2・這上がる道は一つだけ?
どうも、拉致られた霞です。いま私は手足を縛られ通称『マグロ』状態で車と思われる乗り物に閉じ込められています
まれに激しい揺れがありますが側頭部を強打する以外は問題はないようです
それでは一度スタジオにお返しいたします。佐々木さーん。
まずいよ俺、
正気に戻れ俺。
まずは俺のことを思いだそう
俺の名前は霞。光世高校に通う極々一般的な生徒な訳だ。一般ピーポーだから特に環境も変なとこはない・・・・はず
良かった、俺まだ正常に違いない
しかし脱出不可能で長いこと揺られていると暇になってきたな。昨日も徹夜だったし眠い・・・・・いやいや今は人生初の拉致の可能性が高いわけで、もしかしたらこれは拉致犯の作戦かもしれん。だが眠い、暇だ・・・・・・・・寝るか
《時間早まってさらに一時間経過》
目的の場所に着いた車から降りる二人の男
上等な黒のスーツを着た男がトランクを開けると、呑気に寝ている少年がいた
「こいつ寝てやがる。どんな神経してんだ?」
「いいんじゃねーか、その方が都合いいし。さっさと部屋に連れていこうぜ」
「そうだな。ならちゃっちゃと運んで飯の続き食おーぜ」
「お前よく素麺に麻婆かけて食うな」
「うるへー」
二人の男は爆睡中のバカを目的の部屋に放り投げると縛っていたロープを切り捨てガムテープで鼻を押さえてから部屋を出ていった
むぐぁー!
変な奇声と共にガムテープを剥がす
「なにさらすんじゃゴラ。鼻を押さえるとかどーゆー了見じゃ!」
一目散に部屋の入り口にドロップキックをかましてやったが見事に弾かれた
「んのぁっ」
床にゴロゴロと転がった後、改めて部屋を眺めた。意外に広い部屋はベットにチャブ台、天井には監視カメラがこちらを撮影している
俺はチャブ台をカメラの下にセット
「盗撮すんなー!」
見事にチャブ台でカメラを壊してやった
レベル2の俺。経験値20取得、次のレベルまで後29980
「えー、そこの器物破損犯、静かにしなさい」
何処からともなく若い男の声
「うるせー拉致犯!」
「静かにしたら出してあげますよ」
その場で膝を折り、まだ壊していないカメラに向かって土下座する俺。出してくれるならプライドの一つや二つ投げ捨ててやる
そんな光景を画面越しに眺める20前後の男は振り返り
「お嬢様、案外軽い人間のようですが、よろしいんですか?」
男の視線の先には、華やかに着飾った人形のように綺麗な17、18程の少女がいた
「構いませんわ。その方が扱いやすくて。それに私にかかればあんな男なんて」
「ではこちらにお呼びしますので」
男はマイクに向かってこう言った
「少年、君に選択権を与える。一つ目は私達に従うか、二つ目はジャングルの奥地に下着姿で放り出されるか。好きな方を選びたまえ」
霞は壊れ欠けたチャブ台をまたひっくり返した