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俺の俺TUEEEはヒロイン達が無理やり成立させている件について  作者: カルタ
少年時代・新人冒険者編
35/60

続・武芸百般の幼馴染

 キキョウは、コダストの街で注目を浴びた。同業者に限らず、チラチラとキキョウを見ては、『鬼人』とささやく。気持ちの良いものではなかった。けど、当のキキョウは涼しい顔をしていたので、俺も気にしないことにした。


 もう日が暮れてからしばらく経っているので、買取所で買取を待っている冒険者はあと一組だった。レッカさんは、値付けに不満がある同業者を軽くあしらって追い払った後、俺達に気が付いた。キキョウを見てギョッとした顔になり、ジェスチャーで俺達を呼び寄せる。


「依頼は達成しました。首はこの中です」


 カウンターに袋を置く。三つの塊がゴロリと揺れて気持ち悪い。


「ああ、ええ…」


 レッカさんは、明らかにキキョウに気を取られていた。


「あ、彼女はキキョウ。森の近くで出会いました。俺の古い知り合いです」


「鬼人の知り合い、ですか…」


 レッカさんは俺とキキョウの間で視線をさ迷わせていたけど、一度ギュッと瞬きをした後、普段の淡々とした態度に戻った。


「まずは、依頼達成ご苦労様です。検分がありますので、報酬はすぐにお支払いできませんが、次の八分季の始めまでには払えるでしょう」


 レッカさんは、一度口を閉じて、アザリーをジロリと睨む。


「それで? まさかこの人まで推薦するとは言いませんね?」


「い、いいえ」


「一応、あなたも太陽神官見習いでしたね…。分かりました。ではリークさん、これを」


 レッカさんは、俺に鈍く輝く銅のプレートを手渡した。


「カッパーの認識票です。無くしても再発行はしません。また、その認識票を誰かが犯罪行為に使った場合、責任が問われることもあります。盗まれないでください」


「はい」


 これで、名実共にカッパーの冒険者となるわけだ。プレートには穴が開いている。紐を通して、服の下に隠して首からぶら下げるのが良さそうだ。


「ふむ」


 俺の顔が緩むのを見たキキョウが、何かに納得していた。




 別れ際、悩ましい顔をしたアザリーが、俺に尋ねた。


「あの…キキョウさん、明後日から冒険者として一緒に活動するんですよね?」


「そうだけど」

 

 俺が盗賊退治で精神的に疲れてしまったので、明日はお休み。キキョウの冒険者デビューは明後日となる。


「私、必要ですか?」


 水色の、鉱石のような瞳が俺の目を覗く。


 質問の意味が分からなかったので、少し考える。今までコンビでやってきたところに、相方の知人が入る。しかも、その相方はメチャクチャ強い。今までは、魔物の相手に慣れない相方をフォローする、という役割があったけど、次からはどうだろうか。ただの居候にならないか。

 そんな風な心配をしているのか?


「いてもらわないと困る」


 前に出て戦える神官は貴重だ、多分。


「…そうですか」


 アザリーは小首を傾げた後、ニヤリと笑った。


「まあ、頼れる大人として、2人を導かないといけませんからね」


「…お酒はほどほどにね」


「分かってますよぅ」


 呑んだくれ神官は手をヒラヒラと振って、神殿へ帰った。




 翌朝。


 朝食前に鍛錬をしようと宿から出ると、しゃがんで宿の壁にもたれていた。


「む、リークか」


「…ひょっとして寝てたの?」


 キキョウの目は、寝起きとは思えないほど鋭い。ほんの少し、眉間にしわが寄っている。


「うむ」


「なんで、こんなところで」


 昨晩、キキョウをリナリーちゃんに紹介して、宿の部屋を用意してもらった。まだ空きがあったらしく、喜ばれたんだけど。


「うむ。夜這いを仕掛けてきた、阿呆がいてな」


 なんと。十二、三の子ども相手に。いや…この国では十五歳が成人の目安だし、ちょっと若過ぎ、くらいの感覚なんだろうか? 待て待て。夜這いだって?


「大丈夫だったの?」


 キキョウが、何かされるところを想像できないけど。万が一ってことが…。


「ふふ。我をどうこうできる奴は、この街ではお前だけだ」


 無理です。


「それでな。不埒者を叩きのめしたのだが、その時に部屋を壊してしまってな。泊まる部屋が無くなったのだ」


「部屋を壊した?」


「うむ。不埒者を成敗してやる、と気合が入り過ぎてな」


 何と言えばいいのか。


「代わりの部屋が無いからと、宿の家族の部屋に招かれもしたが、流石に忍びない」


 キキョウは美人だ。治安が悪く、むさくるしい客の多い宿に泊めることについて、もっとよく考えるべきだった。


「ごめん」


「リークが謝ることではない。鬼人といえど、女一人旅なのだ。危険は覚悟の上だ」


「そうだ。俺の部屋に泊まれば」


「ふむ。一緒に寝てくれるか?」


「うえ゛?」


 変な声が出た。落ち着け、子ども同士だ。


「冗談だ。心配しなくてよい。空き家もあちこちにあるし、寝床には困らん。そんなことより」


 キキョウは真剣をしまうと、同じ形の木剣を取り出した。軽く振るうだけで、空気が変わる。


「師匠、よろしくお願いします」


「うむ」


 今日も元気にボコボコにされました。

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