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午後、猫と君と。

作者: 灰音かぐら
掲載日:2026/03/10

土曜日の昼下がり。

柔らかな日差しが、公園を照らす。

優しいコントラストが、遊具を包んでいた。


「なんて平和な風景」


僕は、だれともなくつぶやく。

昼下がりには珍しく、誰もいなくて。


「お、でもお前はいるのな」


滑り台のてっぺん。

我が物顔で座る猫がいた。

逃げる気配のない猫は、ここの主みたいなもんで。

いたりいなかったりするけれど、だいたいいるのが(ぬし)たる所以だ。


「今日もサービスしてくれよー?」


おもむろにスマホを取り出す。

公園に来るたび、こいつを撮るのが習慣になっていた。

学校帰りも、休みの日でさえ、だ。


「今日もいいねぇ、そのふてぶてしさ」


まるで猫専門のカメラマンだ。

僕のスマホのアルバム。

それはこいつが大半だ。


整理しようと思っても、

つい面倒で先延ばし。


「なーんか、消せないんだよなぁ」


撮る。

見返す。

ニヤける。

撮る。

ニヤける。


「目線こっちくださーい」


さながら個撮だ。

ただし、モデルは仏頂面。

愛想なんて微塵もない。

僕が撮ると、どうしてこうも……。


――にゃー。


「おぉ、めずらしく可愛い表情撮れそう――」


急いでシャッターを切った。


「……っ」


でもそこには、猫以外も映っていて。


「やっほー!鎧戸(よろいど)くん」

「は、花咲さん・・・?!」


満面の笑みのクラスメイト。

向日葵みたいな笑顔が、猫と並んで映っていて。

可愛い笑顔の――僕の好きな人。


「いい写真撮れてる?」

「う、うん……」


僕の焦りもよそに、猫は大きな欠伸ひとつ。

気ままな猫は、知らないふり。


「鎧戸くんも猫すきなの?」

「猫が好きっていうか、……えーと、うん、まあ……」

「この子いつもここにいるもんね。それで私もたまに――」

「~~~……」

「~~――」


遠くで、子供たちが駆けてくる音がした。

昼下がりの公園に、ふつうの喧騒が戻っていく。


いつもの公園。

いつもの猫。


でも――


いつもとは違う”消せないデータ”が、またひとつ。

僕のスマホに、そっと保存された。





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