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英雄にすることもまた一つの恩返しである  作者: 若村鬼海
第四章 今、扉は開かれる
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第七十八話 もう一つの鍵①

 フォジュックは両手に持つ剣と大盾を構える。


「誰かは知らんが、王城に侵入するとは大したものじゃ」


「それはどうも」


「その声は……!」


 聞こえてきたマッドウルフの声にフォジュックは動揺する。


「フォジュック、あの時の奴よ」


「やはり」


 ラーミルが補足し、フォジュックは確信した。

 ()()あるじとその部下の命を自身がいながら、危険に晒してしまった――――最大の屈辱を与えた者。

 

 思い返すと、より一層力が増してくる。


「今回はお主の好きにはさせんよ」


「そうか…………なら、やってみろよ!」


 マッドウルフは飛び、鋭い爪による斬撃を繰り出す。

 対するフォジュックはそれを大盾で受け止め、弾き返す。


 ――すかさずフォジュックは剣で追撃を仕掛ける。


 しかしそう上手くいくわけはなく、爪で受け流される。


「ッ――」


 マッドウルフは距離を取り、構え直すやいなや、今度は別角度から攻め始める。


「甘いわッ!」


 この猛攻にフォジュックは臆することなく、弾き、捌く。

 

 両者、互角の攻防の末、フォジュックは決めにかかる。


『光の盾』


「――くッ!」


 唱えると同時に大盾を思いっきり前に押し出す。するとマッドウルフは盾ではない、見えない何かに激突する。


 そのまま飛ばされたマッドウルフは身体を反転し、爪を地面に食い込ませ、衝撃を殺す。


「もらった!」


 そこに出来た一瞬の隙をフォジュックを見逃さず、一気に踏み込む。そして剣を振り下ろす――


『パープルスラッシュ』


 だが、マッドウルフは一枚上手(うわて)だった。


 空いたもう片方の爪を振り上げ、紫の斬撃を放つ。

 それはタイミング良く踏み込んで来たフォジュックの懐に入り、横腹を彼の鎧ごと斬り裂いた。


「――――ぐはッ!」


 横腹から血飛沫を上げ、辺りに飛び散る。

 堪らず攻撃の手を止め、片膝を着いた。


「フォジュック!」

 

 ラーミルは傍に駆け寄り、両手で傷口を押さえる。しかし彼女の小さな手では完全には押さえきれず、ただ手が血に染まる一方だった。


「我が姫、剣を持っていない今は危険じゃ…………下がっておれ……」


「でもこんなに深い傷を負っていたら……!!」


「何、こんな傷、今までにいくらでも作ってきた……気にしすぎじゃ」


 振り絞った声で話すと、剣を杖代わりに立ち上がる。

 一度剣から手を離し、傷口へ持っていく。


『……光の盾』


 唱え、傷口から手を離すと出血の勢いは先程よりもかなり弱くなっていた。


「そんな細かい芸当が出来るとはな」

 

「言っておれ……」

 

 フォジュックは剣を再び持ち、構える。


「……我が姫よ」


 振り返らずラーミルにしか聞こえない大きさで声を掛ける。


「何かしら?」


「我がどうにか道を開ける。そのうちに騎士団庁舎に行け」


「なっ!?それはいけないわ、その傷で……!」


「頼むッ!」


「――っ!わかったわ。でも気を付けて」


「うむ」


「終わったか?」


「ああ」


「そうか、なら――――ぶッ!!」


 マッドウルフに間を与えず、フォジュックは大盾を最大限に活かしたタックルを撃つ。

 

「お、お前っ!」


「――!」


 フォジュックは止まることなく進み続け、そのまま後ろの壁をも打ち抜いて行った。


 二体の魔物は姿を消し、ラーミルのみが残された。


「ありがとうフォジュック」


 ラーミルはそれだけ言うと、突き当たりを曲がり、騎士団庁舎へと向かって行った。




 

 

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