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華子襲撃さる

 華子を乗せた車は、襲撃現場から遠ざかって行ったが、バックミラーには、猛追して来る二台のSUVが見えた。


「ライフルを!」


 京吾は窓を開け、SPからライフル銃を受け取ると、追ってくるSUVに狙いを定めて引き金を引いた。


 弾丸は、SUVの前輪のタイヤを見事に打ち抜き、バランスを崩した車は、もう一台をも巻き込んで横転して大破した。


 京吾がホッと息を吐いたその時、彼は車道に映った不審な影に気付いた。


 彼が上空を見上げると、数機のドローンが並走しているのが見えた。その内の一機が高度を下げ、華子の車に突っ込んで来た。


「ハンドルを右に切れ!」


 京吾が叫んで、運転手がハンドルを切った刹那、ドローンは、車を掠めて道路に激突して爆発した。


「あれは、ドローン爆弾だ! あれにやられたら一溜りもない、人の居ない近くの森に逃げ込むんだ!」


 華子の車は、猛スピードでドローンを振り切り、折よく見つけた小さな林の中へと逃げ込んだ。


 暫くして林から出て来た華子の車に、数機のドローンが次々と突っ込んだ。


 凄まじい爆発音と火炎が車を包み、さすがの防爆防弾の高級車も大破炎上してしまったのである。


 轟々と燃え盛る炎を見ながら、華子の血の気の無い顔が強張っていた。


 華子達は、京吾の機転で、車が林に隠れた瞬間に飛び降り、無人となった車を走らせたのだ。


 華子たちは、駆けつけた警察や軍隊に護られて、ホテルへと帰った。 

 


 犯人達は、射殺されたり逮捕されたりしたが、何のために華子を襲ったのかは「知らない奴に金で頼まれた」と話すだけで、依頼者は分からなかった。


 残念ながら、アメリカのSPに数人の死傷者が出ていた。


 ホテルの部屋で、京吾が華子を気遣っていた。


「華子様、いよいよ戦争が始まりましたね。間違いなく日虎の仕業でしょう。念のため、今日は私が傍でお護りします」


「私の為に多くの犠牲者を出してしまって、ご家族になんてお詫びしたら良いのか……」


 華子は、現実に自分の命が狙われた事で恐怖心が芽生えていた。そして、犠牲者の事を思うと、更に心は沈むのだった。


「日虎は、どんな手を使っても私達を潰そうとするでしょう。しかし、味方の屍を越えてでも、この闘いは断じて勝たねばなりません。心を強く持って下さい!」


 華子を励ます戦闘モードの京吾は、いつもの彼では無かった。 



 彼女は、食事もそこそこにベッドに入ったものの、中々寝付かれなかった。何度も寝返りを打っては溜息をつく華子の気配に、ソファーで寝ている京吾が気遣った。


「眠れないんですか?」


「あんな事があって眠れるわけないでしょ。私は普通の人間よ、修羅場をくぐって来たあなたとは違う……」


 いつもの快活な華子は姿を消して、呻くような声だった。


「じゃあ、眠れる御呪いをしてあげます」


 京吾はむっくり起き上がると、華子のベッドの中へ滑り込んだ。


「えっ、……何をしようっていうの?」


 彼女が驚いて拒むのも構わず、京吾は華子を優しく抱きしめた。


「心配いらないよ。僕が必ず護って見せるから、ゆっくりおやすみ」


 華子の鼓動が高鳴るのを感じながら、京吾は彼女の背中を優しく撫で始めた。


 最初、京吾を睨みつけていた華子も、観念したように目を閉じて、彼の逞しい胸に顔を埋めた。

 華子は、その胸の温もりを感じながら、次第に落ち着いてくる自分を感じている内、眠りについていた。



 朝起きると、ベッドに京吾の姿は無く、令子がソファーに座って心配そうに見ていた。


「華子様、眠れました?」


「令子さん、京吾は?」


「途中で交代して、今、仮眠させています」


「そう。彼は眠ってなかったのね……」


 二人が話していると、京吾が眠そうな顔で部屋に入って来た。


「大丈夫ですか? 大分気持ちも落ち着いたようですね」


「昨日は御免なさい。お陰でよく眠れました」


 人心地を取り戻した華子は、昨夜のことが恥ずかしくて、彼の目をまともに見れなかった。 


「もうすぐ、朝食をお持ちしますから着替えて下さい」


 彼はそう言って姿を消した。


 華子が着替えて、化粧をしていると、外が騒がしくなったと思うと、すぐに静かになった。


 暫くして、京吾が朝食を乗せたワゴンを押して入って来た。


「何かあったの?」


 心配顔の華子が聞いた。


「いえ、不審者がうろついていたので、警官に取り押さえられたようです。問題ありません」


 京吾は、何事も無かったように答えたが、華子の食事を運んで来たのはボーイに変装した殺し屋だったのだ。


 拳銃を隠し持っているのを目敏く見つけた京吾が、殺し屋を一撃で倒したのは数分前の事だった。


 食事を済ました一行は、政府関係者に丁重に礼を言って帰国の途に就いた。




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