ハーレム宣言
10/31 2話目
八分季ほどうんうん悩み通した結果、結論が出せないことが分かった。俺を愛してくれる人を、『選ばない』という選択ができない。かなり最低なことをしようとしている。
けど、後は先延ばしにする、くらいしか思いつかなかった。
キキョウ、ローズ、アザリー、イベリスをリビングに呼んだ。何故か、フランネル、アマリリス、母も一緒についてきた。
「困る」
「お気になさらず。影に控えておりますので」
「しずかにしてます」
「お母さんがいちゃダメ?」
「ダメかな」
倫理的にも情緒的にもダメ…。
「…」
母は唖然としていた。
「母さん。ごめん、でも、俺だけの話じゃないから」
「分かったわ…」
母の悲しそうな顔は、罪悪感をかき立てる。そっと部屋から出ていく母を呼び止めたい気持ちを堪えた。
「フランネル、マリ。お前たちもだよ」
「仕方ありませんね」
「かしこまりました。ご主人さま」
やっと、当事者だけになった。
「それで、話って何かしら」
ローズが切り出す。けど、何の話か気付いているみたいだ。隠そうとしているけど、みんな緊張している。
「俺が誰の気持ちに応えるか、の話」
空気が張り詰める。みんなの息遣いしか聞こえなくなった。胸が苦しくなるけど、無理矢理深呼吸をして息を調える。
「ごめん、誰か一人を選ぶことは、俺には出来ない」
「なに?」
「ほ?」
「リークさん…ぶははっ」
「我が同胞よ…それは余りに…」
いや、申し訳ない。それとアザリー。情けない俺を笑うのはいい…けど、忘れないからな。
「キキョウ」
「なんだ!?」
「俺を鍛え、導き、甘えさせてくれた人。身近になり過ぎて、これから別々に生きていくことを考えられない。一緒に生きていきたい」
「う、うむ。良いぞ!」
「ありがとう…」
キキョウには、きっと一生敵わない。
俺は、ローズに向き直った。
「ローズ」
「…なあに?」
「母さんと離れた俺を…救ってくれた人。ローズがいなければ、俺はとっくに寂しさでおかしくなっていたと思う。ローズに寂しい想いはさせないから、結婚しよう」
「分かったわ」
「いいの?」
「ふふっ、ズルいわね。リーク無しの人生なんて考えられないもの」
「ありがとう」
俺も、ローズがいなくなったら、寂しくて堪らない。
まだ笑っているアザリーを見た。滑稽でもやり通すぞ。
「アザリー」
「くっくっ…あ、私の番ですね」
「…俺と結婚したい?」
「はい」
「じゃあ、しよう」
「いいですよ…家でゴロゴロしながらお酒飲んでるだけでいいですか?」
「ダメ」
「けちー」
アザリーには一生振り回され続ける気がする。
嬉しいような、怒っているような。イベリスは口の端や眉尻をピクピク動かしていた。
「イベリス」
「聞こう」
「ともに魔導の深淵を目指そう」
「あっ、ズルい! そんなこと言われたら断れない!」
「…」
「ゴホンッ。断る…と言いたいところだが。お主以上の、覇道を歩む相手もおるまい。ちゃんと、妻としても愛するのだぞ?」
「もちろん」
「ならばよい」
魔導の可能性を追求したい気持ちと、イベリスと離れ難い気持ちは、もう分けられなくなっている。イベリスもそうなんだろう。出会った時のことを思い出せてよかった…。
バタァーン。
ドアが弾け飛ぶような勢いで開いた。
「リィちゃん、ホントに結婚するの!?」
母が泣きそうな顔をしていた。
「う、ん」
「ヤダアアァァァー」
飛び込んできた母を受け止める。母は俺に縋りつくと、ワンワン泣き始めてしまった。
「リナリア様も結婚なさればよろしいのでは?」
「何を言って…」
俺の斜め後ろで控えていたフランネルが、当たり前のように妄言を吐いた。
「…出来なくはないわね」
「は?」
「前例が無くはないもの。王家しかそんなことやらないけど」
母がピタリと泣き止んだ。
「結婚する。リィちゃん、お母さんと結婚して?」
「うん」
「リーク…」
キキョウが呆れていた。しまった、条件反射で頷いていた。
「どちらにせよ、母さんと離れて暮らすつもりはなかったよ」
「うんうん。リィちゃん、お母さんのこと大好きだもんね」
「うん」
それは間違いない。
「あ、ちなみにボクは妻にはなりませんよ。旦那様と執事の禁じられた恋の方が、面白そうですから」
「黙れ変態執事」
いや合ってるのか?
「マリは?」
「マリはもうちょっと大きくなってからじゃないと、結婚できないかな」
「かしこまりましたー」
結婚するって意味じゃないよ?
俺は抱き着いたまま頭をグリグリ押し付けてきた母をあやす。
「リィちゃん」
「うん」
「えへへ」
「…そういえば」
アザリーがポツリと呟いた。
「正妻は、誰にするんですか?」
「うぇ?」
せい…さい…?
「私じゃないかしら。一番リークの心の支えになっているもの」
「いや、我だ。やはり妻とは、夫を正し導く者であるべきだ」
「私よね。やっぱりお母さんが一番」
「そうだね」
「「リーク!?」」
キキョウとローズの叫びがユニゾンした。でも…母だし…。




