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英雄にすることもまた一つの恩返しである  作者: 若村鬼海
最終章 英雄を照らす者
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第九十五話 黒雲

 国王は息を呑んだ。

 それは今まで親しくしてきた隣国が突然の宣戦布告をしてきたからだけではない。

 セットン帝国という耳を疑う言葉。


 そして何より一番は、


「……な、なぜ《無獣》が…………」


 上空の一部を覆う黒い影。

 国王は一目見た時から《無獣》であるとわかっていた。だが、それが()()なのだ。


「一体、何が起きようとしておるのだ……!」


 国王は拳を強く握りしめる。

 決して彼が矛先を向けているのは目の前の《無獣》ではない。


『――これは挨拶代わりだ』


 国王の内に秘める気持ちとは裏腹に《無獣》は一言告げると、上昇。整列された下部の筒を全方位に向け、勢い良く何かが発射された。


「やめろ――ッ!」


 国王が叫ぶ頃には、発射されたものが王都中に着弾。

 爆発音とともに聞こえてくる国民の絶叫。


「なぜ!!なぜなのだ、奴は!!」


 国王は思わず、窓枠を叩く。そして上空の《無獣》を睨みつける。

 が、《無獣》は方向を変え、飛び去ろうとしていた。


「待て――――!!」


 身を乗り出し叫ぶ。

 その声は届くことはなく、国王は飛び去っていく《無獣》の背をただ見ていることしかできなかった。


「――へいや〜〜……や〜っと地上に出られた!」


「ていうか、出入り口あったのね……」


「まぁ……管理はしないといけないので……」


「そうですね……」


「いけるか、フォジュック?」


「……ああ、ドラゴン」


 国王が重く状況を受け止めていたところ、奥の壁が動き、通路が出現する。

 通路からはルビア達がぞろぞろと出て来た。


「ん?――陛下!」


 ウィーラが様子がおかしい国王に気付き、駆け寄る。

 その姿に遅れてルビア達が気付き、空気感が変わる。


「どうなされたのですか?」


「…………外を見てみろ」


 力の抜けた声で国王は答える。


「……外?」


 そう言われ、外を見た一同の瞳に光景が焼き付く。


「……そんな」


「さっきの音って……」


「やってくれるじゃねいかぁ」


「おのれ……!」


 だが、これはまだ始まりでしかなかった。


 ――――世界の分岐点の。


ー◆ー




「……面白くなってきたじゃねぇかァ」



 

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