第二十二話 火曜サスペンスは突然に
ラーミル達は手足を動かそうと必死になるが、びくともしなかった。
「何をした!?」
「言った筈だ。そのうちわかると……」
声の主は先程から少し噛み合っていない言葉を紡ぐ。
「……まあ、生きてたらだがな」
「――なっ!」
そう告げると同時に四方八方から紫の斬撃が飛んで来る。
しかし斬撃はラーミル達を切り裂く事はなく、地面に直撃する。
地面には次々と大きな罅が入っていき、不安定になっていく。そして――
「これはまずいぞ!!」
ラーミル達の足場が崩れ、川に向かって真っ逆さまに落ちていく。
「「騎士団長!」」
「我が姫!」
「自分の身を一番にしなさい!!」
ラーミル達は何も出来ず、そのまま瓦礫と共に川に着水していった。
「これで俺の仕事は終わりだな……」
声の主は崩れた崖の上から呟いた。
ー◆ー
「う〜む……」
私は廊下を歩きながら後悔していた。
止めておくべきだった。
ティアとウィーラさんの口論なんてすぐ終わると思っていたが、まさかあんなにエスカレートするとは。
それに思わず部屋を飛び出してしまったが、よく考えたらいろいろとアウトではないか!
しか〜し今更戻るにしても気まず過ぎる!!
どうする?
「困ったものだ。うん?あれは……」
私の目に留まったのはカートを押すメイドさんだ。なぜならそのカートには――
「ラ、ラ、ラララララーメンだと!?」
まさかこの世界にラーメンがあるとは!
まぁあ。よ〜く考えてみれば、科学技術だけでなく文化なども進歩しているのも不思議ではない。
これは是非、是非!食べた〜い!!
「どうにかして食べれないものか?……いや待てよ」
おそらく今も二人は口論をしている。
それは止めないといけない。
その為には何か、キッカケが必要だ。
「ならば!私流交流術その一、一緒に食事をするのは最高の交流の場である!!」
前世ではこれでよくラーメン屋で上司や部下と距離を近づけたものだ。
これならラーメンは食べれるし、二人の口論を止められるかもしれない。
よ〜し。そうと決まれば、いざ厨房へ!!
ー◆ー
――フカーヨス邸、厨房。
「すいませ〜ん。ちょっとお願いしたい事が……」
あれ?誰もいない。こういう所には誰かしらいるものではないのか?
私は厨房の中を見渡すが、人っ子一人いない。だが、机の上には作りかけの料理がある。
「トイレか何かかな?う〜む……グヘッ!」
奥へ行こうと進もうとするが何かに躓き、転んでしまった。
「なんだ……はっ!」
何に躓いたのか確認しようと、足元を見た私は驚愕した。
そこには血を流して倒れている料理人がいたからだ。
「ひっ、人!?だ、大丈夫ですか!?」
すかさず料理人に駆け寄るが、その人は息をしていなかった。
「……死んでいる」
そこまで混乱はしなかった。
サスペンスドラマでなら死体は見たことはあるし、人ではないが魔物の死体は数多く見てきたからだろう。
「というよりどうしたものか?このままでは私が犯人扱いされるような気がする……」
豪邸での殺人事件、招かれた訳ありの客人、領主との口論、これはまずい……火曜サスペンスの匂いだ!
「彼には申し訳ないが、自身の身に危険が迫っている!!」
どうする?どうする?いや、ここは悩むよりまず報告だ!
私は彼に手を合わせた後、全力でウィーラさんの元へ向って行った。




