危険な夜道
「……その、ほんとにごめんね鴇杜くん。わざわざ送ってもらっちゃって」
「ううん、気にしないでお姉ちゃん。……でも、本当に大丈夫なの? すぐにでも、警察に通報した方が……」
「……うん、そうなんだけどね。でも、家族に心配かけたくなくて……」
「……うん、気持ちは分かるけど……でも、それでも通報した方がいいと思うな……その、僕も心配だし」
「……うん、ありがと鴇杜くん」
それから。一時間ほど経て。
そんなやり取りを交わしつつ、すっかり夜の帳が下りた帰り道を歩いていく。何故こんな時間になったのかというと、鴇杜くんの仕事が全て終わるまでお店の中で待たせてもらっていたからで。
理由は、家まで送ってもらうため。ここ最近、帰り道に誰かに付けられている気がして怖いから、申し訳ないけれど仕事が終わったら送ってほしいと無理を言ったためで……うん、ほんとにごめんね、鴇杜くん。
「……その、ほんとにありがとね、鴇杜くん」
「ううん、気にしないでお姉ちゃん。でも……」
「……警察に通報しなきゃ、だよね? ごめんね、心配かけちゃって」
「ううん、僕のことは気にしないで。……でも、通報してくれると嬉しいな」
それから、数分経て。
夕谷家の前にて、甚く心配そうにそう口にする鴇杜くん。まあ、今に限らず心配はずっとしてくれてたんだけど。……うん、ほんと優しいなぁ。
その後、ややあって別れの挨拶と共に手を振り扉の中へ。そして、玄関にて少し留まり――
「…………さて」
そう口にし、そっと外へと出ていく。そして、再び来た道を歩いていく。鴇杜くんに悟られぬよう、こっそりと。……ごめんね、騙しちゃって。それでも――
「――すみません、ちょっといいですか?」
「…………はっ?」
そう、さっと近づき声を掛ける。澄み切った暗い空の下、電柱に身を潜める女――ここ最近、ずっと鴇杜くんを付けていたであろう黒いパーカー姿の女へと。




