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癒やしの小屋カフェ〜気弱で可愛い歳上男子はお好みですか?〜  作者: 暦海


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伝えたかったこと

「……な、なによあんた! つーか誰よ!」

「……私のこと、知ってますよね? 昨日、一瞬ですけど私のことを見ていたはずですし」

「……っ!! ……それは……」



 すると、ハッと目を見開き言い放つ女。それでも、その威勢とは対照的に声は相当落としているようで。……まあ、そりゃそうだよね。

 そして、それはこちらとしても好都合。こんな醜い一幕を、わざわざあの綺麗な目に映す必要なんてない。なので、こうして彼の死角となる位置で話し掛けてはいるけど……うん、気付いてないよね?


 さて、改めてだけど――顔をすっぽり覆う黒いフードに眼鏡にマスク……もちろん、どれも単体では決して不審に思うものではないけど、これが全て揃った上で夜道で身を潜めつつとなれば、それはもう怪しさしかないわけで。そして、彼女は――



「……貴女、あの人ですよね? 以前、鴇杜(ときと)くんに絡んでいたあのお客さんですよね?」



 そう尋ねると、さっと顔を背ける女。そもそも隠しているためほとんど顔は見えないものの、それでもさっきの声音や口調……そして、この反応で確信した。以前、鴇杜くんの腕にしがみつき誘いを掛けていたあの女だということを。まあ、あの時は愛斗(まなと)さんと颯也(そうや)さんのお陰でひとまず収まったけど。

 ……ただ、それにしても……偶然かもだけど、あれ以降見ていないと思ったら、よもやこんな形で……まあ、それはともあれ――



「……だったら、なんだっていうのよ。正義の味方気取りかなんだか知らないけど、もしチクったら承知しないから」


 すると、きっと睨みつけそう言い放つフードの女。そんな彼女の手には――カッターナイフ。……まあ、そうなるよね。ストーカーだったら、そりゃ凶器くらい持ってるだろうし。むしろ、この程度のもので安心したくらいで。なので――



「…………え」



 直後、茫然と目を見開くフードの女。まあ、それもご尤も。何故なら――瞬く間に、カッターナイフの刃がポキンと折れたのだから。



 きっとたいそう衝撃であろう光景に、ただただ茫然とした様子の女。……まあ、そうなるよね。私自身、自分でしといて結構な衝撃だし。


 さて、何をしたのかと言うと――まあ、言わずもがなかもしれないけど、さっと手を出しその刃の根元をポキンと割ってしまったことで。


「……な、なんなのよあんた……」


 そう、腰から倒れ込み告げる。割った刃を右手に持つ私を見ながら。……うん、これだと私の方が危ない人だよね。そういうわけで、いったんそっと道路(した)に置き――


「……っ!!」


 刹那、ハッと息の止まる音が。と言うのも、倒れ込んだ彼女の顔のすぐ横を、風の如く私の拳がすり抜けたから。すると、その際に生じた風によりハッとフードが外れ……うん、やっぱりこの人だ。そして――


「……分かってると思うけど、私はただのお客さん――二人とは、まるで立場が違う。だから、遠慮なく言わせてもらうけど……今後も鴇杜(ときと)くんに近づくようなら、今度は容赦しないからね?」

「……っ!! ……ひ、ひぃ!」


 そう、じっと目を見て告げる。すると、更に血相を変え脱兎のごとく去っていくフードの女。……まあ、あの様子ならきっともう(だい)じょ――



「…………あの、お姉ちゃん」


「……へっ?」


 すると、不意に控えめな声が届く。すると、そこにいたのは茫然とした表情(かお)の美男子。……もしかして、見てた? だとすれば、今すべきことは――



「……あの、鴇杜く――」

「大丈夫だった!? お姉ちゃん!」

「……へっ?」

「……あっ、その……ごめんなさい!」


 すると、さっと私の肩を掴みそう言い放つ鴇杜くん。でも、ハッと我に返ったようにさっと手を離して……いや、それはいい。全然いいんだけど……うん、ほんとドキッとした。今も鼓動(おと)が止まらな……いや、止まっちゃダメなんだけども。



「……その、ほんとにごめんね、お姉ちゃん。僕のせいで……こんな弱くて情けない僕のせいで、お姉ちゃんがこんな……」


 すると、少し俯きそう口にする鴇杜くん。……いや、なんで謝るの? 被害に遭っていたのは、他ならぬ貴方なのに……まあ、彼らしいけど。ともあれ、そんな彼に対し、私は――


「……っ!! ……お姉ちゃん」


 刹那、ハッと呼吸の止まる音が。と言うのも――力なく俯く彼の身体を、卒然ぎゅっと抱きしめたから。



「……あの、お姉ちゃん……?」



 そう、再びポツリと口にする鴇杜くん。その声音からも、戸惑いが大いに窺えて。……まあ、そりゃそうだよね。何の前触れもなく、急に抱きしめられたりなんてしたら。……だけど―― 



「……私は、貴方に救われた。だから、強くなろうと思えた。貴方が褒めてくれたこの力で、誰かを――貴方を護るために、強くなろうと心から思えた。だから、自分を責めないで。どうか……そんな悲しい表情(かお)、しないでほしいな」

「……っ!! ……お姉ちゃん」


 そう、ゆっくりと言葉を紡ぐ。……そう、これが伝えたかった。あの日、私は救われた。貴方に救われたあの日から、私は強くなろうと思えた。貴方が褒めてくれた――魅力的だと言ってくれたこの力を、ちゃんと自分自身で心から肯定できるように。この力で、誰かを……貴方を護れるよう、強くなろうと思えた。



「……ありがとう、お姉ちゃん……ほんとに、ほんとうにありがとう……」


 すると、震える声でそう口にする鴇杜くん。同じく震える手で……それでも、私に応えるように、私の背中へそっと手を回しながら。そんな彼を壊さぬよう、そっと大切に抱きしめた。






 

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