第八話 見よ、私流商談術を……え?
お待たせいたしました。
本日から、活動を再開いたします。
その目に刻むがいい、私流商談術を!!
「いますよ、家族ですので」
私流商談術その一、ここで敢えて肯定し、自分の誠実さをアピール。
「認めるのですね……」
「お気持ちはご察しします。ですが村の人達にお聞きしたならご存知だと思いますが、私達の家族は村に被害を出したことはありませんよ?」
私流商談術その二、下手に出るではなく少し強めな態度をとり、対等な場を確保する。
「えぇ、承知しております。そちらにつきましてもお話の余地はありますが、今回に違う件についてです」
よ〜し次は私流商談術その三って、え?今なんて言った?
「貴方がたのご家族、無獣なのでしょう?」
「ふむ……」
えっ、ムジュウって何?知らん知らん。
というかどうする。父さん達が村に出入りしていることが本題という体で話を進めていたが、本題が違うとなるとヤバい。……終わる!
「あ、あのー、そのムジュウって何ですか?」
すると、今まで黙っていたティアが口を開いた。
「《無獣》というのは全身が黒い金属のようなもので覆われた魔物のことを言うんですよ」
「成程……」
うぉ~、よくやったぞティア!これなら対処出来るかもしれない。
「ですが、仮に《無獣》だとして何が問題なんですか?」
「問題なのは村の安全性です。」
「……と言うと」
「そもそも《無獣》は今現在、非常に数が少なく、一部では絶滅したとも考えられています。そんな中、それらしい噂が広まれば良からぬことを考える者が現れるでしょう。そうなると、近くにある村はどうなりますか?」
「……」
う〜む、思ったより深刻だったわこれ。
「事の重大さがわかっていただいた所でもう一度お聞きします。貴方がたのご家族は《無獣》ですね?」
くっ、万事休すか……ん?いや待てよ。
その時、私はあることに気が付いた。
「ウィーラ様、申し訳ありませんが家には《無獣》はいませんよ」
「……本当ですか?」
「勿論」
嘘は付いてない。確かに兄さんは《無獣》に該当するが、今この場に兄さんはいない。
父さんにも一様黒い金属みたいなものがあるが、全身ではない。
よ〜し、これならいける!!
「そうですか……ではその証明をして頂けますか」
「えぇ勿論、喜ん――」
「――待って下さい」
私の言葉を遮ったのはラーミルさんだった。
「どうかしましたか?」
「ルビアさん、貴方は家にはいないと言いましたが、その言い方だと外にはいるように聞こえますが?」
ギクッ、なんて鋭さだ。これが王国騎士団団長か……チクショウめ!
「どうなのですか?」
ウィーラさんも追撃してくる。
「え〜とですね、う〜んと……」
ななななっ、何かないのか。ここまできたんだ、諦めてたまるか!
私は頭をフル回転させ、何かないかと模索していると――
「騎士団長、大変です!村が襲撃されています!!」
突然、外で待機していた騎士団の人が大慌てで部屋に入って来た。
「どういうこと!?説明して」
「それがどうやら何者かが尾行されていたらしく……」
「何ですって!?至急、車の準備を!」
えっ、なんか知らんが助かったぞ。
それより、何その急展開……