32.ごろごろしている間に時は過ぎ去る。
マキタから受け取った大量の金貨を眺めて、にんまりとする日々。
黄金は、かように人の心を虜にするものよ。
近場の果実をもぎって食べ、散歩がてら採集の依頼をこなし、
ときおりレミと遊ぶ。
もう、これが理想のスローライフなんじゃないだろうか。
ギルドに顔を出せば、マキタからの呼び出しがあることもしばしば。
森で私の家を探したが、見つけられなかったらしい。
そういえば住み始めて数ヶ月経つけれど、人どころか動物すら
迷い込んで来たこともない。
住処がバレると、平穏が脅かされそうなので、適当に濁しておく。
それでも、依頼は受ける。
魔法を駆使して、荷物運びやら復旧作業やらを手伝う。
その度に報酬をもらえるので、お金は増えるばかり。
・・・
・・・
・・・
そんなこんなで、あっという間に二年ほどの時が過ぎた。
空いた時間は森の散歩や、魔法の練習に費やした。
月日が経つうちに、魔力がどんどん増えているように感じて、
どこまでできるか試すのが楽しくなってきたのだ。
空気抵抗もなんのその、空を飛ぶ速度は時速にすると二、三百キロ
は出ているだろうか。町からマキタの屋敷まで二、三分で飛んでいける。
もっと速度はでるけれど、視界がついて行かないので抑えている。
空間の固定や圧縮もなんのその。もはやイノシシなど私の敵ではない。
常時魔法を発動して体の周りを薄い膜で覆うことで、
とっさの危険にも対応できるようにした。
数百メートルにおよぶ範囲を一気に囲うこともできるようになった。
家一軒を丸ごと持ち上げることも、楽々できる。
それだけやっても魔力の消費は微々たるものだし、
裏手の果実を食べればすぐに回復した。
むしろ増えたようにすら感じる。
これ、このまま鍛え続ければ陸地ごと、空中に浮かばせたり
できるんじゃないだろうか。空中浮遊大陸、カッコいい。
妄想もしつつ、日々できることが増えていくのが楽しくて、
使い道のないレベルまで魔法を鍛え上げていた。
そんな悠々自適ライフを送る私の元に、王都からお呼びがかかった。
領主のマキタ経由での話だ。
ギルドでの言付けを聞いた私は、
とりあえずマキタの屋敷に話を聞きに行った。
その日はひどい大雨で、ゴロゴロと雷が鳴り響いていた。
そんな中、高いところを飛んでいるとどうなるか。
案の定、ドガシャーンと轟音とともに稲光りが私に向かって
降り注いだ。
真空にした空気の層で覆われた私に、雷は届かない。
せっかくなので、落ちてきた雷を包んで圧縮してみた。
電気の性質は知らないが、圧縮した空間で、眩く輝いていたので
閉じ込めることはできたのだろう。
どっかで使い道があるかもしれないと、バッグにポイッと放り込む。
この二年間、こんな感じで変わったものは圧縮して放り込んできたので、
私のバッグは四次元ポケットみたいなことになっている。
二年前の巨石から始まり、大量の水、武器、木材、肉、雷など、
バリュエーションは非常に豊かだ。
マキタの屋敷に到着したので、空気の皮を脱ぐようにして
水を払い落とす。雨でも濡れずに移動ができるのはとても便利だ。
すでに顔パスとなった私は、我が物顔で屋敷に入り、
マキタの部屋へと向かった。




