第十二話 戦いの火蓋は切られる
ウィーラは車の中で騎士団員が勇猛果敢に戦っているのを、見ていることしか出来なかった。
「これではルビアさんに顔向けできませんね……」
ウィーラは小さく呟く。
人狼の群れが奇襲を仕掛けてきた時、すぐにこの襲撃の原因が自分であることを察した。
それと同時にルビア達に申し訳ない事をしたと後悔の気持ちでいっぱいになった。
「せめてこの気持ちだけでも」
そう言うと彼女は両手を合わせ、祈ろうとする。
「――ウィーラ様大丈夫ですか!!」
すると車のドアが開き、そこには黒髪赤目の少年ルビアがいた。
「ル、ルビアさん!?どうしてここに?」
聞かずにはいられなかった。あんな事を言ったんだ、助けに来る理由なんてあるはずがない。
「そんなの、貴方が心配だからに決まっているではないですか」
「えっ?」
彼から返ってきたのは思いにもよらない、温かくて優しい言葉だった。
「あっ、ありがとうございます。……ですがここは危険です!早く離れてください!!」
しかしウィーラは今、彼の優しさを無下にする事しか出来なかった。
自分が原因で多くの人が危険に晒されている。それにルビアにはこれ以上の迷惑をかけたくなかった。
「ウィーラ様、ご安心ください。あちらをご覧ください」
だがルビアは彼女の言葉を無視し、そう促す。
ウィーラは言われるがまま、彼の示す方へ顔を向ける。
「あれは……」
そこには人狼を次々と殴り倒していく、所々が黒い赤色のトカゲの魔物がいた。
「私の父です」
「お父上!?大丈夫なんですか?」
「えぇ。家の父は強いですよ……」
ー◆ー
「うぉりゃーーーー!!」
父さんは右ストレートを打ち込む。
「ワォーーーー」
人狼は勢いよく吹っ飛ぶ。そしてボーリングのように他の人狼が巻き込まれる。
「お〜りゃよっと!」
次は左ストレートを打ち込む。
「ワォ――」
今度は吹き飛ばす、人狼の頭がぶっ飛ぶ。
「よし次は――」
「――どうなっているんだ?」
騎士団員はいきなり現れた魔物を見て呆然としていた。
「敵……なのか?」
「いや、おそらく今回の任務で言っていた例の――」
「――アウォォォォーーン」
突然、騎士団員の言葉を遮るかのように重圧感のある遠吠えが響き渡る。
「あれは!!」
「なんだあいつ?」
彼らの視線の先には普通の人狼よりも一回り大きく、より鋭く尖った爪を持つ人狼が立っていた。
「マッドウルフがなぜ?人狼の上位種なんてこの森には生息してないぞ!?」
「――それは俺の《守護獣》だからな!」
するとマッドウルフの後ろから一人の男が現れた。その右腕には不気味な腕輪があった。
「お前は、マダキ盗賊団のマダキ!」
「俺も結構有名なんだな」
「なんだ、なんだ?状況が理解できないんだが」
「簡単な仕事だと思ってたんだが、こんな誤算があるとはな……」
マダキという男はそう言うと父さんを一瞥する。
「……だがこいつには勝てんだろ!!」
その言葉と同時にマッドウルフが父さんに襲いかかる。
父さんはマッドウルフを力ずくで受け止める。
「これは少しは楽しめそうだ。おい、ルビア!」
「はい、ルビアです。何でしょうか?」
ルビアは車から顔を出す。
「俺はこいつと一勝負してくる。お前はそこにいるおっさんをなんとかしろ!!」
「はい!……えっ?ちょ、今なん――」
「――後は任せるぞ!」
そう言い残すと、父さんはマッドウルフを連れて森の奥へ行ってしまった。
「ウッソ〜ん……」




