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女神さま(?)の祝福

「世界は救われました!」


 …はい?


 キラキラした気持ちのまま死んだと思ったら、綺麗でちょっと電波なお姉さんが現れました。


 いや、死んでないのか?


 トラックの前面が砕けて飛び散った金属片が宙を舞い、落ちてこない。時間が止まっているかのような。

 体が動かない。視界も固定されている。音も、お姉さんが喋って以降聞こえない。


 いや、お姉さんといったが本当にこれはお姉さんなのか?


 俺とトラックの間に現れた。俺とトラックの間は50cmしかなかった。なら、お姉さんは俺の目の前にいるはずだ。なのに、お姉さんは1mくらい離れているように見える。しかしトラックに意識を向けると、やっぱり50cmくらいしかない。


 それだけじゃない。お姉さんの顔が分からない。なんとなく、美人である気がする。だが、注視できない。輪郭を捉えることができない。


「よろしいですか?」


 何か応えようとして…返事ができなかった。いや、俺は呼吸すらしていない。


「声に出す必要はありません」

「私はあなたの魂と対話しているのです」


 どういうこと?


「あなたは死にました。いいえ、死にます」

「零に限りなく近い時間の後、あなたは死にます」

「私は、あなたの魂を導くために来ました」


 魂を、導く?


「はい」

「あなたは今世にて、人類史上類のない功績を打ち立てました」

「その栄誉を称えるため、神々はあなたに幸多き運命を授けます」


 全く心当たりがない。しかも、俺はすぐ死ぬんじゃなかったっか?


「それは当然です」

「はい」

「あなたの打ち立てた功績は、人類の破滅の回避」

「あなたの死は避けようのないもの」

「カオスの視点では回避が不可能とされていた運命を、ミクロのたった一つの出来事によって回避できたのです」

「あなたが幸多き運命を授かるのは、来世においてです」


 待ってくれ、一つ一つ考えさせてくれ。人類の破滅っていうのは。


「第三次世界大戦です」

「あなたが押しとどめたトラックは、本来ならあなたを引き殺した後、あなたの後ろにあった自動車と衝突します」

「自動車に乗っていたある人物が死ぬことが、第三次世界大戦のきっかけとなるのです」

「死ななかった場合、その人物は人類の完全なる世界平和の礎となります」

「それは意味のない仮定でした」

「しかし、あなたの働きによってその仮定は実現し、人類の破滅となる最後の分岐を回避するのです」


 …なら、称賛されるべきは”その人物”って人じゃないのか?


「もちろんその人物は、死後、神々から相応しい祝福を授かるでしょう」

「しかし、それはあなたの授かるべき祝福が減ることを意味しません」


 まあ分かった。いや全く何かを理解したわけじゃないが、”そういうこと”っていうのは分かった。


 で、来世っていうのは。


「あなたは転生します」

「別の世界、別の時間軸で、もう一度命をまっとうします」

「あなたの魂のまま」


 記憶や人格が残ったまま?


「そうです」


 いいのかそれ?


「あなたたちの主観では、完全に魂をまっさらにした場合、同一の個人であるという認識はなされません」

「それは、神々の祝福が別の人間に授けられている事になってしまいます」


 それは分かったけど。


 …俺がその転生先の世界に、何か悪い運命をもたらすことはないのか?


「その可能性は、限りなく零に近い。リスクとしては無視できるものです」


 そうか…そんなもんか。あと二つだけ。一個ずつ聞いていくよ。


 俺が断った場合は?


「あなたが断らないことを、神々は知っています」


 なるほど…。


 じゃあ最後。幸の多い運命っていうのは、どういうものなんだ?


「富/名誉/愛、が満たされるもの、であると神々は考えています」

「しかし、あなたたちの主観ではそれを否定することもあります」

「ゆえに、あなたに問います。あなたが、次の生涯において望むものは何か」


 うん。昔はたくさんの人が周りにいたのに、今は独りになってしまった。俺がないがしろにしてきた縁もあったけど、どうしようもなく別れてしまった縁もある。


 俺が大切にすれば、俺に寄り添い続けてくれる人。そんな人と巡り合える人生がいいな。


「理解しました」

「あなたの次の生涯は、あなたを求め続ける人と巡り合う運命となります」


 うん? 何かニュアンスが違うような気が。


「それでは、あなたは死にます。あなたの主観において、転生後も含めて、あなたが神々と遭うことは二度とありません」


 分かった。色々ありがとう。


「神々は、人類の背負った呪いを終わらせたあなたを称賛します。幸あれ」


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