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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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俺の親友がハイスペックすぎる

作者: AK3t
掲載日:2026/08/15

男女比1:20の世界に転生した。

……と聞くと、普通はモテると思うだろう。

俺も思った。

前世でWeb小説を読んでいた頃は、男女比が狂った世界の男のキャラなんて、だいたい決まっていたからだ。


 努力しなくても女が寄ってくる。

 だらしない。

 女遊びが激しいか、逆に女を忌避してる。

 女は男に尽くすのが当たり前だと思ってる。

 でも希少価値だけで許される。


端的に言えばアホでクズ。

そういう生き物だと勝手に思っていた。

そして相対的に俺の評価が上がるだろうとも。

───だけど、現実は違った。


「おはよう、(みなと)


机に突っ伏す俺に、爽やかな笑みを浮かべる美青年。

下手なモデルより整った顔立ち。艶のある黒髪。すらりとした長身。モデルみたいに着崩しひとつない制服。


「……おはよ、紫苑(しおん)


九条(くじょう)紫苑───唯一の男のクラスメイトにして、俺の親友である。

成績優秀、スポーツ万能、良家の息子で、人当たりも完璧という、ちょっとどうかしてる男だ。

だけど嫌味は無い。

むしろ妙に世話焼きで、困ってる奴を見ると放っておけない主人公タイプだった。

外面も中身も完璧超人。


そのせいで男女問わず人気が高い。

この世界だと特に女子人気がヤバい。

今もクラスの女子たちが妙にソワソワしていた。


「あっ、紫苑くん……!」

「今日も素敵……」

「こっち見た……!」


あちこちでこだまする黄色い声。

アイドルか?

しかもコイツ、その全てに爽やかスマイルで応対する。

明らかに手慣れていて少し怖いくらいだ。

前世の価値観を未だに引きずっている俺には無理な芸当である。


……()()()()()()、俺だって別に悪い見た目じゃないと思う。

清潔感には気を遣ってるし、陸上部に入ってるから筋肉もそれなりにある。

勉強だって手抜きせず、2周目ブーストも活かして学年トップ()()()を維持してる。

なお、トップは大抵紫苑。


……足りない。

紫苑に限らず、この世界の男たちの平均スペックが高すぎる。

なんなんだよ。

男が希少ならもっとこう……油断するだろ普通。

なんで全員、誇り高いモテ貴族みたいになってるんだ。

優れた遺伝子以外は淘汰されちまったのか。

俺が内心で頭を抱えていると、隣に立つ親友が不思議そうに首を傾げた。


「どうしたの?」

「いや別に……」

「顔色が少し悪いけど、大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「そっか。……でも無理はしすぎないで」


そう言って自分の席へ移動した。

昨日は遅くまで勉強してたから少し寝不足なんだけど、紫苑はすぐに察したようだ。


優しい。

いや本当に優しいんだよ。

前に俺が風邪引いた時も、授業のノートまとめて持ってきてくれたし。

しかも字が綺麗。欠点どこだよ。

そんなことを考えていると、背後から元気な声が飛んできた。


「おっはよー、湊くん!」

「ん…?」


振り返ると、茶髪のギャルが片手を上げながら近づいてきた。

彼女は相沢(あいざわ)莉乃(りの)

クラスでもかなり目立つ女子で、いわゆる陽キャ。

ただ、この世界基準だと“チャラ男ポジション”らしい。

男女比が逆転すると文化も変わるんだなあと、未だに時々思う。


「宿題見して〜」

「またかよ……たまには自分でやりなって」

「いいじゃんいいじゃん!」


悪びれもなく笑う相沢さん。

俺はため息を吐いて“ふ〜やれやれ”感を演じつつ、カバンからプリントを取り出した。


「ほら」

「んっ、ありがと!」


まあ、この子も色々大変らしいしな。

片親で、放課後はバイト掛け持ちしてるとか聞いたことあるし……それを知ってると強く言えない。


「というか、紫苑に見せてもらえばいいんじゃない? アイツ頭良いし、全部正解してるだろ」

「あ〜……」


相沢さんの笑顔がほんの少し引きつった。


「紫苑くんはちょっと、その……お硬そうっていうか……?」

「そんなことない」


はたから見れば非の打ち所の無い高嶺の花かもしれないが、紫苑はそれだけの男じゃない。

誤解を解かねばならない。


「優しいし、ちゃんと話も聞くし、融通も利くぞ。前なんか───」


そこから数分ほど、俺は紫苑の長所について説明した。

面倒見が良いとか。

スイーツ好きとか。

最近ぬい活にハマってるとか。


「マジで?」

「マジ。可愛いだろ」


なぜか少し誇らしい気持ちになる。

しかし相沢さんは、なんとも言えない微妙な表情だった。


「……そだね〜」


なんだその反応、褒めろやもっと紫苑のこと。








放課後、今日は貴重なバイト休み。


「よーっす」


文芸部の部室の扉を開けると、いつもの静かな空気が流れていた。

窓際の椅子に座って黒髪眼鏡の女の子──(しおり)が文庫本を読んでいる。

私の幼馴染で、数少ない気を遣わなくていい相手だ。


「……ん」


ページから目も離さず、たった一文字で返事を済ませてしまう。

相変わらず無愛想だ。

でも、今更そんなことはどうだっていい。

私は椅子に座るなり机へ突っ伏した。


「あ゛〜〜〜……」

「うるさい」

「そう言わずに聞いてよぉ……」


ようやく本を閉じてこちらを見てくれた。


「で、進展は?」

「それがさぁ!」


私は勢いよく顔を上げた。


「宿題見せてもらう仲にはなった!」

「それは前に聞いた。順調じゃん」

「でもそこから全然進まない!」


栞は呆れた顔をした。


「“宿題を借りる()()の女”だからでは?」

「いやだって急に距離詰めたら引かれるかもじゃん!?」

「そのヘタレ思考、一生治らなそう」

「やめろよぉ……」


ぐうの音も出ない。

私は呻きながら椅子にもたれた。


「しかもさあ……今日なんか、“紫苑くんに宿題見せてもらえば?”とか言われたんだけど」

「……ああ」


栞が妙に納得した顔をする。


「それで?」

「いや、私も慌てて“紫苑くんはちょっとお硬そうっていうか……”って適当に言い訳したの。そしたら……惚気が始まった」

「でしょうね」


遠い目になる私と、妙に嬉しそうな栞。


「やっぱりさあ、あの2人って“そういう”関係なのかな」

「今は“まだ”そこまでの関係じゃないと思うよ」

「まだ!?」

「私の見立てだと、あれは紫苑くんの片想い。だけど陥落は時間の問題」

「嘘だ……!」

「もし陥落したら紫苑くんはバリタチ」

「いやそこまでは聞いてない」


一呼吸置いて、今度は栞が真剣な表情で聞いた。


「で、惚気の内容は?」

「色々……“最近ぬい活にハマってる”とか教えてくれた……」

「ほうほう」

「“可愛いだろ”って自慢してた……」

「素晴らしい。これ以上の薔薇(芸術作品)は存在し得ないだろうね」

「なんというかさぁ、これが栞の言ってたNTR(ネトラレ)ってやつ?」

「寝てから言え」


栞は深いため息を吐き、眼鏡をクイッと押し上げて言った。


「どっちかというと、むしろアンタが“薔薇の間に挟まる女”だからね?」

「うっ」


否定できない。

だってあの二人、距離感がおかしいのだ。

自然に隣を歩くし。

当たり前に互いの世話焼くし。

視線合うだけで空気がほんわかするし。

創作の世界から飛び出したかのような2人だ。


「でもまあ」


栞がぽつりと呟いた。


「案外、告白したら普通に受け入れてくれるかもよ?」

「えっ」

「湊くん、女の子に興味自体はありそうだし」


ドクン、と心臓が高鳴った。


「“そういう視線”、感じたことないの?」

「それは……」


ある。

というか結構ある。

距離近いと露骨に緊張してたり。

前にジュースこぼして下着が透けた時も、慌てて目を逸らされたり。

実はむっつりである可能性はゼロじゃない。


「でもなあ〜……」

「ヘタレ」

「だからその3文字やめてってぇ……!」


私の情けない悲鳴が、静かな部室に響いた。


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