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36・僕と私のみっかせんそう《黒い子猫が黒いわけ》

ウドの大木「お久です。前回深娜さんに斬りつけられたウドの大木です」

霞「前回作者を生け贄にして逃げました野崎霞です」

☆《》「通りすがりの#*※ですってあれ!名前伏せ字になってる!」

大木「やあ々※★さん。久しぶりだよね?」

☆☆★「何で疑問系かなぁぁぁ!」

霞「五月蝿いな。消えればいいのに?」

※※※「何で疑問系かなぁぁぁ!つうか何この名前!」

大木「じゃ、本編です」

MrX「無視!」


暖かな陽射しの下、カーテン越しに射し込む光に優しく包み込まれる様に一人の少年が静かに寝息をたてている



まあ野崎霞少年である



「・・・・・あ、肉球柔らかい・・・・甘いな〜・・・・・・グスン」

「何の夢見てるのよ」


深娜の的確な指摘も霞には届きはしない


そして深娜の天敵としての地位を確立した美鈴ちゃんはと言うと・・・・

「・・・・おはようございますお姉ちゃん」

固有名詞がボスからお姉ちゃんに昇格することにしたらしく、しっかり朝のご挨拶をしている

昇格理由は昨夜の入浴時間まで遡る






〜〜〜〜回想〜〜〜〜




「はぁ・・・・・」

「・・・・・・♪」


にこにこと縁に手を掛ける美鈴ちゃんと溜め息混じりに眺める深娜

「ボス、頭洗って」

「・・・・。子供じゃないんだら一人でやりなさいよ」

「・・・・・・」

とっても寂しい表情で深娜を見ているが知らんぷりです

すると美鈴ちゃんは視線をやや下に下げ目を見開いた。そしておもむろに・・・・



ペタペタペタ

「・・・・・何よ」



モミモミモミ

「・・・・・・・何してるのよ」




そして自分を見下ろし落胆の表情になる


だが直ぐに気持ち新たに決心をしたようで、拳を握り明日の未来に夢咲かせた




〜〜〜回想終了〜〜〜






と、言うわけである


そして朝の挨拶を済ませた美鈴ちゃんは窓際ですやすや眠る霞を見付けるとぽてぽて駆けていき、気持ち良さそうに寝る霞を眺め、腹の上に馬乗りになった




・深娜は耐えるのコマンドを選択した




美鈴ちゃんは上から眺めていると寝ぼけている霞はゆっくり手を伸ばし、両手で美鈴ちゃんの頭を撫で、そこからぽふぽふと美鈴ちゃんを確認していく




・深娜は耐えるのコマンドを選択した






「・・・・・よしよし・・・・チカちゃんもお昼寝か〜・・・・一緒に寝るか・・・」

どうやら襠雫家の家族、近松文座えもん(愛称チカちゃん)と勘違いしているようでそのまま美鈴ちゃんを抱き寄せて静かに寝息をたてている



美鈴ちゃんも最初は目を見開きかなり驚いて硬直したが直ぐに目を細めて抱き着く



そしてそのままウトウトと目を閉じ律儀にご挨拶


「お姉ちゃん・・・おやすみなさい」




・深娜は耐えるのコマンドを解除した










『いただきます』


さて、ちょっと遅めの朝食です。起きてから妙に脇腹とか腹部とか人に見えづらい場所が痛みますが深娜曰く

「寝相が悪くてその辺の角にぶつけたのよ」と言っている


美鈴ちゃんに聞いても深娜を見てから

「知らないよ」と首を横に振っている


ああ痛いな



「霞お兄ちゃん。牛乳ある?飲みたいの」

「牛乳?あるけど何味がいい?イチゴ?バナナ?キウイ?」

「・・・・キウイ」



と言うことなんで早速ミキサーの中に氷とキウイと牛乳を入れてスイッチON


ギュイィィィィィィィィィィィン

ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ


ほ〜ら美味しいキウイ牛乳の出来上がり〜



美鈴ちゃんは腰に手を当てごくごくと美味しそうに飲んでいる


「深娜も飲む?」

「一応貰っとくわ」


とまあ三人揃って飲んでいると本当に家族の様に思えてくるのは老化の傾向だろうか



そんな思いに老け込んでいる中美鈴ちゃんは自分の胸を見下ろし深娜と見比べる


「まだ勝てない」

やっぱりガックリと肩を落としている

深娜はやっぱり知らんぷりしてました









さて、日曜日の朝は何処のご家庭ものんびり過ごすわけであり、野崎家ものんびり過ごしたいわけである




「霞お兄ちゃん、お散歩しよ。お姉ちゃんも一緒に」

ソファーに腰掛け新聞に目を通す深娜の袖を掴み片付けをする俺に呼び掛ける


「散歩か。俺は構わないよ。ただ深娜はどうだろうかね」


期待と不安入り交じる瞳で深娜を見上げる


深娜はと言うと非常に顰めっ面で新聞に目を通している。美鈴は子猫の様な目で見上げながら袖を掴む手に力を込める

「お姉ちゃん一緒に行こうよ。少しでいいから」


「・・・・・霞、何とかしてよ」

あ、逃げる気だ

あ〜あ。美鈴ちゃん泣きそうだよ

「たまにはいいじゃん散歩ぐらい」

「忙しいのよ」

ほう。忙しいのか



「なら仕方ないな。美鈴ちゃん、二人でお出掛けしようか。最近オープンしたカフェ知ってるし親戚にもなった事だしお買い物にも行こうか。勿論俺からのプレゼントだ」

「本当!」

「ああ。二人でデートだね。おお、俺は初デートだ」

デートの辺りを強調しながら深娜を見ずに声高らかに言ってみた


案の定深娜は新聞をバシンっとテーブルに叩き付け、物凄い勢いで自室に戻っていった


「霞お兄ちゃん。お姉ちゃん怒ったの?」

「違うよ。深娜お姉ちゃんは今猛スピードでお仕事を片付けているんだよ。一緒に行きたいから」




それから30分程トランプで時間を潰していると深娜が自室から出てきた。御丁寧に着替えも済ませ準備万端だ


「・・・・・何よ」

「いや。そんなに行きたきゃ素直に言えばいいのにって思って」

「ふん。あんたが変な事しないか見張るためよ」

「お姉ちゃん、変な事って何?」

「あんたは知らなくていい事よ。ほら、さっさと行くわよ」

ちょと強引なお散歩の始まりです






夏も間近に迫るこの季節。少し暑いがそれもまた良し。季節の移り変わりは早いものです

「何年寄り臭い顔してるのよ」

「失礼な」

「お兄ちゃんが年寄りだと嫌なの。お爺ちゃんって二人になっちゃう」

「まあ爺さんみたいには絶対ならないから安心してよ」

「分かった」

美鈴ちゃんは俺の手を握り仲良くお散歩している。ほら深娜、怖い顔になってるよ



そんなたわいもない事を話していると一人の女性が駆け足で追い越していく

「あ、佐々木さん。おはようございます」

「おはよう。美人と可愛い女の子二人なんて両手に華ね」

「この子は親戚の美鈴ちゃんですよ」

「おはようございます。美鈴です」

「おはよう美鈴ちゃん。可愛いお兄さんと美人のお姉さんがいてまるで家族みたいね」

「はは。家族だってさ深娜お母さん」

「はぁ!」

変な声出したら駄目だよお母さん

「ママ。早くお買い物行こうよ」

「誰がママよ!ってちょっと引っ張らないでよ」


美鈴ちゃんは俺と深娜ママの手を引いてぐいぐい引っ張って行く。その顔は歳相応の可愛らしい笑顔だった









「お兄ちゃん。何してるの?」

「うむ?いや珍しい本があってつい。それより買うのは決った?」

「これ欲しいの」


『ネコまっしぐら写真集。子猫編』

よし絶対読もう


するといつの間にか深娜が背後に立っている。無音は止めてくれ

「霞、これもよろしく」

「・・・・・・」

「・・・・何よ」

「いや・・・・何故に料理本?しかもここ見ろ。小学生におすすめとか書いてるぞ」

「・・・・・・・別にいいじゃない」

あ〜あそっぽ向いちゃった。素直じゃないこと

「後で教えるから一緒に作ってやるよ。クッキーでも作るか?」

「・・・・・分かったわよ。焦がしたらしょうちしないからね」



そんなやり取りを美鈴ちゃんは下から見上げていた。笑いながら深娜を見ていた




それから洋服コーナーに向かい美鈴ちゃんは猫耳帽子をねだり深娜は頑として許さず、何故かゴスロリで妥協しやがってレジに持って行かされた

「可愛らしい姉妹ですね。妹さんとても楽しそうですね」

レジのお姉さんはニコやかに笑っている

「はは。そうですね。ちょっと頑固者の姉が混じってますがね」

「仲の良い三姉妹ですね。羨ましいわ」




数秒後、姉妹は大人気ない女の子を押さえに全力で走った




何とか二人に宥められ、今はちょっとしたアクセサリーショップに寄っている。と言うのも美鈴ちゃんが深娜が首から下げてあるネックレスやブレスレットに目を付けたからである


「お姉ちゃん。その綺麗なの何処で買ったの?」

「これ?・・・・・・これはその・・・」

宙を泳ぐ視線は俺を捕らえる。あ、赤くなった

そして深娜の視線を辿り俺に到着した美鈴ちゃんはにっこり笑う

「お兄ちゃんからのプレゼントなんだ。お姉ちゃんはお兄ちゃんの彼女なの?」

「ば!馬鹿言わないでよ!そんなわけ無いじゃない!」

「深娜。店内では御静かに。美鈴ちゃんもお姉ちゃんを困らせちゃ駄目だよ。深娜が俺の彼女なわけ無いじゃないか。ファーストキスは深娜だけどぼぉっ!」


クリティカルヒット


「あんたはっ!何でっ!そういうっ!事をっ!平気でっ!喋るのっ!かしらっ!」


一言一言区切りながら重い膝蹴りを繰り出し、俺は一瞬朝のメニューを思い出してしまった



方膝を付きどうにか耐えた。ふぅ。日に日に耐性が付いているのは良いのか悪いのか

「深娜・・・・ごめんなさい。もうボディーは勘弁して。お昼食べれないから」

「二度目は無いからね」


それは俺の魂だろうか




とまあそんな経緯を経て今はちょっとしたレストランに来たわけだ

「お兄ちゃん。オムライスある?」

「ん〜。日の丸の旗が刺さってるのしか無いな。オモチャのセットだよ」

「それでいい」

素直にお子様ランチを頼むこの子は実は12歳


少し将来に不安を覚えてしまった


「私はムニエルでいいわ。ワインは・・・・・止めときましょ」

「当たり前だ。それじゃ俺はサイコロステーキでも食べるか」




さして待つことも無く運ばれたランチを食べる三人。食べさせてとねだる美鈴ちゃんをどうにか説得し、やっぱりワイン飲もうかしらって言いやがる深娜から呼び鈴を遠ざけ平和なお昼が過ぎる






そして屋上







にゃ〜


にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜


《ふれ合いペットコ〜ナ〜(子猫組)》




そんな看板がぶら下がる一角で、あちこちに猫をぶら下げている青年


「お兄ちゃん。11匹もくっついてる」

「ん〜〜善きかな善きかな。あ、背中に入っちゃダメだぞ虎縞」

ナ〜ナ〜


「うわあぁ。腹がもぞもぞする!」


ナ〜ナ〜にゃ〜にゃ〜


「お兄ちゃん大人気だね・・・・・お姉ちゃんも・・・・人気だね」

足元に擦り依る子猫達

「・・・・・動けないじゃない」

「しかも全部雌猫だ。わ〜深娜お姉ちゃんモテモテ〜。雄が遠目で眺めてる〜。か〜わい〜」

「霞、あんたネコが絡むと別人ね」

「お兄ちゃん可愛い」




ひとしきり周りの視線を無視して子猫を堪能した三姉妹


そしてその場を後にしてるのだが、後方では子猫達がものスゲー声で泣いている。母猫を呼ぶように悲しい叫び声だ


「ごめんよ。両サイドの猫が許したら今すぐ行きたいんだけど・・・・・・・」


ずるずると両腕を掴まれ名残惜しくもその場を後にした












荷物は配達サービスに任せ、今は開店して間もない『Lfran of soul』に来ている。直訳は著作権に引っ掛かりそうな危ない店だ


この店では本格的な紅茶や珈琲を堪能でき、絶品デザートも揃えた女性向きのお店となっている。さらに店内に流れるクラシックでちょっとした大人の世界です



「うわぁ。綺麗」

美鈴ちゃんは運ばれた苺タルトをキラキラした目で見ている。俺から見ても完璧な盛り付けだ。バランス良し、尚且つ主役の苺を引き立てる様に散りばめられたフルーツも良し。そして型は遊び心ある羽を広げた蝶

「素晴らしいパティシエがいたものだ」

「そうね。貴方より上手いんじゃないの?」

「俺は未々未熟者だぞ?比べるだけ野暮だ」

そんな話をしていると二人の分も運ばれてきた


深娜はチーズケーキを口に運び目を細める

「美味しいわ。久し振りに良いケーキ」

「・・・・・・」

深娜の感嘆を他所に俺はシュークリーム最初の一口で止まる

そして

「・・・・・・・・・・・くくっ、ははは」

思わず笑ってしまった



「お兄ちゃん、美味しくて壊れたの?」

「いや・・・この味には覚えがあってね。ちょっと失礼するよ」


俺は席を立ちマスターの元へ行き、少々会話をして厨房へ消えた






そんなこんなで取り残された二人は美味しそうにケーキを食べる

何時の世も甘い物は女性の味方なのだ




だがふとした時、美鈴は食べるのを止めていた


「お姉ちゃん」


美鈴のいつもと違う陰のある声に不思議に思った深娜は自分も止め向き直る

「どうしたの」

「お兄ちゃん・・・・・どうしてあんなに優しいの?」

「それは・・・」


深娜は答えに詰まる



分からない訳ではない。むしろ身を持って知った自分に分からない訳がない


だからこそ詰まる。言葉で説明する事が余りにも難しい過ぎる


「どうしてお兄ちゃんは私にあんなに優しいの?」

「・・・・・・」


家族だから


答えはそれだけなのだ



しかし美鈴の眼を見ると優しくされることに苦痛を感じているとすら見える


澱んでいる


まるで昔の自分を見てるような錯覚に陥る



「何故いまさらそんな事を聞くの?」

その問に美鈴の頭を下げ服を掴む手に力が入る




「お兄ちゃんには言わないで。お兄ちゃんにだけは知らないで欲しいの」


震える声に深娜は深く溜め息を吐く


「それなら仕方ないわ。聞いたら忘れてあげる。だから気にしないで言ってみたら」


重い空気を出来るだけ払おうと軽い口調で話す深娜に美鈴は顔を上げ微笑んだ

初めて見せる力ない笑みで美鈴は語りだした
















厨房では忙しなく歩き回るパティシエ

その一角で盛り付けをする青年は俺に気付くと手を振ってくる

「かすみっち!久し振り!略してカス久!」

「相変わらず無礼ですね。兄弟子なんですから後輩を大事にしたらどうですか?」


「ははっは〜。気にするなかすみっち。略して気カス」

「ここにあるミートパイ投げ付けて殺ろうか?」

「あ、いや。ごめん」


金髪で長身。蒼い眼の青年は本気で謝った


「分かればいいんですよフォンデュさん」

フォンデュ・イクイップはアメリカ生まれで祖父は有名なパティシエとして世界に名を列ねる有名人で幼くして指南を受けていた

そして日本に店を構えて間もなく常連であら、古くから親しい豪一朗に連れられてきた孫、野崎霞を気に入り短い期間ながら手解きをしたのだ



「それにしてもまさか店を構えるなんて驚きましたよ」

「いやいや。ここは爺さんの知り合いの店でちょっと修行がてら働いてるのさ」

「へえ。なら師匠はどうしてるんですか?」

その問にフォンデュは表情を暗くし、言葉に詰まる

「爺さんか・・・・・」

「まさか・・・・・師匠は」



「爺さんなら店で可愛い従業員とイチャついてる所を婆さんに見られて国外逃亡してるよ。最後の連絡はカンポジアだったよ」

「そうか。お互い苦労する祖父を持ったね」

「まったくだ」


二人は深い溜め息を吐いた
















「これが私の全部。言わないでね。お兄ちゃんには言わないで」

美鈴は淡々と語った


己の過去を

平静の仮面で感情を押し殺し、信じる相手に全てを語った


「そんな・・・・・事が・・・・」

無いとは言えない。言えるわけがない。私も受けた最悪の仕打ち



家族に裏切られたあの記憶。薄暗く腐敗臭漂う裏路地で生きる為に人をも殺し生き長らえた忌まわしい記憶




そんな時厨房から霞が歩いてくる


美鈴は慌てる事無く仮面を被り笑いながら霞を向かえる

深娜は背筋が震えた

12の歳で感情を殺す術を身に付けた少女に



「いや〜ごめん。このケーキとか作ってるのが知り合いだったから」

「ううん。気にしてないの。お姉ちゃんは寂しかったみたいだよ?」

「そ、そんなわけ無いじゃない!変なこと言わないでよ」


咄嗟だったがなんとか誤魔化せた



〈私はパパとママと仲良く暮らしてたの〉



「お兄ちゃん。他にも頼んでいい?」

「ああ。どんどん頼んでいいよ。知り合いの人の奢りだから」

「オイコラ霞っち!略してオコラっち!」



〈でもパパとママは沢山お金を使うから沢山借金を作ったの〉



店内に流れるクラシックに反して霞達のテーブルはとても賑やかだ。それに釣られる様に他の客も頬を緩め楽しんでいた



〈だから私はおっきなお屋敷で働く事になったの。パパとママにお願いされたから。パパとママに笑って欲しかったから〉



深娜はゆっくりとチーズケーキを口に運ぶ

ほのかな甘味が広がる



〈そこのお屋敷の人はとってもいい人だったの。でも何時からか夜になると私を部屋に呼んで体を触る。嫌なの。怖いの・・・・でもここで嫌がったらパパとママが悲しむの。お金貰えなくて悲しむの。だから耐えたの。耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて・・・・・・・・今でも怖いの。皆怖いの。夜が怖いの。手が怖いの。人が怖いの。何もかもが怖いの〉







カフェを後にし三人並んで帰路に着く。美鈴は霞と手を繋ぎ笑いながら帰る。仮面は既に外している


その一歩後ろを深娜は歩く。二人の歩く姿を眺め、美鈴の笑顔を見据え後を追う







その後二人は一緒に夕飯の準備をし、深娜は一人自室のパソコンを立ち上げ菊地財閥専用ネットワークを開く




〈でもお爺ちゃんが助けてくれたの。真っ暗な部屋をいきなり壊してお爺ちゃんが来たの。すっごく恐い顔だったの。お爺ちゃんはお屋敷の人を何度も何度も叩くの。血が出て骨が折れて潰れる音が部屋一杯に広がるの〉






やはり居ない。いや、存在していない事になっている

美鈴から聞いた屋敷の人間は何処を捜しても存在しない


菊地財閥の力をもってしても親族すら見付けれないのならこの世には居まい

深娜は深い溜め息を吐きパソコンを閉じる


王刻豪一郎


恐らく菊地財閥裏方と同等、或いはそれ以上の事をしている恐れがある


「霞はここまで知ってるのかしらね・・・・・」




すると部屋の戸を叩く音

「お姉ちゃんご飯なの。今日はチャーハンなの」

ゆっくり戸を開け顔を覗かせる美鈴。深娜は美鈴の過去を忘れるように頭を軽く振り部屋を後にした




夕食後、片付けをしている俺の服を美鈴ちゃんが引っ張る

「お兄ちゃん、お風呂入ろ?」

「ん〜無理。まだ死にたくないから。ほら、法に触れるしこの場で消し炭にされちゃうから」


ねだる美鈴ちゃんをなんとか説得しようとしていると、思わぬ助力が駆け付けた


「美鈴、お風呂入るわよ。早く仕度しなさい」

「・・・・・深娜?」

「・・・・・うん!分かったの姉ちゃん」

美鈴ちゃんは嬉しそうに着替えを持って深娜の後ろに続いた

暫く呆けていたが笑ってしまった

まるで本当の姉妹だ












浴槽にて

「・・・・・美鈴」

「なに?お姉ちゃん」

「いい加減触るの止めなさい」

「目標なの」

加弥「加弥と!」

洸夜「洸夜の!」

加・洸『テレフォンショッキング〜』

加弥「今回初のテレフォンは菊地財閥の副社長?幸澤故雪さんで〜す」

幸澤「お久しぶりです。大甼加弥さん、私は副社長ではなくあくまでお嬢様の秘書ですから」

洸夜「でも実際は上の役職ですよね?」

幸澤「そうですが私の上には五老院という役職がありますよ。それに私個人の力は微々たるものですから」

加弥「じゃあ最後に麗奈さんに一言お願いします!」


幸澤「お嬢様。御願いですのでお一人で厨房に立つのはお止めください。卵は電子レンジで温める物では御座いません」

加・洸『常識は大切に〜。テレフォンショッキングでした!』

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