36.ボーイミーツガール、だが私は男だ。
シチュエーション的に、この男の子は王子様だろう。
玉座の影に隠れて、チラチラとこちらをみている。
なんともシャイボーイだ。
ここは大人としてこちらからフレンドリーに接してあげるとしよう。
まぁ、いまは少女ですけどね。
てってってと、玉座のそばまで歩み寄り、
男の子に声をかける。
「はじめまして、私はマコト。よろしくね。」
お姉さんらしく爽やかな笑顔を振りまく。
「あ、あの、はじめまして。ぼ、僕はヨシュアです!」
顔を赤らめながら、どぎまぎと返事をするヨシュア。
わかるよ、親の紹介でいきなり知らない女の子と
ご対面させられたら焦るよね。
さて、王様はどんな意図で私と引き合わせた。
ちらっと表情を覗き見ると、ニコニコとこちらを眺めている。
「ご覧の通り、ヨシュアは少し恥ずかしがり屋でね。
立場もあって、同年齢の友人がなかなかいないんだ。
マコトならそんなことを気兼ねせず話せる相手になって
くれるんじゃないかと思ってね。」
なるほど。私はお友達づくりのために呼ばれたわけか。
なかなかの過保護っぷりのような気もするが、まぁいいだろう。
子供は嫌いではないし、この世界で暮らしていくのなら同年齢の
友人がいて困ることもない。
「わかりました、気兼ねなく・・・ですね。」
では、とヨシュアの方に向き直り話しかける。
恥ずかしがっているのか、俯き加減でなかなか目を合わせてくれない。
「ヨシュア、私のことは同性の男の子とでも思って接してください。
女の子だと思うから恥ずかしいのでしょう。大丈夫、女性への
気遣いなど一切不要です。」
元は男だ。少年の頃の気持ちだって忘れたわけじゃない。
男同士だと思う方が、あちらも気楽にやれるだろう。
ふふんっ、と真っ平らな胸を反り返らせながらドヤ顔で語りかける。
あいかわらず顔を紅潮させてはいるが、やっとこっちをみてくれたヨシュア。
その顔に浮かぶのは戸惑い。
「え・・・え??。あの、マコトさんは女の子ですよね。
どうみても女の子なので、男の子だとは思えませんが。」
「うん、その口調もよくないね。同性の男の子相手なんだから、
そんなに丁寧に話す必要はない。私のことはマコト、と呼び捨てにしてね。
それから敬語もいらない。」
「え、はい。いや、うん。言葉遣いはわかったけど、
マコトはやっぱり女の子だよ。」
「別に私を男にしろというわけではないから、余計な気遣いはせずに
気楽に接してくれればいいよ。せっかく知り合ったんだし、
気楽な友達になりたいな。」
さっと右手を差し出す。
すこし間を置いてから、ヨシュアは両手でぎゅっと握り返してくれた。
「うん、うん。それはもちろん。僕も、マコトが友達になってくれたら嬉しい。」
相変わらず顔は赤いが、やっと目を合わせてくれたので、大丈夫だろう。
「で、王様。ヨシュアとお友達になるわけですが、これからは連絡なしで、
ふらっと遊びに来てもいいのでしょうか。」
「ふらっと来れる距離でもないと思うが・・・まぁ聞いた話が本当なら来れるのか。」
「ええ、何を聞いているのか知りませんが、空を飛んで来れる話なら本当ですよ。」
「わかった。警備の者には君が来たら通すように伝えておこう。」
「はーい。ありがとうございます。では、顔合わせも済んだことですし、
今日はこれにておいとましますね。」
「まぁ、そう急くこともないだろう。せっかく来たのだから、色々みていくといい。
私もマキタと話すことがあるしな。」
「では、では、僕が案内します!」
ずいっと、ヨシュアが前に出てきた。
さっきまであんなに恥ずかしがっていたのにね。
「じゃあ、よろしくね。」と微笑むと、
またもや、さっと顔をそらされた。
女の子と接するのが恥ずかしくなってくるお年頃かね。




