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史上最年少のゴールド

 ドラゴンの首を持ち帰るために、王都からドラゴンの死体の場所まで往復した。王都の冒険者ギルドへ討伐の報告をして、台車と人足を引きつれて死体の場所へ。最後に、ドラゴンの首を台車へ載せて王都へ戻る。


 事前に噂が出回っていたらしく、王都の門からギルドまでの道に見物人が集まっていた。ドラゴンが居座り始めてから数年越しの討伐だからか、歓声が上がり、ちょっとした凱旋気分だった。


 王都の冒険者ギルドへと辿り着いた後は、応接室へ通された。王都の冒険者も、俺達を一目見ようとギルドの外で待ち構えていたけど、コダストの冒険者のようなガラの悪い連中は見当たらなかった。称賛と、少しのやっかみ。

 リーダーです、という顔をしながら歩いているけど、実際にはイベリスが1人で倒したわけで。恥ずかしくてたまらない。訳を一人一人説明しながら歩いて回りたいくらいだ。


 応接室では、八分陽ほど、大体1時間ちょっとくらい待たされた。全員、誇ればいいのか、驕ればいいのか、イベリスを誉めそやせばいいのか分からない、という気持ちだったと思う。何かを話すこともなく、居心地の悪さを感じながら待ち続けた。


 コダストの街とは違い、応接室の内装も洒落ている。カーテンの端の飾りを見るともなしに見ていると、足音がして、ドアが開いた。


「待たせてしまったわね」


 ローズだった。言葉とは逆に、得意げな顔だ。


 そのまま、俺の対面のソファーへ座る。今度は3人掛けで、俺の左にはアザリー、右にはイベリス。キキョウは、傍で立っていた。


「おめでとう、『クラッシャー』。信じていたわ」


「うん、ありがとう」


「ドラゴンの死体を検分した学者が驚いていたわ。暴れた様子がないって。私の見込み以上ね」


「あ…それは」


「リーク」


 事情を説明しようとした。けど、イベリスが俺の服を掴んで止める。


「でも…」


「これは『クラッシャー』の成果であり、リーダーは我が同胞だ。援助を受けるなら、話をややこしくしない方が良いだろう。…それに、我輩目立ちたくない」


 ドラゴンスレイヤーの一人となるんだから、それは無理じゃないかな。


「イベリスさんの言う通りですよ。リークさんが一人で倒したことになるわけじゃないんですから、別にいいじゃないですか」


 アザリーが左から、ちょいちょいと服を引っ張る。


「分かった」


 内緒話を終わりにして、ローズへ向き直る。


「まとまったかしら?」


「うん」


「なら…。『クラッシャー』には、依頼達成による報奨金が支払われ、メンバー全員がゴールドへ昇格するわ」


 最初に冒険者になったときは、他人事のように聞いていたゴールド。昇格も自分の力ではないような気がして、今でも全く他人事の気分だ。


「新しいゴールドの冒険者はおよそ二十年振り…実は、あなたのお母様以来なのよ」


「えぇっ!」


 ローズはニンマリと笑う。ローズ、知ってたな。まったく驚かされた。

 

「それに、リーク。あなたは史上最年少のゴールド。推薦したギルドマスターとしても鼻が高いわ」


「そうなんだ」


「ふふっ。お母様大好きって。分かり易いわね」


「うっ」


 からかわれているようで、座りが悪い。


「ごめんなさい。ちょっと気が緩んでいたわ。…ゴールドのプレートは後日ね。特注品だから、無くしちゃだめよ」


「分かった」


 これで、終わりかな。


「それで…ここからはパトロンとしての話。リーク、冒険者としての活動は、もうしなくていいわよ」


「どういうこと?」


「もうお金を稼がなくていいっていう意味。生活も、『冬の王』討伐に必要な資金も、私が全部用意してあげる。あなたは、討伐の準備と、ちょっとこちらの都合に付き合ってもらうだけでいいわ」


「えっと、都合って?」


「ギルドの体面というものがあってね。どこかの領主や、もしかしたら王族へ顔見せくらいはするかもしれないわ。面倒なら、やらなくてもいいのだけど」


 それだけでいいなら願ってもない。自力でやらなきゃいけないなら、あと何十年かかるか分からなかったところだけど。


「ローズ。ただの領主の跡取りが、そんな金をどこから出せる」


 キキョウが疑問をぶつけるけど、俺もそれは気になる。まさか、税金とか言わないよな?


「ただの領主の跡取り? そうね、5年前まではそうだったかしら」


「なんだと」


「リーク、あなたのお陰よ。私はヴェスタリア領の、民営化に成功したの」


「…は?」


「案外、知られていないものね」


 いや…この国は未だに王制のはずだ。民営化って何だ。


「リークのアイディアよ? 治安の維持や争いの調停、街道の整備、土地の貸与を商会の事業として行うことにしたの。私は今、そこの名誉会長をしているわ」


 待って、待ってくれ。そんなこと、前世でもなかった。なかったか…?


「あまり変わってないところもあるけど…文官、武官を民から雇えるのは大きかったわ。適正の賃金と教育で、驚くほど優秀な人材が手に入る。自分たちの土地のことだから、みんな必死になって考えるし、儲けようとする。税を取っていたころより、領全体が遥かに豊かになったわね」


「へ、へぇ…」


 話のスケールが大きすぎて、ついていけない。


「そういうわけだから、私、お金持ちなの。これからは、リークのやりたいことは、全部私に協力させてね?」


 ローズは、花が咲くような笑顔。なんだけど、飲み込まれるような錯覚。いいのか。でも、これならギリギリ個人として動けるし、今抱えている問題は大体解決する…多分。


 …俺、史上最年少のゴールド冒険者になって、ヒモになるの?

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