『ひ、ヒドイ!みっちゃん何気にヒドイ!』とか聞こえた気がするけど絶対気のせいだ。うん。僕何も聞こえない!そう自己暗示しながらお風呂上がりのデザート作り。白玉餡蜜を飛高さんと作りながらのんびり時間を潰していると居間から加弥が顔を出す

「そーいえば飛高さん達って明日もお休み?」

「いや。残念だが明日の昼にはアソーレスに向けて出発しなきゃいけなくてな」

「あそーれす?え?ゲームとか?」

「ちがうよ。まぁポルトガル領の諸島だよ」

「ああ。空路と航路の件で用があってな。明日は何かあったのか?」

加弥は町内に配られていた広告を広げる

「明日近くで花火大会があったんですよ。皆で行きたいなーっと思って」

洸夜も加弥の後ろで頷きながらカメラを磨いている。飛高さんはというと心底悔しそうな顔でお団子を丸める

「そうか。是非私も参加したかったんだが。代わりと言ってはなんだが美鈴は当分ここで世話になる。美鈴と一緒に楽しんでくれ」

「えぅー。二人はむりかぁ。でも写真撮ったら送りますからね」

「あぁ。楽しみにしているからよろしく頼む」

「りょーかいしました!私達もお土産楽しみにしてまーす」

ちゃっかり物々交換の約束なんざしてる加弥だがお互い楽しそうに笑っているのでいいんだろう

隣で丸めながらのほほんとそんな事を考えていた



少しして風呂から上がった三人組は、スタイルに一喜一憂しながら出てきた。深娜は相変わらず無表情に髪を拭き、美鈴ちゃんは自分のを見下ろして拳を握って何か決意に燃えている。つぐみさんはなんか全てを諦めた様な達観の境地に立っている。でもきっと心の中で号泣してる気がする

次に脱衣場に向かう加弥と洸夜。いってきまーすと手を振る加弥に対して手を振る俺と飛高さん

「・・・・え?何で飛高さんここに入るの?加弥達と一緒に入らないの?」

「ん?霞殿と一緒ではないのか?」

「当たり前じゃい!早く風呂入って来なさい!」

「そうか。残念だ」

何故か本気で残念そうに加弥達に続いた飛高さんを送って溜め息をつく。あの人昔もあんな感じじゃなかったかな。そんな事を考えていたら脱衣場では加弥の悲痛な声がこだました


「ねぇ霞さん」

「ん?なんすか」

「霞さんって巨乳派?」

「慎ー。風呂の準備しとけよー」

「うわぁなんであからさまに話逸らすかな。もしかして図星?」

「ヒガミで俺に絡むなよ。つぐみさん中学から全然変わんないって飛高さんも喋ってたし」

「うわぁぁん。ひーちゃんとグルで虐めるぅぅ。みっちゃん慰めてぇ!」

美鈴ちゃんに泣きつくつぐみさんは取り敢えず無視しておくとして、爺さんの私用携帯に美鈴ちゃんの生活用品一式を送る様に残しておいた。明日は花火大会だし浴衣とか頼んだほういいかな。あと寛平も着たいしなー

とか色々考えていたら飛高さんを先頭に、洸夜と加弥も帰ってきた。つぐみさん同様心の中で号泣してる加弥は、美鈴ちゃんに泣きつくつぐみさんを見付けると一緒に泣きついていた。アンタ等どんだけ心に傷を負ってんだよ


まぁどうやっても俺に出来る事が無いので放置しておく事にして、慎と共に脱衣場に向かう

「なぁ霞」

「ん?」

「明日の花火大会だけどよ、お前誰かと組むのか?」

上着を脱ぐと、無駄なく引き締まった上半身の慎は不可解な事を聞いてきた

「ん?なんでたよ。皆で回ればいいじゃん」

そーなんだけどよー、と言いながらタオル一丁で浴槽に向かう慎の後を追い、一緒に湯を浴びる

「いやな、ちょろっと加弥達が漏らしてたんだけどよ、二人っきりでデートとかしたいなって言っててな」

ワシャワシャと頭を洗った慎は湯に浸かり、うぅぅぃとか親父臭い呻き声をあげている

いいな短髪は。ついに深娜を超え、加弥に追い付く勢いで伸びている髪を丁寧に洗いながら先程の事を考える

「うーん。デートねぇ。でもよ、これ一人選んだら他の二人に絶対恨まれるよな」

「・・・だよな」

その辺は話し合いで是非とも解決して頂きたいんだが。湯船につかりながら、ややこしい事なんなきゃいいなーとか考えながらタオルを頭に乗せた







さて、先に慎が上がったのでのびのびと湯に浸かり、先程の事をもう一度考えてみた

が、結局いい案が浮かばなかったので皆で話し合ってもらう。そんな他力本願に身を任せることにして風呂から上がる

肩にタオルをかけ、髪を拭きながら居間に入ると女性陣が一斉に俺を見た。思わずたじろぐ俺を他所に、飛高さんと美鈴ちゃん意外はなんか悔しそうな眼差しを送ってくる。何だよ

「ねぇ霞、なんでそんな色っぽいの!私達になんか恨みあるの!」

なんか飛び掛かってくる加弥を何とか避けて距離を取っていると、つぐみさんが人差し指を横にして俺に重ねてからうーんと唸っている

それから周りに耳打ちすると皆がつぐみさんに真似て俺を見てやっぱり唸った

「え、何?」

「霞さんの胸の部分隠したら女の子にしか見えないなーって思って」

俺がつぐみさんに飛び掛かったのは言うまでもない

どーも。るーるるるりららーなウドの大木です


さて、次回はいよいよ花火大会。ここは一つ、ラブモード全快で霞少年と誰かの二人っきりシチュエーションを計画しております


誰になるかはその時の気分次第。あと読者様の何気無い一言に多大に左右されますので、活動報告(活動報告だったかな?)にでも書き込んで頂ければ幸い


それでは今日はこの辺で


しーゆーねくすと

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