(補完)第四十一章 ベルセルクヒーラー①
「神の威光を示します!」
その一言に俺はポカンと口が開いてしまった。
ヒーラーが突撃するな。
その言葉を発する間もなくアリエスが突撃していく。
ここはどこかの人間の街。指示の対象ではないが加護持ちが多すぎる。無視するには大きすぎた街だ。そこでアリエスの初陣と新魔物の運用試験を兼ねてここに来たのだが・・・。
町の合間を縫って人間を蹴散らしていくアリエスに言葉がでない。
アリエスとの対戦で戦闘センスがあるのはわかっていたがヒーラーが敵を薙ぎ倒すな。
しかも敵を仕留め損ねている。素人にありがちな奴だ。敵を倒すことに夢中になってトドメが疎かになる奴だな。一番危険な奴だが、そこはヒーラーか。後ろから切りかかれらてもビクともしていない。俺は死にぞこないを始末しながらアリエスの援護に回る。いつもは俺がタンクのような立ち回りだがこれはこれで楽だな。シノも今は髑髏を顕現している。それというのもアリエスの体力が持ちそうにないからだ。オーガよりも大型で暴れまわればそのヘイトと攻撃の集中は蛇女の回復力を上回る。ではどうするかというと俺達が速攻で人間を片付ける以外にない。
そろそろ片付く頃かと思っていたがアリエスが一人の人間と対峙している。余程の強者かと思ったがどうも様子がおかしい。アリエスが爪を使えないでいる。
言わんことじゃない。魔素切れか何かだろう。俺は石棍棒を大地の支配で作り出すとアリエスに投げて寄越す。先の重くなった奴ではなくただの長い棒だ。こちらの方があの体には使いやすいだろう。案の定棒術で人間を吹き飛ばす。
完全に新兵だな。窮地に際してトドメよりもその恐怖の対象を遠ざける方を選ぶ。この状況からいち早く逃れたいという心理状態だな。この戦闘センスが持ってして思考が新兵とは元聖女でヒーラー職となれば当然か。
俺達は最後の加護持ちを始末するとその場を後にする。
「で、俺の信徒よ。今回の戦いはどういうことだ」
「私の活躍がわが父の目には叶わなかったという事ですか?」
ちがーう。
「何故ヒーラーが突撃する」
「これが最善と判断いたしましたわが父。私が全てを引き受ければ皆が動きやすいでしょう」
なるほど。タンクの思考はあるわけか。そもそも聖女の動きはそれに近かった。
「それでもだ。今のお前は一魔物だ。聖女のような馬鹿げた性能を持ってはいない。俺達の援護が遅れていたら討たれていた可能性もある」
「私はあなたの信徒です。その力を示すために討たれたとしても本望でございます」
嘘だな。これは間違いなく嘘だ。だが何の嘘をついている?
こいつはまさか人間への恨みが芽生えて苦しめることに快感を憶えているのか?
「生存を優先しろ。今回のように最後にバテて止めを刺されたら敵わん。ペース配分だ。生きてこそ真価が発揮される」
「わかりました。わが父。次こそは期待に応えて見せます」
その笑顔に不安しかないのはどういうことだってばよ。