37・僕と私のみっかせんそう《高校デビューと可愛いあの子》
霞「・・・・・うわ」
夕月「いきなり失礼だな。何だよ急に」
霞「急に俺が二人も居たら嫌だろが」
夕月「まあそうだけどさ。それよりそろそろ世間はクリスマス近いだろ」
霞「近いな。で、それがどした」
夕月「クリスマス版恋愛短編小説を作者が書こうかなだってさ」
霞「辞めとけ。恋愛なんて作者とは無縁だろ」
作者「失礼な!」
夕月「で、実際は?」作者「さあ元気に本編読んでいこう!」
せかいなんてぐうぜんのかたまり
だれかのぐうぜんとだれかのぐうぜんがくっついただけ
でもひとはそれをひつぜんっていう
みらいのないせかいにひつぜんなんかないのにね
おかしいね?
「お兄ちゃんおはようございます」
「あ、おはよう美鈴ちゃん。よく眠れた?」
「うん。ふかふか枕気持ち良かったの」
朝からニコニコ笑う美鈴ちゃんと対照的に、深娜は若干眠そうな顔付きでやたら不機嫌そうだ
「おはよ。明らかに寝不足そうだが?」
「・・・・・誰かさんのせいよ。まったく」
「あぅ。ごめんなさい」
シュンと落ち込む美鈴ちゃんの頭を撫でながら励まし漸く朝食です
「お兄ちゃん、今日学校なの?制服着て」
サンドイッチをモグモグさせながら小首を傾げる美鈴ちゃん。口元にマヨネーズなんか付けて実に可愛らしい
笑いながら拭ってあげると恥ずかしそうに頬を紅く染める。いや〜妹とか娘を持つ親ってこんな感じなんだな〜
老化全開の霞爺の足を未だに深娜が踏みつけているのは言うまでもない
「で、美鈴はどうするの?留守番させておくのは少し心配なんだけど」
深娜が心配なのは中学一年生でこの子供っぽさな所である
「うん。実に困った」
頭を捻る俺の袖を引っ張る美鈴ちゃん。なんだいその切なそうな瞳は。やめて、子猫が親猫を求めるそんな瞳で見ないで
「お兄ちゃん・・・・・お願いがあるの」
「駄目よ」
うわっ、深娜の奴問答無用で切り捨やがったよ
「どうせ連れてけって言う気でしょ?いくらなんでも無理よ。学校側が許可しないから」
まあ正論ですね。学校だってもし何かあったら責任を取らなきゃいけないのだ。態々リスクを犯そうとはしないだろう。普通の教師ならね
「まあ無理じゃないけどね。学校にだって理解者はいるぞ?校長とか保健室の先生とか」
因みに保健室の佐々木真美先生は校内No2の強者です。教頭?そんなの居ないに等しい存在です
「・・・・どうなっても知らないからね。責任はあんたが取りなさいよ」
深娜はサンドイッチを放り込み席を立つ
俺は苦笑いをしながら携帯を操作する
『もしも〜し』
「おはようございます。朝早くすいません」
『気にしなくていいのよ。デートのお誘いだったら先生うれしいわね』
「違います。実はお願いがありまして。手作りシュークリームで手を打ってもらえますか?」
『いやったぁ〜。いいわよ。何でも言って』
やはり無茶な頼み事は佐々木先生に限るな
あ〜る〜こ〜あ〜る〜こ〜。わたっしは〜元気〜。あ〜るくの〜大好き〜。ドンドンゆ〜こ〜お〜
ドンドン行ってます
俺の左手をしっかり握りながら元気一杯に歩く美鈴ちゃん。今日は白のワンピースと綺麗な麦わら帽子。赤いリボンが印象的です(因みにいつものアニマルチェンジ子猫編は禁止令が発動中)
最近は暑くなってきたし実に可愛らしいですな
「お兄ちゃん、お願い聞いてくれてありがとう」
「どういたしまして。その代わりあんまりはしゃいだり周りの目が濁った男子には近づいたら駄目だからね」
「うん。近づいて来たら鼻下にストレートか××(漢字二文字)だよね」
「中学生に何教え込んでるのよ」
「違うの。自分で本を読んで勉強したの。地下倉庫に沢山あったから」
あれ?何で地下倉庫の入り口と暗証番号知ってるの?問い詰めようとしたが我が校舎が目前に迫っていた
皆が皆振り返ります
当たり前です
何故なら校内のトップに君臨する女王深娜の手を握り、女王の下僕兼男子の敵及び三学年の密かなマスコット+生徒会長の左腕(右は三木原さん)の霞と仲良く手を繋いで歩く女の子。美鈴ちゃんに非常に興味引かれるのです
〈ヒソヒソ話の一部〉
「ねぇねぇ。あの氷の女王様が女の子と手を繋いでるわよ」
「うそぉ!あの冷徹女王様が?信じらんない」
「おい見ろよ。獣野郎が我らの女王様を差し置いて少女にまで毒牙を伸ばしやがったぞ」
「ゆるせねぇ。町内一帯に霞ロリコン説を流して・・・ぐわぁぁっ」
「あんたは会長側近の柚蒔さんぎやぁぁぁ」
「見た見た!霞くんがちっちゃい子と仲良く登校して来たよ。すっごい絵になるのよ。可愛いわ霞くん」
「うそ!あ〜ん見逃した〜。ねえ写メ撮ってない?」
「もち♪」
「あ〜!送ってよ!二百円でどうだ!」
〈あくまで一部である〉
「もう放しなさいよ。さっきから変な視線が凄いんだから」
「まあまあいいじゃないか。美鈴ちゃんだって緊張してるんだから」
「ごめんなのママ」
『ママ!ママですと!』
教室から廊下からあらゆる場所から人が飛び出し驚きの声をハモらせる
深娜は絶対零度に匹敵する魔眼を発動するとまるで初めから誰も居なかった様な静寂が残る
「パパ。凄いね」
「そうだね。でもママだって何回も出来ないからあんまり言っちゃ駄目だよ」
「うん。分かったのパパ。出来るだけパパって言わないの」
美鈴ちゃん駄目だよ。ほら、誰かが吹き矢吹いてきた。先に裁縫の針付いてるしきっと毒が塗ってあるに違いないんだから
mission part1
〈午前中を生きるべし〉
霞―ランク?
双極の頂きに立つ者
属性―中立と偏見
HP<|||||||||||||||||||>
美鈴ちゃんは教室の前に来て漸く深娜の手を放した
深娜は何事も無かった様にいつもの無表情になり教室に入る。それに続き二人も中へと踏み込んだ
「おはよ〜っす」
軽く挨拶しながら入ると男子は素早く消しゴムを構えた
しかし特殊効果『黒猫の加護』発動により男子は構えを解いた
「おっはよ〜霞〜ってその可愛い子誰?」
「おはよう霞君。あれ?その子迷子?」
加弥と洸夜が美鈴に気付き首を傾げる
「う〜っす霞。ちっちゃい子捕まえてどうした」
HP<|||||||||||||||| >
「おい、何故にHPが減ったのか?」
「お前だからかな」
慎はその場に横になり嘘泣きを始めたので無視した。あ、邪魔だから隅に行ってよ
すると先生の到着です。イソイソと席に座る皆の中、美鈴ちゃんは俺と深娜の席の間に挟まる形で小さな椅子にチョコンと座っている
「よ〜しおはよう。皆朝から気付いてると思うけど野崎の隣の子は野崎のお祖父さんの孫みたいでちょっとの間預かってるそうだ。まだ10歳って事で留守番させるのが心配だから特別に今日一日校内に居ることになったそうだ」
流石佐々木先生。微妙な嘘と本当の加減で見事に違和感がない。シュークリームの他にも何か作ってあげよう
「私10歳じゃないの。本当は12なの」
頬を膨らませて怒る美鈴ちゃん。そんなホッペをプニプニつつきながらにこやかに和んでます
朝のHRも無事終わり、のんびりと授業の準備をしたいのですがやっぱり人の群れが出来ました。
イタッ!誰だ叩いた奴HP<|||||||||||||| >
人集りから逃げてきたのか深娜は窓に背を預け深い溜め息を吐く
「アンタのお陰で私の休み時間が減ったんだけど。どうしてくれるのかしらね?」
「この前焦がした鍋の件チャラって事で」
「うっ・・・・・分かったわよ」
こっそり処理してた様だが台所事情を誤魔化せる分けないのだよ
そんなやり取りの間、美鈴ちゃんはクラスの皆の人気者。他のクラスからも参戦して質問したり写メ撮ってます
ちょっと酷いけどオロオロしながら返事するその姿がまた可愛らしい
「あぅ・・・・あの・・・・その・・」
オロオロしながら此方に潤んだ瞳を向ける。これが噂のヘルプアイか
「あなた達いい加減にしたらどうなの。美鈴が困ってるでしょ」
教室内が静寂に包まれる
「大川さんが庇った」
「女王様が他人を心配してる・・・・夢かしら」
「安田!気を確り持て!え?『悪魔様が蘇る』現実から目を背けるな!」
「あの優しさミクロ単位でいいから欲しいな」
「欲しいな」
俺は笑顔で美鈴ちゃんの目を塞いだ
いつもの三人も笑顔で耳を塞いで窓の外を眺めている
「美鈴ちゃん、耳ふさいでね」
「うん」
「文句ある?」
ドスの効いた声で睨み付けます。まあそうですよね〜。誰だって親切をあんな感じで返されたらブチギレしますよ
「はいは〜い。授業始める・・・・・よ・・・」
あ、先生、気にしなくていいですよ。クラスの雰囲気は無視してくださいよ。何ですか俺にヘルプアイして。駄目ですよ、三十路過ぎたらヘルプアイは無効ですよ
「ののの野崎君、どどどうにかしてよ!君の彼女でしょ?」
「ぶふぁぁぁぁ!」
加弥の真空跳び膝蹴り
HP<|| >
「前言撤回希望!!」
「それなら先生にやってよ!俺関係ないよね!」
「出来るわけないじゃんそんな事!」
「うわ超理不尽!つうか深娜さん、貴女もこの空間を造り上げた要因の一つなんですから空間調和に御協力お願い致しますよ!」
「あ?」
「いや非常に申し訳ありませんでした。全て私の責任で御座います」
美鈴ちゃん、何故君はそんなに笑顔なんだい?何故そんなに輝く笑顔を俺に振り撒くんだい?正直今この教室内で眩しい存在だよ
「お兄ちゃん楽しいね。高校って楽しいね」
「違う!この空間に耐えれなくて精神が壊れてきてる!」
「先生!崎塚さんを筆頭に数名気絶してます!」
「えぇぇ!ちょっちょっとどうすればいいのよ」
「先生!藤阪くん邪魔なんですけどどうすればいいですか!」
「捨てればいいと思うの。ダメ?」
「駄目だよ美鈴ちゃん、生ゴミは外の焼却炉じゃないと」
「校舎内が腐敗するからやめなさい」
「俺帰っていいのかな」
『駄目』
クラスの心が一つになったね。いや君は本当にいい立場だよ
ぐうぜんぐうぜん。いつもいつもそこにあるのはぐうぜん。ぐうぜんがかさなればそれはうんめい?クスクス。ちがうちがうゼンゼンちがう。ぐうぜんはどんなにかさなってもそれはぐうぜん
これからもこのさきもぐうぜん
三時間目が終わった辺りだろうか、何処かで鈴の音が響いた
教室に反響し、深く深く響く鈴の音は誰にも届かない。深娜も、加弥も、洸夜も、美鈴も、慎も
鈴の音はゆっくり静まり静寂に包まれる
最初に気付いたのは美鈴だった。机に突っ伏し動かない霞を揺すり、取り敢えず背中に抱き付いてみた
直ぐに加弥がひっぺがしに走り、ついでに霞にエルボーをかましてやった
それでも起きない霞に首を捻る加弥は取り敢えず霞の耳をハムハムしてみた
直ぐに洸夜に捕まってガックンガックン振り回されながら泣き付かれた
小さく痙攣した霞はゆっくり起き上がる
加弥は胸を張って自分の判断が正しかった事をアピールしている
しかし両サイドを洸夜と美鈴に捕まれ教室の外に連れ出された
虚ろな霞の眼はゆっくりと深娜を捕らえる
「・・・・・何よ」
しかし返答は返ってこない。霞はただ深娜を見ている
そんな霞の態度に疑問を持つ深娜だが取り敢えず頬を軽く叩くことにした
手を伸ばし力を込めた瞬間霞は口を開いた
「初めまして深娜ちゃん。深娜ちゃん綺麗だね」
加弥は廊下から全力疾走してウエスタンラリアットをぶちかました
しかし霞は軽く避け、加弥は空振りよろしくひっくり返った
にっこり笑う女顔の霞は、後を追ってきた美鈴をひょいと膝の上に乗せ笑顔で口を開いた
「改めて言うけど初めましてみんな。私は雫。よろしくね」
にこやかに笑う霞改め雫は人形みたいに膝の上に座る美鈴ちゃんに抱き付く
「美鈴ちゃんか〜わい〜♪」
「ひゃあぁぁ!」
一歩遅れて洸夜も到着
「あ〜!霞君何してるの!何してるの!」
「わ〜洸夜ちゃんも可愛い〜。こっち来てよ〜」
「ほえぇ!え〜っと・・・・・・はい」
イソイソと取り敢えず駆け寄る洸夜に雫は抱き付く
「や〜ん可愛い〜」
「ひゃあぅぅぅ・・・・・・・幸せ」
「かすみぃぃぃ!!」
「加弥ちゃんも可愛い〜。ぷにぷに〜」
「ぷにぷに〜」
割とカオスッてる空間をクラスの皆は生暖かい視線で眺めたり無視している
「お兄ちゃん変なの」
「はずれ〜。今はお姉ちゃんだよ〜」
「・・・お熱あるの」
「あの〜。俺忘れられてない?」
「慎く〜ん。取り敢えずどこか逝ってくれると嬉しいな〜」
慎
HP< >
慎は全滅してしまった
セーブしますか?
YES←・ NO
ちゃ〜ららら〜らら〜
お疲れ様でした。このまま電源をお切りください
加弥「加弥と!」
洸夜「洸夜の!」
加・洸『テレフォンショッキング!』
加「第2回はゆきしろの若女将、月島恋花さんで〜す」
月「御久し振りです皆様。御紹介預かりました月島恋花と申します」
洸「お久しぶりですね。旅館の時はお世話になりました」
月「私共も大変楽しませて頂きました」
加「中居さん達元気でしたよね〜」
月「ふふ。御孫様が居なくて相変わらず淋しがっていますよ」
加「それじゃ最後に一言どうぞ!」
月「御孫様、今年の大晦日は二人きりで年越ししたいですね」
加・洸「だめぇぇ!」