意外な事実?
「…………ふぅ」
「……どうしたの、水音。さっきから、ずっとアホ面なんかして。あんた顔ぐらいしか良いとこないのに、それすら台無しにしてどうすんのよ」
「……うん、我が愛娘に対する発言とは到底思えないよね、お母さん」
それから、数時間後。
夕谷家の食卓にて、ぼんやりしていた私にふとそう尋ねるお母さん。いや、アホ面してたであろうことは否定しないけど、それが愛娘に対する発言? ……まあ、顔を評価してくれていたことには驚きだしちょっと嬉しいけど。
……ただ、それはともあれ……まあ、未だに上の空というか、まだちょっと頭がほわほわしていて。
『……でも、嫌なわけなんてない。すっごく素敵で魅力的な、お姉ちゃんの個性だよ』
私のコンプレックス――力が格段に強いという、私にとって呪いでしかなかったこの忌まわしき特徴をこの上もなく褒めてくれた鴇杜くんの言葉。
……衝撃、だった。今まで、そんなふうに言ってもらえたことなんて一度もなかった。怖がられたり嘲られたりされたことは幾度もあったけど、そんなふうに言われたことなんてただの一度も。
……まあ、だからといってその人達を責める気も起きないけど。だって、私も他人のことは言えないから。例えば、こんなに力の強いのが私でなく他の女の子だったら……馬鹿にしたりはしないけど、その子のことを魅力的だなんてきっと思わなかっただろうから。
……でも、彼は違った。こんな私の――呪いでしかなかったこのコンプレックスを、素敵で魅力的な個性だと言ってくれて。
……でも、それでもまだ思えない。あの言葉は本当に嬉しかったし、鴇杜くんには申し訳ないんだけど……それでも、もう五年以上すっかり染み付いたコンプレックスはそう容易くは拭えない。だから――私は、ある一つの決意をした。
……ところで、それはそれとして――
『……あの、鴇杜くん。その、このタイミングで聞くことでもないんだろうけど……その、どこの高校?』
そう、控えめに尋ねてみる。あんな良いことを言ってもらった後にどうかとも思ったけど……まあ、どうしても気になってて。……あっ、でもただ気になってるだけだよ? ちょっと行ってみようとか、ましてや待ち伏せようなんて気は本当に全くなく――
『……えっと、その、高校はもう卒業してて……僕、もう二十歳で……』
『………………へっ?』
……うん、ほんとびっくりだよね。正直、高校一年生と思って疑わなかったし。そもそも、外見だけなら中学生かと思うくらいだけど……まあ、その歳じゃアルバイトは出来ないしね。
まあ、それはともあれ……たどたどしく私をお姉ちゃんと呼ぶ、めちゃくちゃ可愛い成人男性――
「――うん、全然アリ!」
「ちょっと水音! 何なの急に!! あと、壊すなって何回も言ってんでしょ!」
すると、不意に言い放つ私に驚きの――その後、すぐさま怒りの声を上げるお母さん。理由は、思わずぐっと握り締めてしまったプラスチックのお箸がポキンと真っ二つに……うん、ごめんなさい。




