第六十五話 大丈夫ですか〜?
少女はライダーを凝視しながら、じりじりと近付いていく。
「じぃーー……」
「…………」
――これはまずいな。
ライダーは心の中で呟いた。
現状、動けない状態に加え、自身ですら気付けない程の隠密を持つ得体のしれない少女が徐々に近付いてくる。
王都までの道中目を凝らしていたが、この少女が何者で、何が目的なのかはわからない。ただ、移民や迷子といったそこらの者ではないことは確かであった。
「これ、乗れたりしないですかね?」
目の前まできた少女はライダーを指で撫でながら一回りする。
「…………」
「さすがに鍵がないからムリですか…………あれ?」
鍵が挿さっていないのを確認し、その場を離れようとした少女はとあることに気付く。
「鍵穴が……ない」
――ッ!
違和感を感じた少女はライダーに跨る。
「もしかして、普通に動いたりして!」
――まずい。どうする?
ハンドルに少女の手が迫ってくる。
動くかどうかはライダーが決められる。しかし、ここで動かないと少女がどのような反応をするのか、ライダーには想像できなかった。
そして少女はハンドルを強く握り、アクセルをかける――
「やったー!動くぞ!!」
十分に考えた末、ライダーはひとまず少女に付き合うことにするのだった――
ー◆ー
翌日。
前日はとても良いものであった。最後にあんなにはしゃいだのはいつであろう?
い〜や、今はやめておこう。
現在、私とティアは王城の応接室にある豪華なソファに腰掛けている。
王城だから当たり前であるが、あのホテルですら本当に比較にならない広さと豪華さである。
う〜む。とて〜も緊張している!こんなの大手企業との取引の時以来である!!
「…………」
ティアに至ってはホテル以上に緊張して、朝からほとんど喋っていないが、大丈夫か?
少し、緊張をほぐしてやろう。
「ティアよ」
「な、な、何かな……?」
「緊張することはない。そんなに綺麗なドレスを着ておるのだ。むしろ、胸を張っていなさいな」
「――うッ!」
今回は身体のラインがキレイに浮き出た透き通った水色のドレスだ。とても良い。
ちなみに私は紺色のダブルスーツだ。本当はフカーヨス邸の時のものが良かったのだが、いろいろあってボロボロになってしまったから仕方ない。
「それに私もついているから問題な――――」
「…………………………」
い?あれ、どうしたティアよ?
なぜか顔を俯かせ、より黙り込んでしまった。
私、変なこと言ってないよな……?
その後、呼ばれるまで応接室は変な空気に包まれ、ティアはずっと尻尾を自分で撫で続けてていた。




