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英雄にすることもまた一つの恩返しである  作者: 若村鬼海
第四章 今、扉は開かれる
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第七十二話 《無獣》の真実

 ロックブロスは現在のサライズ王国と隣国()()()()()()の境を中心に一つの大国として栄えた。

 その国は科学技術が大きく進歩し、とても平和的な国だった。

 おそらくその時を生きた者にとっては理想郷と言ってもいい存在だったに違いない。


 ――――しかし、その理想郷は呆気なく幻想へと化すこととなる。

 

 この国では優秀な科学者を集め、さらなる国の発展と進化のための研究を積み重ねていた。

 そんなある日、一人の科学者がとあることを発言した。


「国がよりよい発展をするためには我々、頂点に立つ人類が進化する必要がある!!」


 今からすれば、一部はまかり通るところもあるだろうが、全肯定できるとも言えない発言だ。

 しかし、当時の者のからしたらそれは()()()できると言い切れることであった。


 だからこそ賛同する者は多く、本格的な研究が始まるのはとても早かった。

 そして彼らは一つの答えを導き出す。


 ――――それは、人に魔物と科学を融合させ、新人類を誕生させること。


 魔物の生命力、その一部が持つスキル、最新鋭の科学技術を全て有した、決して死ぬことのない完璧の存在………………それが辿り着くべき進化先であると結論付けた。


 既に人知を超える話だが、しかし研究内容はそれ以上の悲惨なものでだった。


 何も知らないで集められた一般人を被験者とした人体実験。

 魔物の部位の移植。

 魔物への遺伝子組み換え。

 機械技術の組み込み。

 薬品投与。

 …………。

 ………………。

 ……………………。


 挙げれば数え切れない程の実験を繰り返し行い続け、その過程で生き残った一部の被験者達がとあるカタチへと変貌した。


 ――それが《無獣》である。

 

 身体中が黒い金属のようなもので覆われ、他者からの攻撃耐性と強力なスキルを持ち合わせたそれは、科学者が求めた存在に近しかった。


 目標に近付いていると歓喜する彼らに対し、魔物の姿となった被験者は絶望しかなかった。

 もう人としては生きられない。《無獣》であることに苦しみ続ける。

 そんな日々に終止符を打とうとする者が現れた。

 

「オレ達に未来はねェ。やってやろうじゃねぇかァ!」

 

 蛇の魔物の姿をした彼は他の被験者達の中心的な存在であった。

 その言葉に希望を捨てた被験者達は賛同し、彼に全てを任せることにした。


 ――そして、文明崩壊スタート・ワールドが起きた。


 大国を瞬く間に消し去ったその正体は彼、蛇の《無獣》のスキル『覇王る恐れ(キングス・ホラー)』による国を巻き込んだ大規模自殺であった。


 『ロックブロス』はこうして哀れな最後を遂げ、僅かに生き残った思想の違う《無獣》が現在まで生き永らえた、これが《無獣》の真実である。

 


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