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16・今は儚くも美しく、過去は美しくも醜く

ああ、なんだこの触り心地

柔らかくも内に秘めた力

華奢な様で何者にも屈しぬ強さ

甘く漂う夢心地の匂い

全てを包む自然にして無限たる匂い


ああ、あああ。ああああああああああ

「ねー霞、これどーする?」

「加弥、我家に粗大ごみ兼生ゴミを捨てる場所はない」

日曜の朝日は清々しくスッキリとした朝を迎えることができた。

一名には天の迎えが来たようだが


さて、今日の朝食を作るのは慎の筈なのだが多分彼は地獄の底でクモの糸を登っている最中だろう

と言うことで只今キッチンに立っているのは加弥である。

俺愛用の黄色のエプロンを身に付けベーコンエッグにハムサンド。サラダはフルーツが多少多めです

「相変わらず簡単な物なのに上手く作るな」

「そりゃーそうよ。霞仕込みだから」

「つっても中学の時以来教えてないがな」

「まーねー♪」

とても和やかに雰囲気です。なんだかんだ言っても加弥は可愛いのだ。暴力面さえ無視すればだが

『・・・・・・・・・・・・・・』

「さ、後は一人て出来るだろ。俺はホットミルクでも作るかなー」

「えー、仕上げ手伝ってよー」

俺の身が危険だから駄目だよ

「ホットミルク飲む人ー」

無言で手をあげる二人

火傷の危険あり


「さて、今日は何をする?」

左手が妙に赤い俺の質問に誰もが頭を捻る

加弥

「朝からゲームもなんだしね」

深娜

「出掛けるにも日曜のGW、無謀ね」

「しかも明日は出校日だ」

先塚

「遠くには行けない」

どうしたものか

悩むこと9分48秒72

え、細かい?気にしない気にしない

その時俺の頭に赤い人が先読みが出来る時に出る光りがキュピーンと輝いた

「慎、加弥、あそこがあるぞ、」

『????』

「遅咲きの原がある」




輝く太陽の光に反射する桜の花びら

幾重にも重なり舞い散る花びら

5本の桜が立ち並び、その場所は街を見渡す絶景の穴場であり俺と慎、加弥しか知らない秘密の花見場所なのだ

「やっぱ綺麗だなー霞」

「久しぶりに来たもんねこの場所」

「やはり良いもんだな、いつ来ても」

「彼方達よくここに来るの?」

深娜の質問に

「いや、特に決まって来るのは春とか秋だな。後は暇潰しだ」

納得したのかしないのか相変わらずの無表情で桜を眺める

先塚はさっきからビデオを回しっぱなしである

「・・・・・・」

自分の世界に入ったか


「よーし、早速御花見始めよー」

可愛らしいシートを広げ持参した手作り弁当(ほぼ俺が作ったが)を並べ日本酒片手に

「そんな物は持ってきとらん」

『ブーブー』

皆でブーイングなんて酷いな

「それにしてもよくこんな場所見付けたわね」

ハムサンド片手に深娜は感心している

「ま、怪我の功名ってとこでしょ」

加弥は笑いながら話した

「小学の4年の時に遠足でこの山の天辺に行ったんだ。そしたら霞がね」

「ああ、クラスの馬鹿尾崎が俺の靴を放り投げてな、斜面を転がって落ちて見失ったんだ。加弥と一緒に探して奥に進んでったらここを見付けたんだ」

「仕返は面白かったね」

「杉の枝をリュックに入れといてやった。あいつ3日休んだな学校」

「次の日鼻水垂らして来たときクラスで爆笑だったしね」

この場所にいると嫌な過去も楽しく語れるのだ。未だに不思議に思うがいいんだろう。こんな場所があっても


昼食の後は皆揃って桜の下で日向ぼっこ。

下から眺める桜は風で穏やかに揺れ花びらを舞い散らす。

揺れる花びらの間からは優しく太陽の光が降り注いだ

何度やっても飽きない数少ない憩いの場なのだ



いつの間にか四人とも静かな寝息を立てながら思い思い夢の中へと向かう


皆の寝顔を見ながら一人住み馴れた街を見下ろす


「いつまでも変わらなきゃいいな」

誰にも聞こえないような小さな呟き

桜の木に寄りかかり周りで眠る四人

「すぱ〜くりんグ〜」

加弥、お前どんな夢をみているんだ?

「や、柔らか・・・い匂い・・・・・・ああー」

慎、病院行け

「そこで霞君・・・・落ちる」

先塚、撮影で俺を殺す気かい?

「・・・・・・・・・・・・御嬢様」

深娜、お嬢様ってあの化粧凄いあいつのことか?悪いことは言わん、あんな風にはなるな

苦笑いをしながら見ているとふと思い出した

俺は自分のリュックからカメラを取り出す

「記念撮影ってことで了承は取らんぞ」


「拒否しとくわ」

「あ、起きた」

目を開けた深娜をレンズごしに見る

カシャ

「盗撮で訴えるわよ」

「気にするな、俺の思い出だ」

「思い出なんて時がたてば醜いものなのよ」

「・・・・、お前なー」

しかし深娜は寝起きとは思えない険しい目つきで

「彼方の過去はそうかもしれない。でも私は違うのよ。彼方とは・・・・・・」

睨む瞳には熱く煮えたぎるような殺意と共に深海にも似た暗く重い哀しさが映ってる様な気がした。溜め息を吐いた俺は深娜を見据える

「忘れろなんて無責任なことなんて言わん。それを背負って行けなんて言う気はない。無理なら無理で他の道があるんだ、その辺頭に入れとくのも悪くないだろ?」

「あんたに言われるとなんかムカつくわね」

「気にするな、笑える深娜さんよ」

「わ、私がいつわらっ」

「ほれ」

ケータイに写るほんの少し頬の緩んだ深娜

「!!」

ああ、ついに深娜に勝った。

「こ、これは・・・・・・いつ」

「昨晩だ。お前が寝た時にな」

その後しばし深娜は無言だった

多分深娜は打開策でも練ってたんだろうな

「霞・・・・」

ユラリと立ち上る殺意の波動

「一つ教えてあげる」

一瞬の隙に懐に潜り込み左手を掴むと外側に捻り左足を膝裏にかけ体を捻る

体勢が崩れ後ろに倒れる俺に追い討ちをかけるように捻る体を中に舞わし踵を溝に沈める

体が痺れ視界がぼやけるなかいつの間にかマウントポジションの体勢に持ち込まれる

首筋に触れる手刀、後数センチ深ければ確実に刺さっただろう

「これでも私、昔3人殺した事あるのよ。彼方に何かを知ることが出来る?」

俺は乾いた笑みで

「俺に出来るのは今のお前を知ることだ」

「今を知って何になるの」

近づく顔は無表情であり、何かを拒む表情

「知った上で考えるさ、納得のいく答えを見付けるために」

「傲慢ね」

「だから俺なんだよ」

自分が知る唯一の意思だ

曲げる事は出来ない意思な・・・・

「か、霞・・・・、深娜ちゃん」

信じられない物を目撃してしまった様な、

松田聖○の本名を知ってしまった様な声をあげるのは

「か、かかかかか加弥」

「霞、お前もついに男になったか」

「馬鹿か慎、この首筋が見えんか」

「赤い跡が、イヤらしいよ霞君」

「撮影なんかしないでよ先塚、変な証拠にされるじゃん。深娜、お前も何か言ってよ」

「ただのスキンシップよ。問題ないわ」

「バカー・・・・・・」

夕桜に一句


春の風、木々に染み込む、阿鼻叫喚





花見の後にのんびり帰る4人+1。慎は肉辺をシートに包み人目に付かない様に運んでます。周りの配慮は万全です



「明日学校だし一旦帰ろうか。どうせ一回行けばまた3日休みだしさ」

「そうだな。ならこれ届けたら皆一旦解散か」

「私はいいの撮れたから編集したいしいいよ」

「分かったわ。ならそれ庭に投げといて」

シートを指差す深娜は無情にも家に入れる気はないようだ



解散した皆は各々の帰路に着いた

視線を横に向けると無惨に横たわるシートに包まれた肉辺


「晩御飯どうしようかしら」

今の彼女の問題はそこにあった

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