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英雄にすることもまた一つの恩返しである  作者: 若村鬼海
拝啓……未来の者よ……
46/103

第00話 ◑▽✛✦

 さ……を い い……る者 れ……を た託す……

 日が沈み、静まり返った森に焚き火の音がよく聞こえてくる。


 焚き火の近くには気を失っている三人が寝ている。

 その中の一人は金髪の女性――ラーミルだった。


「……ん、んん……ここは……」


 目を覚ましたラーミルは身体を起こすと、辺りを見渡す。


 部下の二人が目に入ると、無事だと安堵する。


「良かった――」


「目が覚めたようだな」


 すると奥の方から声がし、近づいてくる。


「なっ――」


 その姿を見た瞬間、ラーミルは目を見開いた。

 それは馬のような顔をした人型の《無獣》――ライダーであった。


 ラーミルは剣を抜いて攻めようと考えたが、状況が整理し切れなていないこともあった為、下手な行動は取るべきではないと判断した。


「もしかして、貴方が助けたのかしら?」


 ラーミルはライダーの方を見つめながら問う。


「ああ、そうだが」


「なぜですか?」


「何?」


 聞かずにはいられなかった。《無獣》と言っても魔物は魔物、人間から恐れられる存在には変わりはない。知能のある魔物であれば、それは周知の事実であったからだ。


「貴方は魔物、私達を助ける理由がないわ」


「なるほど、そういうことか……」


 ライダーはその場でひざまずき、言った。


「アンタは人だから魔物だからといって、助けない理由があるのか?」


「なッ――!」


 予想もしない返答に驚きを隠せなかった。


「はぁー……なぁ、アンタ。『少年の日記』って知っているか?」


「『少年の日記』?ええ、それは……」


 『少年の日記』。それはこの世界で一番知られている最古のノンフィクション作品である。『文明崩壊スタート・ワールド』までの出来事を一人の少年目線で描かれており、今では歴史的資料としても重宝されている。


 これが《無獣》の口から出たのにも驚きだったが、急になぜその話題を出したのか、ラーミルにはわからなかった。


「二月三日、すれ違った男の人に突然こんなことを言われた。『英雄にすることもまた一つの恩返しである』僕には何を言っているのかさっぱりだった。しかしその意味を知るのはそこまで遠くなかった……」

 

 ライダーは日記の一節を突然言い出した。


「どういう……意味ですか?」


「いや、特に意味はない。ただ、俺が言いたいのは偽りを見極めろっていうことだ」


「偽り……」


「まぁ、後は自分で考えるんだな」


 そう言うとライダーは立ち上がり、踵を返す。


「ちょっとどこへ!?」


「どこって、家だが」


「えっ、いや、その……」


「ああ……安心しろ。アンタの《守護獣》に近くの村に使いを向かわせた。すぐに救援が来る」


「《守護獣》……って、まさかフォジュックを!?」


「ああ、そうだ。じぁあな、お姫様……」


 すると鈍い音とともにライダーの姿が変化し始め、漆黒の大型バイクへと形を変えた。


「その姿は……待って!」


 ライダーはラーミルの言葉に耳を貸さずに闇へと走り去って行った。


 


 






 

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