閑話、□□執事
9/27 二話目の投稿です。
温季の中頃ともなると、鍛錬後はべったりと汗をかいている。いつも着替えと濡れタオルを用意してもらっているけど、この時季はことさら有難く感じる。
「お預かりします」
「ありがとう」
フランネルに、汗まみれの服とタオルを預ける。いつもなら、このまま俺は昼食を取るために食堂へ向かい、フランネルは洗濯物を持って洗い場に行く。だけど、今日はローズが屋敷にいなくて、一人の昼食だ。
街の有力者と立食パーティーがあるらしく、バードックさんと一緒に出かけている。
この屋敷に来てから、大抵どちらかが隣にいたので、1人になるのがなんとなく寂しい。たまにはフランネルも食事に誘ってみようか。断られたらその時はその時だ。
フランネルを追いかけて洗い場の方へ来てみたけど、彼女はいなかった。よく考えたら、わざわざ家政婦を雇っているのにフランネルが手洗いをする必要がない。完全に見失ってしまったし、今日は諦めるか…。
食堂へ引き返す途中。用具入れのような目立たない小部屋から、必死で息を吸い込むような音が聞こえた。喘息の発作か?
俺は、部屋に飛び込んだ。
「だ…大丈夫?」
大声を出しかけて、驚かすのも良くないと声を落とす。部屋には、使われていないベッドの上で寝っ転がってる人がいた。フランネルだ。
彼女の手には、渡したばかりの洗濯物。俺の汗が染みこんだものだ。俺が部屋に入ると同時、フランネルは顔を上げた。ということは、それまで服に顔をうずめていた…?
「これはリーク様」
奇遇ですね、とでも言いたそうな顔だ。俺は引いた。
「フランネル」
「待ってください、これには訳があるのです」
「うん」
「汗というのは、健康状態を映す鏡のようなもの。リーク様のお体に何か異常がないか、日々こうして確認していたのですよ」
「日々…毎日?」
「はい」
「今日はどうだった?」
「爽やかで、まだ幼さのコクが残る味わい深い香りでした」
「そう」
「…」
「…」
「実はボク、リーク様のような少年の匂いが大好物なのです」
「へんたい!」
ゴン!
両手に俺のシャツを握りしめていたフランネルは、ノーガードで木剣を頭に食らった。俺は恥ずかしくて顔が真っ赤だ。
「あっ」
いつかのゴブリンと同じくらいのをキメてしまった。再びフランネルの顔がシャツに沈む。
慌てて起こすと、フランネルは意識がないままニヘラ、と笑っていた。
「変態だ…」
その日から、俺は身に着けたものを決してフランネルに渡さなかった。逆にフランネルは、開き直ったのか、立ち位置が前より近くなった。それ以外は、以前と何も変わらない。年下の少年のシャツの匂いを嗅いで興奮していたことなど、おくびにも出さない。
変態執事、恐るべし…。
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