48・海だ!宴だ!バースデーだ!
佐山「なんだ。何か様でもあるのか?」
綾萌「いやな、最近ふと思った事があってな」
佐山「なんだ」
綾萌「来年辺りには子作りでもしたらどうかと」
佐山「くたばれ」
綾萌「何を恥ずかしがっている。夫婦なのだから当然じゃないか」
佐山「脳が膿んでいるのか?病院に行け」
綾萌「産婦人科か?」
佐山「・・・・・・」
綾萌「ふっ、恥ずかしがってる悠一も可愛いな」
つづく?
前回のあらすじ
睡眠系捕食者と化した深娜に捕まってしまった哀れな我輩。まぁ最終的に膝枕で許してくれたんですがそんな誤解いっぱいの我輩を目撃してしまった愉快な仲間達+α
頑張れ我輩。きっと拳が君を待っている
さて、軽い現実逃避も程々に取り敢えず被害拡大を防ぐため皆さんを深娜邸にご招待・・・・・していいよね?
「・・・・・」
人様の膝の上で寝返りをうつ深娜は虚空に手を伸ばししばしさ迷った後、人様のシャツの端を捕まえ思いっきり引っ張りやがった。繊維が切れる音がしたので慌てて捕食手を引き剥がすと代わりに手を捕食された
「うぅむ。まさか大川先輩のこんな激レアシーンが見れるとは」
「大川の姉御・・・・なんつうか超可愛い!」
親衛隊2名がうんうんと頷き携帯を構え始めたのでやんわりと注意しておこう
「お二人さん、取り敢えず彼処に倒れてる三人部屋で寝かせて下さい。今深娜が起きたら間違いなく俺もお二人も処刑されますよ」
写メを起動しはじめた二人は、構えた姿勢のままお互い虚空を見て、何かを確信したのかうんうんと頷き全速力で加弥達の元に駆けていった。どんだけ怖いんだよ
さて、ギャラリーもいなくなったし深娜には起きてもらうか
自由な手を深娜の髪に差し込みゆっくりとかきあげる。くすぐったいのか身を縮める深娜は更に手を強く握っていた
「そろそろ起きろ深娜。あらぬ誤解を解くために今すぐ目覚めろ」
髪から離した手を肩に乗せめいいっぱい揺らしてやった。30秒ほど震度6強の揺れを続けていると深娜はうざったそうに俺の手を払いのけゆーっくり起き上がった
「・・・・気持ちワル」頭を抑え俯いたままあーとかうーとか超小声で呻いてる深娜だが真相を知るよしもないので瓶の山を指さす
「あれだけ飲めばそうなるだろ。止めたのに聞かないから」
「・・・飲み過ぎね。ちょっと水ちょうだい」
「おう。持ってくるから大人しく待ってろよ」
手を上げ返事を返した深娜を残し深娜邸に突入すると魂の抜けた廃人がソファーに横たわり加弥は加弥で泣きじゃくっていた
「よう霞、なんつうか刺激的な場面を見すぎて可哀想な二人が出来上がったぞ」
「やっぱり?取り敢えずちょっと二人見といて。深娜に水渡してから行くから」
「おーっす」
慎に番を任せ深娜に水を届ける。ゆっくりと飲み干したコップをテーブルに置き一息ついた深娜は瓶の山を見て苦い表情になる
「私こんなに飲んだの?昨日の記憶が少し曖昧なんだけど」
「4割りはお前に付き合って飲んだが残りは全部君だ」
「どうりで朝から具合が悪いわけね。一応薬飲んでおこうかしら」
「そうしとけ。それから来賓の方がおみえだぞ?」
「来賓?」
「お嬢」
言った瞬間速攻でぶん殴られた
「なんで早く言わないのよ!何時からいらしてたのよ!」
「ごめんウソ。ホントは加弥達」
無言でもう一発殴った深娜はいつもの1.5倍の睨みを効かせている
「・・・・ちょっと待って。加弥さん達が来てるのよね」
「ああ。ついさっき到着したぞ。あとお嬢親衛隊二人と山下」
「・・・・・もしかして寝てる所見られてたの」
「もうバッチリ」
頭を抱えあーとかうーとか唸りだした深娜の肩に色んな気持ちを込めて手を乗せ諦めを諭す。うざったそうに俺の手を払いのけた深娜は何か覚悟したのかゆっくり立ち上がり俺の襟を掴み強制起立
「貴方は二人の誤解を解きなさい。私は部下に用があるから」
「いえっさー」
再び深娜邸に踏み込むと相変わらずゾンビー加弥と脱け殻洸夜がソファーに横たわっており、男三人衆は隅で円陣を組み何か小声で話している
「で、実際姉御と霞君は何処までいったの?」
「俺が思うに・・・・あの時はお互いファーストキスだったろうな」
「沖縄の海辺でお互いファーストキス・・・・・青春まっしぐらだな」
「羨ましいなおい。姉御美人だけど浮いた話これっぽっちもなかったからよ」
「霞はモテるにはモテるんだが一歩踏み出さなかったからアレはいい経験だったな」
「うんうん・・・・ちきしょう彼女ほしーなー。慎君はいるのか?」
「・・・・友達からって事で京都の旅館の人が」
『裏切り者め♪』
「うぜぇ!」
無言で深娜と蹴りをカマしてから深娜は部下の襟を掴み隣の部屋に強制連行。俺は慎に再び蹴りをカマして先ずは加弥の元へ。聞き取れない程の呪怨ボイスが下の方からあがってくるのを無視して加弥の頭を膝の上乗せた
「うわぁぁぁん!なんで深娜ちゃんばっかりイイトコどりなのさぁ!」
膝に頭を乗せたままジタバタ暴れる加弥の髪に手を差し込みゆっくり撫でると、今度はもっともっとーとジタバタ暴れるので肩からうなじを指先でなぞってやった
「ひぃやぁぁっ!」
「かやー。あんまり我が儘言ったらダメなんだよ?」
「ふぁっ・・・!か、かすみ・・・」
うなじから離し頬に優しく触れる。加弥は頬を朱に染め視線があっちこっちさ迷っている
「別に深娜だけ特別扱いしてるわけじゃないよ。昨日は偶々お祝い事があったからさ」
「お祝い?」
「あぁ。実は昨日、深娜の誕生日だったんだよ」
「・・・え?誕生日!」
「そう。だからプレゼントって事でね」
「・・・・・ずるい」
苦笑いして再度加弥の髪を撫でると気持ち良さそうに眼を細め俺の手を掴む
「なら、私の誕生日にもしてくれる?」
「加弥がそう望むならね。1日くらい二人っきりでデートでもしようか?」
「・・・・・あぅ」
真っ赤になって両手で顔を隠す加弥に少々どいてもらい洸夜の隣に腰かける。洸夜は相変わらずピクリとも動かないので優しく頬を撫でる
「で、誤解は解けたのかな?」
「・・・うん。少しだけ納得した」
頬に触れていた手を両手で優しく包む洸夜は俺を見上げている
「なら・・・・私も誕生日にはデートしてくれるよね?」
「勿論」
「うん。なら昨日は大川さんに譲る」
でも、と呟く洸夜はゆっくり起き上がり身体を預けてくる
「大川さんも加弥ちゃんもしてもらったから私も少しだけ」
洸夜の香りがくすぐったく感じたがしばらく好きにさせてあげた
しばらくして隣から戻ってきた深娜と後ろを歩く親衛隊。何処と無くボディーを押さえてる気もしたがきっと蜃気楼かなんかに違いない。そうに違いない
「話はついたのか?」
「ええ。勘違いって言ったから。ねぇ?」
「はっ!そうであります!自分は何も見ておりません!」
「自分も朝早かったので寝惚けていました!」
「・・・だそうよ」
力とは時にナニモノにも勝る破壊力を持っている。人生の教訓を改めて実感した俺は朝食を作るため厨房へ向かった
「えー。深娜ちゃんとお酒飲んでたのー。いいなー」
人の膝の上でクロールするように暴れる加弥を持ち上げて隣に置く
不服そうに突っついてくる加弥の首筋を人差し指でつつーとなぞると仰け反って隣に倒れなんかピクンピクンといってる。こりゃ俺と同じ弱点だな
隣から強烈な殺気を感じたので咄嗟に頭を下げると頭上すれすれを裏拳が通過した。しかし華麗に舞い戻ってきた元捕食手ががっちり頭蓋骨をホールドした
「ヘイマコト」
「ンー。なんだいカスミボーイ」
「オレのアタマにアルのはナニかな?」
「ンー。マドハンド」
ツッコむ前に圧壊が始まってしまった
「ウララーーっ!」
深娜が乗ってきた小型船にロープで縛った木の板を取り付け水上スキーを楽しむ慎。最近思ったことは慎の奴何気に無駄スキルとしてスポーツ関係に滅法強い。なのに何故部活をしないのだろうか。多分だが慎が本気でスポーツに取り掛かれば全国も夢ではない気がする
そんな事を思いながら浜辺で座っていると背後から人影が伸びる
「かすみー。あそぼー」
いきなり後ろから抱きついてきた加弥だが数秒後に深娜に引き剥がされ互いに牽制し始めた。洸夜はと言うと二人の仲裁をすべく孤立奮闘している。まぁいつもの光景だと思い眺めていると突然三人の眼光が俺を捕らえた。一瞬殺気にも似た悪寒が走ったが加弥が突如極上の笑みを作ったので霧散していた
加弥は極上スマイルのまま俺の前にしゃがみ期待に満ちた眼で見てくるので取り敢えず頭を撫でてあげた
されるがままくしゃくしゃっと撫でられた加弥は不敵に笑い深娜の前で胸を張っている
何処と無く覇気が溢れそうな深娜を他所にコソコソと近付いてきた洸夜は目の前に正座して頭を下げる。位置的にさっきの加弥と同じ辺りで停止してるので同じくくしゃくしゃっと撫でてやった
恥ずかしそうに頬を紅くしながらペコリとお辞儀すると加弥の後ろに回って深娜に対峙した
あっれー。なんとなくでやってたけどこれ深娜にもしなきゃダメ?絶対深娜相手だとやる前にヤられるぞ
しかしそこであることに気が付いた。いやいや深娜がそんなことするわけが無い。深娜ならまず
ゲスッ
こうやって人の後頭部に蹴りをお見舞いして
ぐーりぐりー
そうそうこうやって人の背中を踏みつけて
「ふんっ」
腕を組んで見下してる事でしょう。だがここにいると追撃されそうなので転がるように深娜から距離をとり中腰で回避姿勢を構える
「深娜、恩とまでは言わんが昨日の今日でコレは酷いんじゃないか?」
「彼女でもない女の髪に気安く触れて何言ってるの」
「私気にしないもーん」
「私も。嬉しいから」
「・・・・・・」
ええぃ。俺を睨むな。構えるな蹴りに来るな!
臨戦体勢で対峙していると加弥と洸夜が深娜を背後から押さえた
「深娜ちゃんも霞の彼女じゃないんだからあんまり干渉しちゃダメなんじゃないの?」
「大川さんばっかりずるい。霞君と遊んで」
「遊んでない遊んでない。いじめられてるだけ」
美少女三人が水着姿でもつれあうのもまた刺激的過ぎる光景なのだがここは二人に感謝して逃走を図ろう
『逃げるな』
あんたらさっきまで敵対関係だったろうが。こんなときに共闘すんなや。こらこら加弥、腰に引っ付いちゃだめだめ。深娜がまた圧壊とかやりはじめるから。洸夜も対抗しないの!貴女たまに大暴走するでしょ!
そんなセカンドインパクト並みの抗争を横目に男三人衆はいつの間にやら釣りを始めていた
「いいねぇ若いって」
「うんうん。青春だね」
「ちなみにお二人どこみてる?」
「俺姉御の尻」
「俺先塚ちゃんの胸」
「俺加弥の太股」
三人はうんうんと頷き同時に海に唾をはく
「おいおいいくら姉御の彼氏候補でもハーレムはいけねえな」
「なんだあの羨ましい環境。ぜってー世界の敵だって」
「後何人増やせば気がすむんだよ」
男三人衆は見えないけど確かな絆で結ばれていた
そんな団結力をみせていると無線から聞き覚えのある声が聞こえる
『こちら幸澤。聞こえているかい?』
「あっ、こちら石田。どうしました幸澤先輩」
『もう少ししたらお嬢様とそちらに向かいます。準備をお願いしますよ』
「お嬢様も?あぁ了解しました。食料とか補充しておきます」
通信の切れた無線から視線を外した三人は未だ継続中のセカンドインパクを眺めながらうんうんと頷き同時に海に唾をはく
『気楽なもんだなぁえぇおいこの世界の敵め!』
さて、セカンドインパクも深娜の暴走により終結したわけだが・・・あれ?慎どこ行きやがった?
「かすみー。こっちには居ないよー」
「部屋にもいなかったよ。石田さんも森下さんもいなかった」
あれ?三人衆何処いったんだ?よくみたらガラスが割れてた船もねーや
「ほっといていいんじゃないの?どうせその内戻ってくるでしょ」
「かもな。それに沖で釣りしてるかもしれないしな」
つうわけで三人衆は放置して深娜邸の裏にある小屋から炭とバーベキューセットを運びだし浜辺に広げる。今日は皆で深娜の誕生日を祝うことになったのだ。さて、そろそろ材料揃えに行こうかね
「かすみー。手伝うー」
「あ、私も手伝うよ」
両サイドに走り込んできた二人は深娜をチラッとみてから手を引っ張り急かすように引っ張る。まぁそこまでならまだ可愛らしい光景なのだがここに深娜が加わるとあら不思議。壮絶なるバトルに発展するわけである
「貴女達。霞にそんなベタベタくっつくのはどうかと思うわよ」
「いいじゃん別に。昨日は深娜ちゃん一晩中ベタベタしてたんだからさ」
「加弥、そーゆー表現は誤解を招くからやめようね?」
「大川さんだけいっつも霞君とベタベタしてて・・・・羨ましい」
「べ、ベタベタってあれは誤解だって言ってるでしょ!」
「誤解でもなんでも一晩中ベタベタしてたのに変わりはないじゃん。私だって霞と一晩中ベタベタしたいのに!」
「だから加弥ー。なんかその内放送禁止ワード出そうだから少し落ち着いて!」
「私だって・・・・」
「ちょっ!洸夜もなんですり寄ってくるのさ!暑いから離れてよ!」
「・・・・霞」
「あんたは真っ先に落ち着け!俺を殴っても何も変わらんぞ!」
ゴメス
「さっさと下準備に行くわよ。いつまで寝てるのよ」
ノーモーションからの飛び膝蹴りかましといてよくそんな事言えるなこいつ。加弥に支えられながら起き上がり首をさすったり伸ばしたりストレッチしているとある事に気付いた
「・・・・?船がこっちきてる」
水平線に傾きかけた夕日をバックに3隻の船がこちらに向かっている。内一隻は二隻に比べ大きくやたら設備の良さそうな船だ・・・・あぁ成る程
俺はその場に座り未だよくわかってない深娜を見上げる
「1日遅れの誕生日は盛大になりそうだな」
「・・・まさか」
そのまさかだろうね
船から降りてきたお嬢親衛隊の面々とお嬢と幸澤。それから何故か慎も一緒に降りてきた
「いやぁ成り行きついでにちょっと働いてきた。ほれ肉」
他にも次々と食材が運び出され軽く見積もっても全員で2日はここでどんちゃん騒ぎ出来る量だ
「ふふ。昨日は二人っきりで如何でした?この子ったら誕生日になるといつもいなくなるのよ」
お嬢はクスクス笑いながらチラッと深娜を見る。即視線を反らした深娜に変わり答える
「楽しんでもらったみたいだぜ。ちょっと飲み過ぎたせいで大変だったけどな」
「あら。どう大変だったのか是非詳しく聞きたいわね」
「だそうだ深娜」
「はぁっ!?なっ、なにいきなりフッてるのよ!ちょっと霞!」
「聞こえない聞こえなーい。さぁ晩御飯のバーベキューの準備しなきゃ。皆さーん。深娜とお嬢の邪魔しちゃ悪いから準備手伝ってー」
『あいあいさー!』
「ちょっと貴方達!!」
『聞こえなーい聞こえなーい』
みんなノリいいなー
皆さんのご協力により程よい時間で手早く準備が終わり、各場所で炭を焚き始めている
やや離れた位置ではお嬢の深娜イジリが続いているのだが・・・・不自然な草の集合体がゆっくり背後から近づいている
不自然な草の集合体の背後にゆっくり近付き手を突っ込む
『霞は小柄なメイド、カンナを捕まえた!』
「はっ放せです男女!」
「やめろカンナ。邪魔しちゃ悪いだろうが!」
「黙れです滅びろです土に帰ろです!」
「タンス」
「・・・・・・」
『カンナは不自然なくらい大人しくなった!』
カンナを引き摺って炭火隊に預けて加弥達と合流。上を脱いでる慎が雄叫びと共に団扇をはたいている
「おーっす。炭の準備できた?」
「ふははは!我輩にかかればあっとゆう間だ!」
「他もいい感じだよー。お肉♪お肉♪」
はしゃぎまくりの加弥なんだが・・・・はーい全員集合
「加弥に缶チュウ渡した奴手を上げて」
「あ、自分ッス。加弥さんに頼まれたんで」
「はいアウト!」
「あぎゃっ!」
そんな貴様にドロップキックプレゼント
「紗智さんいらっしゃいますかー」
「・・・・・ここに」
「後日そこの物事の順序が分からない輩にDセットよろしく」
「了解・・・・山下、OK?」
「りょ、了解ッス」
さぁ全ての準備が整った。後はお嬢が深娜イジリを終わらせればバーベキューの始まりだ
皆で二人を遠目で見ているとお嬢にイジられテンパってる深娜がどんどん小さくなってる様に見える
「俺、今この瞬間の姉御ぜってー忘れねぇ」
「先輩・・・可愛い」
「おい、誰かビデオまわせ。今年の忘年会に使いてーから」
「お姉様!お姉様ぁ!」
「はーいはい。撮影禁止ですよー。バレたらどうなるか分かるでしょー」
親衛隊は揃って虚空を眺めうんうんと頷くとイソイソとカメラを戻して炭の見回りを始めた。どんだけ怖いんだよ
程なくして大変満足されたお嬢とこの短時間で徹底的に追い込まれた深娜が帰ってきた
帰ってくるなり本気でボディーに一発頂いた
後ろの男性陣からおぉと声が上がり皆一様に腹を押さえている。どうやら全員頂いた事があるらしい。日頃培われた根性で起き上がると親衛隊からおおおぉ!と声が上がり拍手まで起きている
「たったぞ。姉御の一撃を受けてたったぞ」
「姐さんの彼氏候補ってのも伊達じゃあないんだな」
「せいやぁっ!」
「た、担架!加弥嬢の一撃で森っつが倒れた!」
親衛隊もまだまだだな。加弥の攻撃は四撃目からが踏ん張り所だぞ。とまぁ飲む前から一人脱落してしまったがこの際仕方ないで流して進行しよう
皆それぞれ炭を囲む様に座り一際大きく陣をとる我等が5人組とお嬢と幸澤、あと何かカンナも潜り込んでました
「はぁ。帰ったら覚悟しなさい」
「お姉様!今すぐ土に帰しましょう!」
「あれ?カンナちゃんさっきまで私の隣にいなかった?」
「あははぁもうコウちゃんねぼけてるぅ?」
既に混沌の扉は目の前に来たわけだが諦めるしかないんだろうな
そう考えてたら加弥が突然立ち上がり缶チュウを一気に飲み干して空き缶を山下に投げつけた
「あいたぁっ!なんで自分に投げるッスか!」
「彼女といちゃついてんじゃない!今日の主役は深娜ちゃんなんだよ!」
加弥の一言に驚き見上げる深娜を他所に加弥は生肉を慎の額に張り付けてから缶チュウ片手に椅子の上に立ち上がる
「え?何この肉?」
「シャラップ!!」
「怒られた!」
慎を無視して親衛隊は何かに気付いたらしく、全員が手にグラスや缶を持って立ち上がる
続くように慎と洸夜も立ち上がり最後にお嬢がグラス片手に立ち上がる
「深娜、今日の誕生日は貴女の心にちゃんと残るかしら?」
「いくよ。せーのっ!」
『誕生日おめでとう!』
手を高らかに掲げ、心を一つに叫んだ。一人の女性を祝福するために
隣に座る深娜は俯いている。俺はなんとなく携帯の録音機能のスイッチをいれた。なんか御告げの様に心の中から声が聞こえた気がする
「ありがとうみんな」
全員がもれなく固まった。身動きさず呼吸すら止めてるかの様に炭の弾ける音くらいしか聞こえない。お嬢ですら唖然としており深娜に釘付けだ
俺は録音した貴重なボイスを再生してみる
『ありがとうみんな』
全員が一斉に俺の携帯をガン見した
「えー深娜の超貴重な生ボイスを録音したデータ。500円からスタート」
「20万!」
「32万!」
「えぇい48万!」
「52万!お前ら吹っ掛けんなよ!」
「80万!お姉様の物は私が頂く!」
予想以上の大反響だな
「はい81万、81万の方はいらっしゃいますか。いらっしゃらないなら80万で落札されます」
「200万」
『・・・・』
お嬢、お前がマジ参加したら駄目だって
そんな視線を送っていると横からマッハパンチがが炸裂。砂浜に横たわる俺を踏みつけながら俺の携帯を勝手に操作。消したなコイツ
「文句ある?」
「滅相も御座いません」
周りの親衛隊もいっせいに頷き半ばヤケ気味に飲み始めた
起き上がった俺は砂を払い席に座る。相変わらず何が嬉しいのかニコニコしてるお嬢はグラスを煽り深娜をチラッと見る
「本当に変わったわね。貴方のおかげよ」
「よせやい。変わる切っ掛けは俺かも知れんが変わると決めたのは深娜の意思だ」
「それでも貴方のおかげで変わったと私は信じたいもの。だから伝えなきゃ。ありがとう」
「・・・・」
そう手放しにお礼なんぞ言われれば誰だって言葉に詰まる。返事の変わりに頭をわしゃわしゃ撫でてやった。しかし直ぐに手を離して仰け反る。目の前を通過したのはバーベキューの串か
「なんで避けるの?」
「あぶねーからだよ!」
「何をしてるか分かっているの?」
「おう。お嬢の頭を撫でていただけだが」
ゆらりと串を構える深娜だが手櫛で髪を整え終えたお嬢がはふっと溜め息を吐く
「深娜、夫婦喧嘩は程々にしとおきなさい」
「お、お嬢様!?夫婦喧嘩なんてそんなっ!」
「おじょーさんー!霞と深娜ちゃんは夫婦じゃなもん!」
何処から湧き出たのかお嬢の背に抱きついた加弥は愛犬が抱きつく様にすりよっている
「ちょっ、大甼さん!何処を触っていらっしゃるの!」
「おっぱい」
「加弥さん!今すぐ離れなさい!」
「いやぷー」
何となく見てると殴られそうなので他の組の方に視線を向ける
何やら勝負に負けた男が突然服を脱ぎ出しパンツ一丁になると同僚の女性を呼び出した。新手の告白方法かと思いきや、最近ウエスト辺りのお肉が気になって通販のダイエット器具3つもまとめ買いして試したが一ヶ月後にリバウンドしちゃった的な事を暴露した
案の定呼び出した女性に張り倒され仲間を呼んだ女性群に文字通りフルボッコされている
隣の組では何やら皆難しい顔で何かを語っている。気になったので近づいてみると洸夜と深娜、バストはどっちが上でバランスはどっちがいいか。お嬢と加弥、どっちが下か本気で討論していた
余りにも哀れに思えてしまったので何も語らずその場を去った。だが特別講師の腕章を着けた慎、貴様は後でお仕置きだ
自分の席に戻ると加弥が何故か人の膝の上に座りもたれ掛かってくる
「かすみー。あーん」
雛鳥が餌を求める様に口を開けてるのでサラダからトマトを摘まみ放り込む。幸せそうに頬張る加弥を見てると背後からただならぬ視線を感じた
同じくトマトを摘まみ首だけ向けると洸夜が恥ずかしながらも口を開けて待っていた
「はいどうぞ」
加弥同様幸せそうに頬張った洸夜はお礼なのか串に刺さった肉を恐る恐る差し出してきた
一瞬食べるのを躊躇した時、膝の上の加弥が飛び降り肉にかぶり付いた
「か、加弥ちゃん!」
「かふゅみにあふぇちゃらめ!」
何言ってんの加弥?ようやく飲み込んだ加弥は何故か洸夜の胸に飛び掛かり顔を埋めた
「うりうりうりうりうりうりうりうりぃ!」
「ひぃあぁっ!」
駄目だ。酔っぱらった加弥が何を考えてるのかさっぱり分からん
取り敢えず放っておくことして視線を前に向けると泣きそうなお嬢と必死に宥める深娜。大方加弥のセクハラに耐えれなかったんだろう。さらに必死に宥める深娜の横で荒い呼吸で熱い眼差しを向けるカンナには触れないでおこう。この子はもう手遅れな気がするから
なんつうか宴会場が混沌としてきたので少し落ち着いてもらおう
「はーい皆さん。全員ちゅうもーく」
何事かと集まる視線。俺はにこやかに笑い慎を指さす
「共同作業って事で慎を海に投げたいと思いまーす」
「何故!我輩なんかやらかしたかいな!」
「んー。なんつうか生きてるから?」
「ヒデェ!」
しかし酒の入った大人が止まるわけもなく、まるでアリさんの様に群がっていく。なんだろう・・・・めんご
「ちょっ!皆さん落ち着こう!我輩をどうするきや!やめっズボン返して!パンツ一丁なんていやや!」
暴徒と化した大人達は慎を担ぎ上げ小高い丘を目指す。おいおい10m以上あるぞそっから海面まで
丘の頂上まで連れてこられた慎は退路を断たれ絶壁に追い込まれていた。先陣を切って追い込んだ加弥は酔っ払いパワー全快でふらふらしている
「よーしよし。落ち着こう落ち着こう加弥。ステイ、ステイ」
「うっせぇ!」
「イタァッ!何素で石投げてんだよ!」
「私は腐ったみかんじゃないもん!」
「言ってねぇ!イタァッ!また投げた!」
「んー。慎、いっちょうやってみよう!」
「何ヤるの!殺るじゃないよな!」
「てへっ」
「てへじゃねぇぁぁああぁぁぁあああぁ!」
慎、君の死は決して無駄にはならない
後に洸夜から見せてもらった写真には、慎の紐なしバンジーが月の見事な演出により丘に群がる暴徒とくの字に曲がって落下する姿を見事に収めていた。特に蹴りの姿勢の加弥がとても印象的だった。酔っ払いって怖いね
まぁこれは未来のお話なので現在を見てみよう
前門の深娜、後門の洸夜
「ねえ洸夜。後ろから抱きつくのは百歩までなら無くもないかもしれないよ。でも俺座ってる。君立ってる。わかるよね?」
「ん〜。霞くんいい匂いするねー。加弥ちゃんが言ってたとおりー」
「やめんしゃい!頭が埋まってるんじゃ!」
「何やってるのよ霞!」
「何故俺を怒る!相手が違うよな!違うよな!お嬢、アンタも笑ってないで止めろや!」
「どうして?」
「どうして?じゃねーだろ!アンタの部下が鈍器片手に迫ってるからだよ!」
「お姉様、私も手伝います!今日こそ男女の息の根を!」
「えーカンナのタンスの中には深娜のとうさ―――」
「うわぁぁあぁぁ!言ったらダメですぅぅ!」
流石に鋭利な刃物相手に耐性もくそもないからな
その代わりといったらなんなんですが・・・・ええ、殴られました。ビール瓶で
こいつ俺をいつか殺す気じゃないかと本気で危機を覚えたのは砂浜で気を失ってた俺を深娜が蹴り起こした辺りです。気を失っててバレてないと思ってるかもしれないがあんた瓶で殴った所本気で蹴ったろ
頭を押さえながら起き上がり近くの椅子を引っ張り座る。海岸辺りではパンツから海草がはみ出てる慎目掛けてロケット花火を連射してる加弥と、その先で爆竹とドラゴンを構える洸夜。さらに周りの酔っ払いは全員ロケット花火を構えている。頑張れウェットルマン
「で、どうだったよ祝ってもらった誕生日は」
「疲れたわよ。こんな慌ただしい一日は初めて」
「でも嫌じゃないだろ」
「・・・・たまにはね」
「ならいいじゃん」
テーブルからワインとグラスを持ってきて片方を渡す
「今日くらい皆と付き合ってやろうぜ。幸いな事に俺の後ろには何故かロケ花がある。後連射様の筒も」
一気に飲み干した深娜は既に装填されている8連式に改造されたロケ花の導火線に火をつけた
「貴方達どきなさい!」
酔っていても親衛隊の名は伊達じゃないのか、ただ単に深娜の存在が恐怖を超えた存在で刷り込まれてるのか分からないが一斉に壁が割れ、目標のウェットルマンが内股で防御の構えをとっていた
「霞、夏休みに何処か出掛けない?」
「いいぞ。何処に行くんだ?」
「その日の気分よ!」
高速で発射されたロケ花は寸分狂わずウェットルマンに命中し、周りから歓声があがってから慌てて逃げ出した。なんか深娜さん暴走しそうなんですけど。え?次弾装填すんの?程々にしときなよ。狙っていいの男衆ぐらいなんだから
とまぁそんなわけでこの夜は盛大なロケ花戦争だった。死者ウェットルマン、軽傷ほぼ男衆となったのだがいつの間にか無敵の盾として女性陣に担ぎ上げられたウェットルマンだが次の日には何故か傷一つ無く復活を遂げていた。君って悪霊とかそうゆう類いの生命なのかな?
まぁそんなこんなで慌ただしい深娜バースデーは幕を閉じ、翌日にはお嬢に一礼して帰路に着いた。まだまだある夏休みの予定に深娜と出掛けるが加わった。後で埋め合わせに皆で出掛けないとなーとか思いながら両膝に頭を乗せて二日酔い街道まっしぐらの加弥と洸夜のお守りをしていた
あ・・・佐藤さん来るの忘れてた
えーどうも。自称作者のウドの大木です。みんな忘れちゃったかなー?忘れちゃったら拙者泣くよ?
まぁそんなわけでちょっと遅くなりましたが更新出来ました
次回は謎の佐藤さん登場。どんなキャラかはお楽しみって事で今日はこの辺で
アデュー!