一章 一話 異世界に到着?そして現在
こんな予定ではなかった、全てが計画通りにいくなんておもってはいないけどあの空間にいたときに考えていたのはこんな状況を想定していなかった。
こんなのってありか?
あの空間で過ごしたのが随分前のことのように感じる今日此頃他の4人はどう過ごしているのでしょうか、やる気満々で頑張っているのだろうか、絶望して諦めたりしてないだろうか、状況を受け入れられずに現実逃避してないだろうか。
俺?俺は今旅に出ます、誰か探してください。
今思えばあの空間いた男は異世界にいってもらうとはいったが転移とは一言もいってなかった、俺たちが異世界転移や異世界転生物の知識がある前提だったからなのか、確信犯的なものなのかは今となってははっきりさせることはできない。個人的には意図的に隠していたと確信しているが。
「まさか転移じゃなくて転生だったとは」
そう、集団転移の類だと思っていたら転移ではなく転生だったのだ、そしてその後気づいたら赤ん坊になっていた。最初から転生だとわかってたら他の4人と打ち合わせしたりと転移前に確認しておきたいことがあったのだがもう遅い、こうしてラムタという名の村の平凡な家の三男としての生活が始まった。
「とりあえず誰かと合流することを第一目標にしておこう」
赤ん坊からやり直すことになったので見た目をたよりに相手を探すこともできないし、相手もこちらを探せない、マップ機能を頼りに探すしかないがここは魔王が存在する異世界、当然魔物も存在している。
「日本ですら田舎や山奥にいけば野生の獣がいて危険なのにこの世界で子供が一人旅はムリ」
そんな訳でこの世界で余所で働き始める12歳までは家の仕事を手伝いつつ体を鍛えた、まぁ基本肉体労働だから自然に日本にいた頃より贅肉は減っていたが。
ちなみに家を出ていくことに関しては長男以外が余所で仕事をさがすのはよくあることのようでそんなに反対はされなかった。
「しかしこうして村の景色を見ると昔の田舎って感じで異世界感がないな」
基本村は魔物が少ない場所に作られており村から出ない子供は生きている魔物などめったに見ることはない、実際1人で村の中を歩くようになっても、半年に1回見るかどうかといったところだ。
村人は顔こそアジア系の顔が少ないが髪は黒髪もいるし、ファンタジーでは定番のエルフや亜人もこの世界にはいるらしいが村にはいない、村を歩くと種族的にはごくごく普通のおっさんが畑を耕している光景が目に入るだけだ
「おう坊主、村を出ていくんだってな」
おっさんが話かけてくる、そんなに大きな村じゃないので個人情報やプライバシーなど無いも同然だ
「うん、兄さんたちは2人とも家に残るみたいだし、家の畑じゃ働き手が4人いても仕方ないしね」
うちは長男が畑を継ぐのだが次男は体力しか取り柄がないためそれを手伝うことで家に残っている。まだ父さんも元気なので大人が3人もいればうちの畑には十分だ。
「お前ンとこの次男も体格はいいし体力はあるしもう少し賢ければいくらでも仕事がありそうなんだがなぁ」
「まぁとりあえずは食っていけるみたいだしいいんじゃない、奥さん見つけたら畑をもう少し拡げるって言ってたし」
この世界はテンプレ通りあまり農民たちの教育が進んでいない、うちの村も各家の長男にかろうじて簡単な教育が出来る程度だ。
故に畑仕事そのものは次男の方が向いてるが領主に収める量の計算等が出来ず長男がいないといつ誤魔化されるかわからないため互いに協力しあっている。
「どこにいくかはもう決めたのか?」
「とりあえず明日来る行商人のおっちゃんがマシオガ港の近くまでいくらしいから途中まで乗せてもらってトリーナに行こうかと思ってる」
「この辺だとシーバかトリーナにいけばなんとか職にありつけるからな、お前は頭も良いしきっと大丈夫だ」
そう言いながら背中をバシバシ叩いてくるが正直かなり痛い。
一度このおっさんのステータスを見たことがあるがレベル15、適正が武闘家になっていた。戦闘系の職業の適正は今まで見たかぎり全体の2割程度なのでそれなりに希少だ。
もっとも田舎で普通に生活をしていると自分のステータスを見る機会などないのでこのおっさんも自分の適性などわかってはいない。
「痛いよ、馬鹿力なんだから叩くなよ」
村の近くに魔物が出るとほぼ毎回このおっさんが仕留めている。戦闘職のレベル15にもなるとゴブリン程度なら1人で5,6体をほぼ無傷で倒せるようだ。
笑っているおっさんをおいて今日の目的地である村の外れにある今は使われていない物置小屋に向かう。
旅立ちの前に確認しておかないといけないことがいくつかあるのだ。
「やっぱり特典はつかえないか」
小屋についてすぐステータス画面を開く、この世界に来るときにあの男はポイントを使って特典を得ることが出来るといっていたがこの12年色々確認したが特典や条件の確認が出来ない。
ちなみに以前家でステータスを見ていたら家族に心配そうな顔で見られてからは家では見ないようにしている
「ポイントは少しずつ貯まってんだけどな」
特典や条件の確認は出来ないのだが現在のポイントは表示されている。
現在170ポイント、特典を確認することが出来ないのでこれが多いのか少ないのかがわからない
「初期状態で150、そこから12年で20ポイントか」
ポイントは増えているはずなのに条件がわからないままなのだ
「あり得るのは特典に必要なポイントに全く足りないから表示されないとかだけど条件もわからないままだしなぁ、まさか時間経過で貯まってるわけないよな」
いずれにせよ身に覚えがない程度のことで貯まるポイントなどたかが知れてる、20ポイントは大したことないのだろう
「とりあえずマップ機能を拡張すれば他の4人の居場所が分かると思ったんだけどな」
特典の内容にもよるが皆のポイントを1人に集めて良い特典に使いまくれば序盤は楽にポイントが稼げると思っていた。もちろん最低限相手が信用できる場合だが。
「そのためにもまずは他の4人の手がかりを探さないといけないし、当面の目標はこの地域で人が集まるイセンダの町だな」
村の中で話を聞くと村を出ると殆どの人は近くのシーバかトリーナの町に行くらしい、だが村からは少し離れてはいるがイセンダという町がこの辺りでは1番大きい
だがここからだと1人旅で一週間以上かかる上に魔物も出るので子供が簡単にいけるような場所ではない
「とりあえず近くの町でお金を稼ぎながらレベル上げをしつつ特典をどうやったら使えるようになるか検証していかないといつまで経っても戻れない」
特典がどんなものがあるかはわからないがマップ機能の拡張は役に立ちそうだ。
「一応貯めてたお金と貰ったお金を出せば一月ぐらいなら生活出来る筈だからそのあいだに稼ぐ方法を見つけないと」
家の仕事を手伝って貯めた銀貨50枚と両親からの餞別として貰った金貨10枚
この世界では小銅貨、銅貨、銀貨、金貨が主に使われている。日本円だと小銅貨が約10円、銅貨100円、銀貨1000円、金貨10000円だ。金貨の100倍の価値の大金貨もあるらしいが田舎では持ってる人は見たことない。
田舎なら畑もあるし家族で一月に金貨10枚もあれば充分だが最初は宿暮らしになることを考えると心許ない。
「チート系の作品だと速攻で強い魔物倒して最初の町のギルドでギルド長が出てくるまでがテンプレだけど所詮村人レベル3だしな」
子供に倒せる魔物などたかが知れておりあまりレベルは上がらず称号は異邦人となっている。
装備を揃えれて戦えばゴブリンなら2、3体なら倒せるが囲まれると隙をついて逃げるしかない
「この辺の海の近くは魔物が弱いらしいから海の近いトリーナでレベルを上げておかないと先がキツイから頑張らないとな」
とりあえずの方針を確認して出発の準備を終わらせる、そして近所のおばちゃん達からの激励を受けたりしながら過ごし、2日後の朝家族に見送られ12年過ごしたラムタの村を出発した。