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人見知りのお嬢様と後ろをついてくる執事 三

9/22 二回目の投稿です。

 目が覚めてから3日経って、ようやく部屋の外を歩けるようになった。昨日は客室の中を歩いたり、座りながらフランネルさんに詳しい事情を聞いたりしていた。


 フランネルの話によると、母と俺がこの屋敷にたどり着いたとき、俺は凍えて意識が混濁していたらしい。その後急いで医者が呼ばれ、治療を受けた。母は俺に付き添っていたが、王宮からの御触れで旅立った。


 記憶にうっすらと残っている、母の悲痛な叫び。俺がまだ子どもで、体力が無くて弱いからあんな思いをさせてしまったんだ。早く大人になって、強くならなくては…。


 バードックさんへ改めて挨拶に行ったところ、屋敷の中では自由にしてくれていいと許可を貰った。体の調子を戻すために散策しているけど、広い建物だ。コの字型の三階建てで、中庭を囲うように廊下が通っている。前世の学校のような造りだ。


 たまにお手伝いさんのような格好のおばさんとすれ違う。屋敷の大きさに比べて、余りに人がいないような気がする…。




「彼女らは、屋敷の維持のためにパワー家が雇っている家政婦ですね。領内の未亡人など、生活に困っている人間が大半です」


 俺の三歩後ろから付いてきているフランネルが教えてくれた。バードックさんが、俺が不自由なく過ごせるように、しばらくフランネルを俺に付けてくれるらしい。


「先々代までは、本職のメイドを多数雇って、貴族然とした生活を送っていたと聞きますが、先代、当代は名より実を取る方々ですので」


 疑問を口に出さなくても、先回りで答えてくれる。こんな優秀な人材を、俺一人に費やしてしまっていいのだろうか?

 いや、これはバードックさんの厚意なのだから、変な遠慮をする方が失礼かも知れない。


 客室は、屋敷のコの字の下の先の方にある。屋敷の廊下を一周し、逆側に来てしまった。そこから先は、他より大きな扉で遮られている。


「ここから先は、パワー家一族のプライベートな空間となります」


 なるほど。じゃあ引き返さないと。


 振り返ると、女の子が調度品の陰から俺を見ていた。この間の子だ。キラキラと輝く金の髪がよく目立つ。今回もばっちり目が合った。


「お嬢様。こちらはお父様の大事なお客様です。ご挨拶を」


 逃げ出そうと腰を浮かしていた女の子は、深い青の目を悔しそうに眇めた。背筋をピンと伸ばすと、ビシッとフランネルを指さす。


「フランネル、あなた誰の味方なのよ!」


「勿論お嬢様です。『ご挨拶を』と申し上げたのも、お嬢様の大事なお父様に恥をかかせない為」


 女の子は口をへの字に曲げながら指を引っ込めた。ぐぬぬ、という声が聞こえてきそうだ。


「俺はリーク。しばらくこの屋敷で世話になる」


「っ…。ローズ=パワーよ。言っておくけど、”パパ”は私の”パパ”なんだからね!」


「…? うん」


「くぅ~~!」


 大体同じくらいの歳だろうか。これくらいの女の子が唸っても、可愛いだけだ。でもそう思われても、本人は嬉しくないだろう。


「俺は母さんの子どもだから、バードックさんを取ったりしない」


「な、生意気!」


 ローズはプンスカ怒って、俺達の横を通り過ぎて『パワー家一族のプライベートな空間』へ入った。


「どうでしたか?」


「…なにが?」


「お嬢様、可愛らしいお人でしたでしょう?」


「確かに」


 ここに何かの同盟が組まれた、ような気がする。


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