閑話 勇者学校
「勇者学校を開設したわ」
「なんだって?」
自室で武器の手入れをしていると、ローズが入って早々良く分からないことを言い出した。
「だから、新しい学校を作ったの」
「そう…?」
ヴェスタリア領には、グランデ王国初の学校がある。学校といっても、将来有望な若者に読み書きや経済について教える程度。全人教育にはまだ遠い。公共学習塾、と言うべきか。
一応、俺の言ったことが雛形になったものだ。
「なんで勇者」
「リークは勇者でしょ?」
顔見知りに勇者と呼ばれるのは恥ずかしい。お世話になっていた宿の看板娘、リナリーちゃんに『勇者さん』と呼ばれたときは、思わず逃げそうになってしまった。
それはそれとして。
「俺が勇者だと…なんで学校ができるの」
「名前を借りたってところもあるけど。あなたのレベルで文武両道な人って珍しいのよ。生きた伝説である勇者。リークのような人物を育てるための学校といえば、人気も説得力もある。パワー家は、『勇者を育てたノウハウ』があると思われているから」
確かに育てられたし、教育も受けた。名前を貸すくらい構わないけど。
「誰が来るの? というか、誰か来るの?」
「大人気よ。各地の領主家はもちろん、商人、武門の名家、文官の家系、の子息とか。末弟の王子も来たわね」
「えぇ…」
「建物も良かったのかしら。パワー家の屋敷を宿舎と学舎にしたから」
今お屋敷に行くと、羨望の眼差しを集められるわけだ。…絶対に行きたくない。
「あれ。バードックさんはどうしているの?」
「お父様はパワー社の名誉相談役になってもらったわ。景観の綺麗なところで、のんびりとした生活を送っているの」
四十歳くらいで娘に楽隠居を促される父親か…。
「ヴェスタリア領を今の何倍にも栄えさせてみせるから、見守っていてくださいってお願いしたら、お父様、泣いて喜んでくれたの」
悲喜こもごもだろうなあ。
勇者学校の名誉会長に、という話は断った。…バードックさんと並んで、一日釣りをして過ごすイメージが浮かんだから。




