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一章 二話 始めての旅路

 村を出てから馬車に揺られること数時間、休憩のために川の近くで馬を休ませつつ昼食をとる


「あまり離れなければそのへん見てきていいぞ」


 商人のおっちゃんがそんなことをいいながら食事の準備をしている、その傍で部下らしき若い男が火を起こしながら声をかけてきた。


「ついでに夜用の枝を集めてきてくれない?、松ぼっくりなんかもあると助かる」


 地面におちているままだと結構湿っているものが多く出発までに集めて荷台の隅においておくと夜使う頃には若干マシになっているらしい


「わかった、30分位で戻ってくるよ」


 念の為に腰の剣を確認してから森に入る、戻れないと困るので川が見える距離を保ちつつ枝を探す。


 この辺りには大した魔物はいないが念の為2人の位置をマップで確認しながら枝を探していると木の実も何種類か見つけたのでついでに拾っていく。


「しかしこんなにケツが痛くなるなんて明日までもつかな」


 当然馬車にサスペンションなどついている筈もなく振動がもろにくる、クッション代わりに衣類を尻の下に敷くが長時間耐えられるものではない


「座るとケツが痛いし横になると振動が全身に響くし、よくみんな平気だよな」


 今回乗せてくれたおっちゃんは5日後には目的地に着く予定だが長距離のときは片道20日を超える旅もあるらしい


「空を飛ぶ魔法か空間転移の魔法を手に入れたらそれだけで食いっぱぐれないのも納得だな」


 この世界には様々な魔法があり、中でも希少魔法の使い手は重宝されリスクを冒すことなく良い生活ができると近所のおっさんが言っていた。


 特典の中に能力の強化の類があったらマップ機能の強化を後回しにして使ってしまいそうだ。


「っと、この反応はスライムかな?」


 考え事をしているとマップの隅に魔物らしき反応があった。動く速さ的にスライムのようだが万が一があるとまずいので一応ようすを見に行く


 スライムは捕食の際に対象を溶かして吸収するが人間の大きさだと全身を溶かし切るのに10日はかかる上何かを吸収しようとするとその場から動かなくなるので対処が楽な魔物の代表だ。


「やっぱりスライムか、微々たるものだけど魔石取っとくか」


 魔物の核にあたる魔石はギルドなどで買い取ってくれる、基本的に強い魔物ほど魔石は大きく高くなる


 スライムは魔石の中では最安だがこれからの生活を考えると貰えるものはとりあえず貰っておく


 3匹倒し近くにいないことをマップで確認し、河原に戻ると食事の準備が終わっていた。


「丁度いいところに戻ってきたな、準備出来てるぞ」


 見ると商人のおっちゃんはもう食べていた。


「結構拾ってきたな、火の周りに置いたらお前も食え」


 若い男が食事に手をつけずに余った食材を片付けている。


「食べないの?」


「僕はさっき干し肉とパンを食べたから」


 おっちゃんがせっかくスープを作っていたのに食べないらしい、もしかしてとても不味いのだろうか。


 そんなことを考えていると顔に出ていたのかおっちゃんが苦笑交じりに言ってきた。


「覚えておけ坊主、何人かで旅するときは全員が同じものを食べるのは避けるもんなんだ」


「別々のものを食べるのは効率悪くない?荷物も増えそうだし」


 用意する食材も増えるし正直めんどい、まとめて作った方が楽な気がする。


「万が一食中毒がおきたときに全員で同じものを食べてたら全員が動けなくなる可能性があるだろ、だから最低でも御者出来るやつ同士は別々のものを食べるようにするんだ」


 なるほど、言われてみれば納得である。最悪御者さえ動ければ最寄りの村に駆け込めるが全員で体調不良になったら目も当てられない。


「護衛を雇うような長距離の旅ならともかく近場の行商程度でイチイチ護衛を雇えないから自分達の身は自分で護らないといけないんだよ」


 片付けを終えた若い男がそんなことを言いながら周りを見ている。


ちなみにこの12年の間にいろんな行商人が村に来たがほとんどが村人の平均レベルを超えていた。この2人も戦闘職の適正こそないが共に20レベルを超えている、この辺りに出る魔物なら余程の大群じゃない限り問題がないのだろう。


「坊主がこれからどう生きていくのかはわからんが生きていく上で慎重さは大事だぞ、当たり前だが人間死んだら終わりだからな」


 この世界は元いた世界よりも死亡率が高い、魔物や動物たちに襲われることもあるしなにより病気での死亡率が非常に高い。


 回復魔法はある程度の怪我なら治せるが病気を治せるような回復魔法の使い手は国に数人いれば良い方らしい。


 おそらくこの2人も知り合いを何人も亡くしているのだろう。何かを思い出すような、懐かしむような表情をしている。


「そろそろ出発するか」


 見られていることに気付いたおっちゃんが気恥ずかしくなったのか誤魔化すように出発の準備を始めた。


「今日中にワヌマイの近くまで行きたいですし出発しましょうか」


 若い男の方もおっちゃんに合わせるように荷物をまとめている。


 魔物も人間を警戒しているのか基本的には町や村の近くには自ら寄って来ることは少ない。なので野営するにしても日が暮れる前にできるだけ進むに越したことはない。


 だがトリーナに着くのは明日の午後。丸一日以上あの振動に揺られることを思うと憂鬱になるがこの世界で生活する以上慣れないといけない。


 魔王の居城にたどり着くまではきっと長い旅になるだろう。

 

 この世界の住人は魔王の存在を知ってはいるがその姿を見たことがある人は殆どいない。


 基本的に人間界への侵略をするわけでもなく、確認されている数名の幹部も好き勝手に暴れてるわけでもない。


 だが幹部や魔王を討伐しようとした者はもれなく殺されているらしい、真っ向から戦争するわけではないが、人間と馴れ合う気はないというのが今の魔王のスタンスだ。


(一応ステータス画面のガイドには上級の戦闘職のパーティなら討伐推奨レベルは40。

けど常に1人しか持つことの出来ない勇者の適正を持つ者を仲間にすれば難易度が下がるらしいけど、この世界でたった1人をどうやって探すかが問題だな)


 当然ネットもないこの世界では一般人の情報の伝達方法は手紙が主で、金持ちや貴族、王族が通信用の魔道具を持っているが音声のみで映像などは伝わらない。


 有名人も人相のみが伝わるので人違いやなりすましが横行している。


 勇者の適性があるとステータスが全体的に高いらしいが、噂になるほど強い奴がいても大まかな人相しかわからないのではステータスを見て回るしかなく手間と時間がかかりすぎる。


 そもそも適正が勇者だからといって能力を生かした仕事をしているとは限らない、田舎で農夫でもしていたら探すのは実質不可能だ。


(内政チート出来るような知恵も、科学の力スゲーな展開も無理っぽいし魔王討伐が1番手っ取り早いと思ったんだけどな)


 あのとき男は魔王討伐は全員がクリア出来るポイントが手に入るようなことを言っていた。

 

 他の条件がどの程度のポイントが手に入るかわからない以上はとりあえず魔王討伐を目標にしていくのが1番現実的だろう


(パーティが平均レベル50になったら魔王討伐に向かおう。できれば他の4人が先に討伐してポイントを恵んでくれるのが1番楽なんだけどな)


 そんなことを思っていたら出発の準備が終わった2人がこっちを見ていた。


「もういいのか?」


「完全にダメ人間の目をしてましたね」


 どうやら色々と表情に出ていたらしい


「準備ができたならはやく行こう」


 2人の言葉を聞かなかったことにして馬車に乗り込み出発を待った。

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