第九十二話 ④誰と誰が
「ハウンドがやられたようだ……」
「そうだな」
離れた場所から二人は何かを感じ取る。
それをコランは感傷的に、ライダーは冷静に受け止めた。
「……それでどうするのかね、ライダー?」
コランはその場に崩れ落ち、ライダーに問い掛ける。
「見ての通り……私はこの有様だ」
ライダーはコランから視線を外し上を向くと、すぐまた戻す。
「殺しはしない。聞きたいことが山ほどあるからな」
「そうだろうね……」
「アンタら――――レイヴンは何をしようとしている?」
単刀直入に斬り込むライダー。
「……わかりきっていることだと思うがね」
返ってきたのはライダーの思った通りの答えだった。
「だな……」
呆れたように一息吐く。
そしてライダーは踵を返し、歩き出す。
「行くのか、まだ……聞きたいことが山ほどある……のではなかった…………か?」
問いにライダーは歩みを止めず、ただ一言。
「――それで充分だ」
ー◆ー
ハウンドの身体が鎮まり、やがて原型をとどめられず、細かな結晶へと姿を変えていく。
ドラゴンとフォジュックはその生き様を最後まで見守っていた。
――最後の結晶が儚くとも散りゆくさまを見届けると、
「立てるか、フォジュック?」
ドラゴンは手を差し出す。
「肩を貸してくれるとありがたい」
フォジュックは握り返し、どうにか立ち上がるとドラゴンと肩を組み、双方ゆっくり歩き出す。
「…………すまないな、このような事態になってしまって」
少しの沈黙の末、フォジュックは口を開いた。
「急にどうした?」
「その……ルビア殿達のことやコランのこととか――」
「そんなの気にすんなよ!」
「っ!?」
思いがけない言葉に目を開く。
「確かに言いたいことはわかる!だがなぁ――」
間を開けてしっかりとした声で発す。
「俺はもう迷わない、そう決めたんだ。だから気にすんな」
「ドラゴン殿……」
迷いのない真っ直ぐな眼差し、発する言葉の重さ。
同じく長年生きた者同士、意思の強さは痛いほどよく伝わってきていた。
本気であると。
「――――二人とも、落ち着い〜て!!」
と、奥からその空気感をぶち壊す声が二人の耳に入ってくる。聞き馴染みのある、どこか気が休まる声だ。
「元気そうじゃな、ルビア殿は」
「そうだろ、自慢の子だぜ!!」




