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英雄にすることもまた一つの恩返しである  作者: 若村鬼海
第三章 陽に照らされる陰
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第五十四話 嵐の前

 ザッザッーと、心が休まる波の音。

 その音を聞きながら、ドラゴンは大きめのパラソルの下であぐらをかいていた。


「それにしてもアイツら、おせぇな」


「そうか?普通ならこれぐらいは掛かると思うが」


 ライダーはドラゴンとは別のパラソルで、昼食の準備をしながら答える。


「あれか、お年頃ってやつか?」


「まあ、そんなところだろう」


「わけぇのが羨ましいぜ」


「……ほんとだな」


 二人しかいない浜辺で、たわいもない会話がただただ流れる。


「話は変わるんだが……」


 ライダーは手を止め、ドラゴンへ顔を向ける。

 ドラゴンも何かを察っしたのか、顔から笑みが消える。


()()()、二人に話した方がいいんじゃないか?」


「……」


「聞いたぞ、アイツがいたらしいな」


「……ああ」


 ドラゴンは海を見つめる。

 そこには果てしなく続く光景が広がっていた。


「できれば二人を巻き込みたくないのは俺も同じだ。だが、このまま知らないままだと――」


「そんなのはわかってるッ!」


 声を荒げるドラゴン。


「わかっているさぁ……いつかは話さないけねぇていねぇて……だがよぉ、もし……」


「――そうだな。だが、アンタの子だぞ。あんぐらいでどうこうなると思うか?」


 ライダーはドラゴンの言葉を補うように遮った。


「……ッ。ハ、ハァハハハハハハハ!それもそうだな。思い詰めた自分がバカだったぜぇ!!」


 ドラゴンの顔に笑みが戻る。


「そうだな」


 ライダーは口の端で笑う。


「よぉし、酒でも呑んでスッキリしようぜぇ!!」


「はぁ、せめて二人が来てからにしろよ」


ー◆ー


 とある国に向かって走る三両編成の列車。

 中間車両の中心には三席がそれぞれ向かい合って置かれている。

 その中の一席に上品に座っているのはコランであった。


の前だというのにやれやれ……」


 コランは空席を見ながら嘆息をついた。

 と、車両の扉が開かれ、気付けば空席の一つに座っている者がいた。


「遅かったですな、レイヴン」


「これは失礼、前の取引が長引いてしまいましたので――」

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