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英雄にすることもまた一つの恩返しである  作者: 若村鬼海
第二章 それぞれの邂逅
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第三十九話 お願いします、落とさないで!!

 レイヴンはカラスの魔物に掴まれたまま、思考していた。


「少し誤算はありましたが、場を乱すのには十分でしょう」


 そして鳥面のくちばしに左手を当てる。

 同時に左手首につけた腕時計が袖口から現れる。


「……おや、もうこんな時間ですか。彼との約束もありますし、急がなくては」


 そう言うと、カラスの魔物が足を畳み、レイヴンの背中と密着する。

 

 そのまま次のへ移行しようとした、その時だった――


「おっ――」


 カラスの魔物がバランスを崩し、身体が傾く。

 その拍子に足が伸び、レイヴンは先程の状態に戻る。


「これは突然のサプライズですね」


 見上げると、片翼をがっしりと掴むルビアの姿があった。


「……どど、どうも……また会いましたね……」


「ええ、そうですね」


 レイヴンは丁寧な口調で返すが、内心は驚いていた。


 ここは既に軽く数キロは離れており、そう簡単には追いつけないはずの地点。ましてや何も装備もしていないで追いつくのは不可能。

 しかしルビアは丸腰の状態で、翼から落ちないように藻掻もがいているだけであった。


「それで、何かご用でも?」


「はい、それでは……て、手短に……ジェームズさんの件について……教えてぇ〜!く〜れませんか?」


 ルビアは今にも落ちそうになりながらも話を続ける。


「そんなことですか?」


「は〜い……どうか、どうか!お願いしま〜す!!」


「とてもお熱いお願いで・す・が、わたくしにも予定がありますので――」


「え?……うううううう嘘でしょ!?」


 レイヴンは手を合わせる。


「――このまま落ちてくれませんか?」


 翼が強く動き、ルビアは落ちる寸前となる。


「え、いや!待ってください!お願いします、落とさないでぇぇぇぇええ!!何でもしますからぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ルビアは叫んだ。


「おや、それはほんとですか?」


 すると、カラスの魔物は翼を動かすのを止めた。


「やってもうた〜……」


 レイヴンの反応を見て、後悔したルビアは小さく呟いた。


 


 

 

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