6.森で少女と出会う。
さて、改めて外の様子をみるとしよう。
さっきは一段ずつはしごを下りたが、この浮く力を
調整すれば飛び降りても大丈夫なんじゃないだろうか。
足元が少し浮くようにイメージしたら、10cmくらい
浮き上がっている。だったら、はしごより少し高い位置を想像
して体を浮かせてみたらどうなるかな。
目を閉じて自分の体の位置をイメージする。
足場がなくても落ちずに、空中に浮かんでいる姿を頭に描く。
ポワッと周りの光が輝いて、
ふわりっとした浮遊感とともに、体が少し浮き上がる。
そのままはしごがない場所まで歩いてみると・・・・。
なにもない空中に体が浮かんでいる。
目下には地面が見える。
3mくらいの高さに浮かんだ状態だ。
ここからゆっくりと体を下ろすイメージを描く。
シューと体が下降していく。
そのままだと裸足が地面についてしまうので、
少しだけ浮かぶ感覚を残しておく。
うん、これは便利だ。
空を飛ぶというより、自分の位置を調整しているという感じだろうか。
それから、色々と試してみた。
勢いをつけてトランポリンみたいに飛び上がったり、
後ろからの空間から押し出されるようにして、前方向にギュンッと
移動してみたり。
高さの限界を試そうと思って、出来るだけ高度をあげてみたり。
100mくらいまであがったところで、怖くなってやめた。
急にあがったら高層エレベータで上がった時みたいに耳がキーンとなった。
そんなこんなで、森の中を町に向かって、進んでいると・・・
ザザッ、ズザザーッ
「・・・っひっく・・・ぅぅ・・・」
滑り落ちるような音と、かすかな泣き声が聞こえる。
声のする方に向かってみると、声の主が目に入った。
少し灰色がかった髪の毛。肩の少し上まであるボブカット。
透き通るような赤みがかった瞳。年は10才くらいだろうか。
道の横が崖になっていて、2mくらいしたの地面に泣いている子供がいる。
崖を登ろうとしたのか、手足は土まみれになっている。
えっと、女の子・・・だよな。
足を滑らせて下に落ちてしまったのだろうか。
「大丈夫?お嬢ちゃん・・・?」
怯えさせないように、出来るだけ優しい声で呼びかける。
するとその子は、こちらをみて、きょとんとした表情を浮かべた。
ん?俺、変なことを言っただろうか。呼びかけただけだよな。
泣き止んでくれたのはいいのだけれど、怪しまれてないかな。
できるだけ、優しく優しく声をかける。
「えっと、落ちてしまったのかな。僕がいまから引き上げるから
ちょっとまってね。もう大丈夫だから。」
するとその子は、
「え、え?あ、あぶないから来ちゃダメ。崖になっているから
こっちに来たら上がれないよ。」
と、助けに行こうとする俺を静止する。
「大丈夫、大丈夫だから」と、俺はふわりと崖から降りる。
「え?あれ?え・・・」
音もなく降り立った俺を、その子は不思議そうな目で見つめている。
このくらいの年の子なら、抱えて飛び上がればいいかな。
そう思いお姫様抱っこをしようと、ひざ下と肩に手を回して、持ち上げ
ようとした・・・・のだが、一向に持ち上がらない。
中腰で腕をぷるぷるさせながら、その子を持ち上げようとしている。
あ・・・夢の中では少女になっているんだった。
その子は、そんな俺をみて、ぷっと吹き出した。
「助けようとしてくれたの?ありがとう。でもあなたじゃ、私を
持ち上げるのは難しいよ。」
あー、うん。すっかり自分の体のことを忘れていました。
「私はレミ。森の近くの町にすんでいるのよ。
あなたはお父さんやお母さんとはぐれてしまったの?」
少女が優しい声で話しかけてくる。
どうやら俺を森で親とはぐれてしまった子供だと思っているようだ。
そういえば俺の見た目は8才くらい。
この子からすると、自分より小さな女の子に見えているんだろう。




