第七十四話 パニック!パニィィック!イヤぁぁぁぁぁ!!
「どういうことだ……?」
国王は立ち上がると、コランを睨み上げた。
「おや、とぼけるおつもりですか?」
やれやれと言わんばかりにコランは肩を竦める。
こ・れ・は、私はどうしたらよいのだろうか?
「何を……!」
「はぁ……わかりました。そうですか……」
気落ちしたコランは振り返ると、父さんに杖の先を向けた。
「――ッ!」
――その瞬間、父さんは大きな尻もちをついた。
あ〜の、父さんが怯えている。
「うぇ、うぇ、ぇ!?」
「えーと、何が起きてるの!?」
「彼のお子さん達も混乱されてるようで大変でしょう。事が大きくなる前に、さあ、さあ、お話になられてはいかがですか?」
コランは顔だけを国王に向け、問いかける。
パニィック、パニィィック、何!何!何!?
「な、なんの――」
「――まだとぼけるか」
国王の返答を悟ったコランは丁寧な言葉遣いをやめ、より冷徹なトーンで遮った。
「不敬が過ぎますよ、コランさん!!」
さすがに見過ごせなくなったのか、ラーミルさんが二人の間に仲介に入る。
ん〜、この展開、嫌な予感がしてきたぞ〜。
「はっ、はっ、はっ!嗤わせてくれる」
「何がおかしい?」
「これだから人間は浅はかで、滑稽なのだ!」
先程までのコランの紳士的な雰囲気はほぼ消えていた。
う〜む。この人はとっても怖い人だ。
「いいだろう。そちらが話さないのなら、私が話そう――」
「させるモノか!ラーミル!!」
「はっ」
突然と荒ぶった国王が呼びかけると、ラーミルさんはコランに向かって掴みかかる。
ドレスなのによくもまぁこんなに動けるとは、王国騎士団団長は伊達ではなさそうだ。
しかし――
コツン。
ラーミルさんが届くよりも前にコランは杖先で床を優しく叩く。
すると、私達とコランの周りを囲うように床に亀裂が走った。
「――っ!」
ラーミルさんは亀裂の手前で急ブレーキをかける。
「「え」」
これって、もしや〜。
そして床が抜け、それごと私達は落下した。
「ルビアさん!」
「しまった!」
「コラン!」
「……お、お前ら!!」
「い〜〜〜〜や〜〜〜〜!!」
「も〜〜いや〜〜!」
「では、失礼。それと――」
落ちていく中、最後に聞こえたのは、
「ドラゴン、お子さん達を借りるよ」
ドラゴンに問いかけるコランの声だった。
ー◆ー
三人が落ちた後、王の間には国王、ラーミル、ウィーラ、ドラゴンの四人が残っている。
「国王陛下、これは……!」
「わかっておる。今すぐ衛兵を」
「はい!」
ラーミルは扉へと向かって行く。
「ルビアさん……」
一方、ウィーラは抜けた穴を眺めていた。
「ドラゴン殿、本当に申し訳ない。だが、わかってくれ。おぬしがどれだけの存在かを……」
「ええ、十分承知しておりやす…………」
国王はただ謝ることしかできなかった。
と、ドラゴンがいきなり国王に向かって土下座した。
「……お、おぬし?」
「……あの、不躾なことだとはわかっていやすが、オレにアイツの後を追わせてくりゃせんか!?」
「おぬしは大丈夫なのか?」
「そうとは言い切れやせんが、これは親としての行動です」
「そうか、行きなさい」
「ありがとうございぜぇやす……」
ドラゴンはなんとか立ち上がると、抜けた穴に飛び込んだ。
しかしこの時、あまりの動揺からドラゴンは気付かなかった。自身の背中にウィーラが乗っかっていたことを。




