午後、猫と君と。
土曜日の昼下がり。
柔らかな日差しが、公園を照らす。
優しいコントラストが、遊具を包んでいた。
「なんて平和な風景」
僕は、だれともなくつぶやく。
昼下がりには珍しく、誰もいなくて。
「お、でもお前はいるのな」
滑り台のてっぺん。
我が物顔で座る猫がいた。
逃げる気配のない猫は、ここの主みたいなもんで。
いたりいなかったりするけれど、だいたいいるのが主たる所以だ。
「今日もサービスしてくれよー?」
おもむろにスマホを取り出す。
公園に来るたび、こいつを撮るのが習慣になっていた。
学校帰りも、休みの日でさえ、だ。
「今日もいいねぇ、そのふてぶてしさ」
まるで猫専門のカメラマンだ。
僕のスマホのアルバム。
それはこいつが大半だ。
整理しようと思っても、
つい面倒で先延ばし。
「なーんか、消せないんだよなぁ」
撮る。
見返す。
ニヤける。
撮る。
ニヤける。
「目線こっちくださーい」
さながら個撮だ。
ただし、モデルは仏頂面。
愛想なんて微塵もない。
僕が撮ると、どうしてこうも……。
――にゃー。
「おぉ、めずらしく可愛い表情撮れそう――」
急いでシャッターを切った。
「……っ」
でもそこには、猫以外も映っていて。
「やっほー!鎧戸くん」
「は、花咲さん・・・?!」
満面の笑みのクラスメイト。
向日葵みたいな笑顔が、猫と並んで映っていて。
可愛い笑顔の――僕の好きな人。
「いい写真撮れてる?」
「う、うん……」
僕の焦りもよそに、猫は大きな欠伸ひとつ。
気ままな猫は、知らないふり。
「鎧戸くんも猫すきなの?」
「猫が好きっていうか、……えーと、うん、まあ……」
「この子いつもここにいるもんね。それで私もたまに――」
「~~~……」
「~~――」
遠くで、子供たちが駆けてくる音がした。
昼下がりの公園に、ふつうの喧騒が戻っていく。
いつもの公園。
いつもの猫。
でも――
いつもとは違う”消せないデータ”が、またひとつ。
僕のスマホに、そっと保存された。




