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王様との縁故

 『冬の王』とは、何者か?


 今まで放置されていたこの問題は、ローズの援助のお陰で解決の道筋が見えた。古いお伽噺の一節に、『氷雪を纏う悪魔』という記述がある。そのお伽噺の原典に当たる書物が、王家の所有する書庫に保管されているらしい。


 ローズは、ミニム=ヘルトにその仲介役を頼むつもりだった。




 王宮の廊下は、広く、天井が高かった。大理石、なのか。ツルツルした石で作られている。

 そこを、俺とローズ、それからミニムで歩いている。今日は王様との会談を行う予定で、ミニムは付き添いだ。


「ミニムって偉かったんだな」


「まあね。僕は、王家に2番目に近い家系だから」


 話してみると、ノリの軽いフランクな奴であった。


「僕の方も意外だったよ。鬼人の剣士、異端の魔導士を従える最強の冒険者が、まさか色恋で悩まされているような普通の男だったなんて」


「止めてくれ」


「そうね、悩むなんて。私はリークの決意を鈍らせないように、ちゃんと待っているのに」


「おっと、すまない」


 このフラットさ、見習いたい。




 両開きの扉の前で、ミニムが立ち止まる。


「あまり身構えなくていいよ。公の場ではないからね」


 扉の前で控えていたメイドが俺達が来たことを室内へ告げ、案内される。


 部屋は、向かい合うソファーとテーブルがあるだけのシンプルな部屋だった。中にいたのは、白いヒゲを蓄えた、優しい顔つきの初老の男性。


「ようこそ、ローズ殿。それから、リーク殿」


「ええ、こんにちは」


「本日はお招きいただき…え?」


 ローズの気軽な挨拶にびっくりした。


「リーク。別にこのおじいさんは偉くないわよ」


「え。この人が王様じゃないの」


「そうよ?」


 どういうことだ??


「はい。王家の生活は、領地からの納金で成り立っておりますから」


 王様の返事も物凄く腰が低いものだった。


「加えて、今は納金総額の半分以上がヴェスタリア領から。ヴェスタリア領が王国からの独立を宣言したら、困るのは王家だもの」


「うん、実は僕がこうしてプラプラ出来るのも、ローズさんのお陰なんだ」


「ミニム、何をしているんだ。早くお茶を」


「大叔父さん。もうメイドに頼んであるよ」


 王、とは。いや、これから頼み事をする相手というのは変わりがない。


「えっと…ご存じの通り、リークといいます」


「おお、止めてください。ローズ殿の婚約者にへりくだって話されると、尻の座りが悪い」


「あら、婚約者って。まだ、違うわよ」


「おっと、失礼しました」


「うふふ」


「はっはっは」


 株式会社グランデ王国 筆頭株主ローズ=パワー…ということか?


「さあさあ、いつまでもお立ちでないで、どうぞお座りください」


 促されて、王様の対面に腰掛ける。左隣にローズ。ミニムは、王様の斜め後ろに立ったままだ。


「今日は…」


「聞いています。『冬の王』に関わりがあると思われる歴史書について、でございましょう。当家の使用人に集めさせております」


「…なるほど」


「研究はこちらで指揮を執るわ。人は貸してくれるのかしら?」


「もちろんですとも」


 話が勝手に進んでいく。横で寝てても怒られなさそうだ。…やらないけど。




 話が大筋でまとまった後、ローズが席を外した。


「時に…。ローズ殿と、他の女性との間で取り合いになっているという噂、本当ですかな?」


「はい?」


 情けないことに、本当だけども。


「いいや、踏み込んだことを聞いてしまって申し訳ありません。ただ先達として、少しばかり力になれることがあると思いまして」


 そういえば、この人王様だった。ハーレムとかあるのかな?


「やっぱり、奥さんが何人もいる?」


「ええ、いい暮らしが出来る相手と結婚したがる人は多いですから…」


 そのいい暮らし、はローズを始めとする領主達の納金で成り立っている、と。何だか悲しい話になってきた。


「力になれる、というのは」


「はい。一番お伝えしたいのは…『女性の恨みは怖ろしい』ということです」


 何故か、背筋がゾっとした。語り口は余りに淡々としていて、目は遠くを見ている。これは…事実を伝えているんだ。


「財産と気持ちのどちらに重きを置いている場合でも。振られた、捨てられた、と思い込んだ女性は、プライドや将来の幸せに傷をつけられた、と考えるようで。復讐は全身全霊を賭けたものになります」


「…経験が?」


「はい。二度ほど」


 死線をくぐった。王様の目は、言外にそれを告げていた。


「まあ、私もつい、いい顔をしてしまうものですから。期待させて、それを裏切るのは良くないことですね」


 王様は、冗談めかして言った。けど、これは他人事ではないのでは?


 ローズ、キキョウ、アザリー、イベリスに、俺は不器用ながら『いい顔』をしていた、かも知れない。


「立場や、生活がそれを許されるのなら…女性を振るより、他の妻に頭を下げて怒られる方がマシ、でしたね」


「なるほど…」


 ローズに頭が上がらないわけだ。この人は、色々な意味で、生命線を握られている。


「助言、ありがとうございます」


「いえ、いえ。リーク殿は、別の道を歩まれるかもしれませんし。参考までに、ということで」


「はい」


 王様との会談は、思わぬところで実のあるものになった…。

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