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俺の俺TUEEEはヒロイン達が無理やり成立させている件について  作者: カルタ
少年時代・新人冒険者編
29/60

薬草採取クエスト 二

10/4 二回目の投稿です。

 コダストの街から北には平原が広がっている。そこは木や草花が飛び飛びに群生しているばかりで、お屋敷の近くの原っぱと比べると寂しい光景だ。


 2人して、道具屋で買った籠を背負ってボケッとしている。エギナ草、どこ?


 財布の中身は銀貨7枚、半銀貨1枚、銅貨6枚。何故かアザリーの分の籠まで買うことになったわけだが、元が取れるかすら分からなくなってきた。


「アザリー、どこ探せばいい?」


「それは難問ですね。探しながら考えましょう」


 つまりノープラン。歩き回ればどこかにはあるかも知れないけど、籠をいっぱいにするのは難しそう。


「街の近くはみんな取りに来ますから。奥へ行きましょう、奥へ」


 吹雪に覆われた森を目印に、平原を奥へと進む。たまに、振り返って街の位置を確認することも忘れない。




 正午になるまで進み続けたが、エギナ草は一掴み程度しか見つからなかった。森に近づくにつれて草木が増えてきて、もう少し奥に進めばどこかに群生していそうだ。でもこれ以上進むと、日が出てる内に街へ帰れなくなる。


「アザリー、そろそろ諦めて帰ろう」


「何言ってるんですか。まだ銅貨1枚にもなりませんよっ」


「でも、もう結構街から離れてる。危険だし、帰りのことも考えないと」


「ぐぬぬ…また飯抜きか…」


 不穏な声がセリフが聞こえた。


 ほんの僅かな、違和感。激しい、しかし押し殺したような息遣い。不自然に傾いた、目の前の茂み。


「アザリー、俺の後ろへ」


「いいじゃないですか。もうちょっとだけ、ねえ、もうちょっと行って無かったら諦めますって」


「そうじゃなくて」


 バッと飛び出したナニカ。ナニカはアザリーへ鉈のようなものを振りかぶり…なんとか割って入れた俺が木剣で叩いて軌道を逸らす。


 しわくちゃな顔、緑の肌、汚れた鋭い爪。ゴブリンだ。


 心臓がバクバクいってる。5年ぶり、しかも、今度は本物の魔物。体が反応したのは、日頃の鍛錬の成果だ。


 ゴブリンが俺に鉈を振り返してきたのを、引いて躱す。…なんで木剣のまま来ちゃったんだろう?


 緊張を無理やり抑えて、木剣を正眼に構える。大丈夫、恐れず、良く見て。ガランより全然遅いし、師匠とは比べるべくもなく術理が無い。避けろ、不意を打て!


 ゴシャ、と命が終わった音がして、ゴブリンは倒れた。後頭部が陥没して、血がダラダラ流れてる。


「流石、リークさんです!」


「いやあ?」


 どう見ても、倒したのはアザリーだ。俺とゴブリンが睨み合ってる間、音もなく忍び寄っての一撃。


「リークさんの殺気に圧倒されて、ゴブリンも身動きが取れなかったんですね!」


 そう言えなくも…ないのか?


「…まあいっか。ゴブリンなら、エギナ草2籠分。今日はもう帰ろう」


「はい!」


 死体を丸々持って帰るわけにもいかず、ゴブリンの首を、都合よく持ってきてくれた鉈で落とす。切れ味が悪く、何度も打ち付ける必要があった。断面はぐちゃぐちゃで見た目が酷くグロテスクだ。


「ぎんか~いっちま~い~♪」


 アザリーは上機嫌だけど、俺は大分参っていた。血みどろの生首を籠に入れるわけにもいかず、手掴みで持って帰る。血がほとんど流れ切ったのは幸いだった。ボタボタ血を垂らしながら帰りたくない…。



 コダストの街まで戻って来た。ゴブリンの首を鷲掴みにしたまま買取所に行くと、周囲がざわついていた。

 …神経が参っていて気が回らなかったけど、街中でゴブリンの生首をむき出しのまま持ち歩くのは大分アウトだ。今さらどうしようもないので、諦めて買取所に行く。


 買取所の前には、同業者と思われる人たちがウロウロしていたけど、俺達が近づくと道を開けた。


 買取所のカウンターには、町工場でつけるようなエプロンと、ブカブカの手袋を身に着けた、レッカさんがいた。


「どうも…」


 レッカさんは唖然として俺を見ていた。俺が首を傾げると、ハッとしたように口を開く。


「ゴブリン、一匹の討伐ですか?」


「はい」


 ゴブリンの生首をカウンターに乗せる。レッカさんは、嫌そうに生首を持ち上げ、状態を確認する。明らかに形ばかりの検分を終わらせると、生首をカウンターの奥の大きな籠に放り投げた。


「次からは、死後1日以内であれば、ゴブリンの討伐証明は両耳で結構です」


 レッカさんは、手袋を外して俺に銀貨を1枚渡す。


「その木剣の他に…何か武器は持って行ったのですか?」


「いえ…」


 何故か、買取所の周りにいた同業者がざわめいた。


「聞いたか、木剣で頭を叩き割ったんだってさ」

「しかも、あの首…素手で引き千切ったんじゃないか?」

「あれだけぐちゃぐちゃなら…」

「ただの子どもにしか見えねえのに」

「ヤベェ新入りが来たもんだ…」


「私は驚いて何もできませんでしたが、リークさんの殺気でゴブリンは身動きすら出来ませんでした」


 アザリーは、レッカさんに向かって、外野に聞こえるように大きな声でハキハキと説明した。

 部分的には間違っていないが、大事な事実が省略されている。 


「倒したのはアザリー…」


「いやあ、ゴブリンが飛び出して来た時はもうダメかと思いましたが、リークさんの活躍のおかげで、傷一つありません!」


「「「おおぉ!」」」


 沸き立つ外野。


 もういいや、面倒くさい…。宿に帰って汚れ落として寝たい…。

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