第九話 何奴!
「ウィーラ様、車への移動をお願いします」
騎士団員に指示を出したラーミルはそう促す。
「しかし……いえ、わかりました。ルビアさん、ティアさん、今日は急に押しかけてしまい申し訳ありませんでした」
ウィーラは深く頭を下げた。
「い〜えいえ、こちらこそ出過ぎた真似を失礼いたしました!」
「そうですよ!」
二人も遅れて頭を下げる。
「そうですか、ありがとうございます。今度はしっかりとした場を設けますので、改めてお話出来たらと思っています」
そう言うとウィーラは微笑んだ。
「では失礼します」
そして、ウィーラ一同はルビア達の家を去って行った。
ー◆ー
「勝手過ぎではないか?」
「うん、勝手過ぎだね」
彼女らが去った後、私達は愚痴を言っていた。
「ウィーラさんはともかくあの騎士団長、かなりヤバいぞ」
「確かに。自分から話を切り出しといて、勝手に話放り出してどっか行っちゃったもんね」
「いくら仕事とは言え、流石に俺でもあれはどうかと思うぜ」
いつの間にか、父さんも交ざっていた。
「まぁ、せめて一言は欲しかったね」
「それは私も同感だ」
「申し訳ない。我らの教育不足だ……」
「そうだ、あんたらの教育不足だ」
「そうそう」
「うむうむ……ん?今のは誰が……へ?」
「……何も言い返せん」
謎の声の方向を見ると、そこには父さんぐらいはある純白の騎士がいた。
「だっ、誰だ〜貴様〜〜!」
「何だコイツ、いつからいた?」
「ななな、何!?」
「おっと、これは失礼した。我は――」
はっ!コイツさては……騎士団員の悪霊だな!!ならば
「――ア〜クリョッタイサァ〜ン!!」
私は大きく手で十字架を作った。
「悪霊だと?」
「お化け!?」
「いや、あの――」
その後、場が落ち着くまで五分くらい掛かった――
ー◆ー
「早とちりして大変、失礼しました!!」
私は今、全力で土下座をしている。
「いや、我ももっと早く声をかけていけば良かっただけの話じゃ」
「ありがとうございます……」
「では改めて、我はフォジュック・ライト。我が姫、ラーミルの《守護獣》である」
ま〜た出たよ、なんとか獣。
「あのー、シュゴジュウって……」
「これは失礼。《守護獣》というのは――」
ー◆ー
ラーミルは騎士団と共に村に向かっていた。
「ウィーラ様は?」
「別部隊が村を迂回して送り届けるそうです」
「そう。状況は?」
「現在、襲撃者は村に残った団員と交戦中。優勢な立場を保っています。」
「被害は?」
「怪我人はいるものの、死人は一人も出ていません」
「そう、ひとまず安心ね……」
なんという失態だ。尾行に気付かないんて……
ラーミルは後悔していた。
《無獣》の噂を聞いて、無理を言って同行させてもらい、その結果がこれだ。
ラーミルは改めて自分の未熟さを痛感した。
だが、下ばっかり向いてはいられない。
「もうすぐ村に到着する。各自、戦闘準備を」
「はっ!」