コンプレックス
「…………はぁ」
晴れやかな空が広がる、学校からの帰り道。
閑散とした住宅街を歩きながら、空の模様とは対照的な暗鬱たる息を洩らす私。……はぁ、今日もやっちゃった。
(……うっわ、また発揮してるよ馬鹿力)
(これで何個目って感じよね。あいつに使われる道具がかわいそ~)
数時間ほど前のこと。
京都府内の公立校、京清高校――その一年A組の教室にて、ほど近くから届くヒソヒソ声。だけど、聞こえないように言ってるわけではないのだろう。いや、むしろ聞こえるように……うん、だったらもういっそ直接……いや、いいや。それはそれで面倒だし。
ともあれ、何が起こったのかと言うと――つい今しがた使用していた鉛筆が、なんと真っ二つにポキっと割れてしまったわけで……別に、そんなに力を入れたつもりはなかったんだけどね。
――初めは、小学三年生の頃だった。
『……うわああぁん! 水音ちゃんが、水音ちゃんが思いっきり叩いて……うわああああぁん!』
『……えっ!? ……いや、わたし、そんな強くは……』
ある日の、お昼休みのこと。
和やかで楽しい給食の最中、不意に隣から響く女子の泣き声。いや、叩いたのは叩いたかもしれないけど……でも、そんなに強くなかったよね? こう、スキンシップ的な感じで軽く背中を――
『……うっわ、マジかよ酷っでぇな夕谷』
『……穂香、かわいそう。最低じゃん、夕谷』
『……え、いや、わたしは……』
すると、疎らに届くクラスメイト達の声。……いや、そんな強く叩いたわけじゃ……それでも、叩かれた当の本人が泣き止まないため刺さる視線は止まらない。……なので――
『……その、ごめんね穂香ちゃん。その、ちょっと強く叩いちゃったみたいで』
そう、そっと背中をさすりつつ謝罪を述べる。……うん、きっと自分でも気づかぬうちに力加減を間違えてしまったのだろう。尤も、正直のところ穂香ちゃんも少し大袈裟なんじゃないかという気もするけど……うん、今度からは気をつけよう。
――だけど、その後も似たような現象は止まらず。泣き出すまではいかずとも、軽く触れたつもりが痛いと怒られ、他にも――
『――そろそろいい加減になさい、水音! いったいいくつ壊せば気が済むのよ!』
『……あ、いや、わたしは……』
小学三年生の、ある秋の頃。
家に帰りほどなく、怒りの形相でそう言い放つお母さん。何の話かと言うと、お母さんの手にある真っ二つに割れた鉛筆についてで。
……そう、これもこの辺りの時期から頻繁に起きていたこと。でも、当然のこと壊そうとなんてしていない。ちょっと力が入った時に、急にポキっと……うん、ほんとなんでだろうね。
ともあれ、物は壊すわ他人様に危害を加えるわで、私はすっかり危険人物と認定されてしまい、現在に至るまで五年以上みんなから敬遠され……いや、この言い方はおかしいか。敬われてる気配なんて、表面上ですら感じてないし。




