第八十五話 微かに動く
「ふー。さあ、カタをつけようぜ」
「時間が惜しい。私も成すべきことを成そう」
内輪揉めを終えた二人はそれぞれの相手と向き合う。
ハウンドはフォジュックさんに。
そしてコランは――
「さて、仕切り直そうか」
私達、か。
うん、おかしいだろ〜〜〜〜!
なんだ、この今からバトルしまっせ〜みたいな雰囲気は!?
私達はただ逃げていただけではないか!?まともに戦えるわけないだろ!!
「……ルビア、ちょっと集中した方がいいかも」
「へ?」
私の身体を支えるティアの手の力が強まる。
嘘でしょ?冗談半分の気持ちだったのだが!?
無理だぞ?もうそんな体力残ってないぞ!?
「安心なさい。二人は我が命に変えても守る」
フォジュックさんは私達を手で後ろに行くよう促す。
「そんな傷じゃあ……!」
「しかしそれでは――」
「何、心配するでない。昔に比べればこんなもん、かすり傷じゃ」
「「…………」」
適材適所という言葉はあるが、私達にはどうもその言葉を飲み込めない。
どっからど〜う見てもそうではないからだ。
「――一人だけカッコつけられても困るのですよ、我が同志よ!」
「そうですよ。これでもいろいろ乗り越えてきたんですから!」
「なっ!」
今、私は気付かされた。
体力がないからと言って、ただ見てるだけだなんて、それが許されるだろうか?
――否、笑止千万!!ダメに決まっているであろう!!
筋肉痛なんて、痛くも痒くもないぞ!!
い〜や、痛いか。
「お主ら、何を言っておるのじゃ!?ここは我に任せてだな……」
「我々を甘く見ては困りますよ?私達はこれまでいくつもの死線を乗り越えてきたリトル猛者と言っても過言ではない!そう、ノープロブレム!!」
「それは言い過ぎじゃない?」
「ああ……うむ」
「アイツ、ホントに大丈夫か?」
「恐らく……だが…………」
ー◆ー
ルビア達が落ちてきた最初の空間にて。
天井に空いた穴から一つの漆黒が現れた。
それは地面に近くに連れて、足裏から噴き出す炎を弱めながら、やがて着地した。
「…………ふぅ」
目を瞑り、一息。
彼――ドラゴンは覚悟を決め、目を開き、見渡す。
頭に過ぎるは遥か昔の記憶。
深く刻まれた傷。
実際にいた場所ではなくともここまで抉ってくる悪夢。
しかし、彼は過去に囚われている猶予はない。
「……行くか」
「――久しぶりに来ましたが、やはり心が痛みますね」
不意の発言にやっと己の背中にいた存在に気が付く。
「ウィ、ウィーラ嬢!?どうしてここに!???」
「それよりも早くルビアさん達を探しましょう!!」
「え?ええ……あっ、はいな」
ドラゴンは言われるがまま、見つけた通路に向かって飛んで行った。




