23.一狩りいくのだ。
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目の前にはイノシシがいる。
いつものように森で素材を集めていたら、出くわしたのだ。
この世界で生きていくなら、果物ばかりでは物足りない。
栄養は十分に満たされるけれど、やはり肉も食べたい
初回は撃退するだけで精一杯だったが、今の私は違う。
あれから魔法の使い方にも慣れた。
今こそ、リベンジの時だ。
イノシシはこちらの様子を伺っている。
動き始める前に勝負を決める。
まず、足の空間を固定する。
四肢が止められたイノシシは体をよじって動こうとするが、
手足はビクともしない。
さて、ここからどうやって仕留めるか。
都会育ちのもやしっ子だった私は、自分で仕留めた経験などない。
動きを押さえたまま包丁で突き刺す……というのは抵抗がある。
悩んだ結果、イノシシの首のあたりの空間を締め付ける。
脳に空気が行かなければ、意識を失うはずだ。
イノシシはしばらく、ビクビクと暴れた後、横たわって動かなくなった。
さて、どうしよう。毛に覆われているし、自分で捌けるのだろうか。
食べるために倒したのだ、このまま放置というわけにはいかない。
むむむ………
「あ、そうだ。」
ギルドの依頼、イノシシの駆除・撃退があったことを思い出す。
イノシシは畑に出没して、作物を食い荒らすため、依頼が出されていた。
イノシシを圧縮してバッグにしまい、ギルドへ向かう。
ギルドの扉を開けるとリックが笑顔で迎えてくれた。
「やあ、マコト。今日は素材の納品かな。」
「うん。それもあるんだけど、確かイノシシ駆除の依頼があったよね。
ああいう依頼は受注せずに、達成した場合でも報告できる?」
「基本的には、依頼を受けてから行ってもらうんだけど、
あの依頼はまだ誰も受注していないんだ。その場合は、その場で受注、達成
という形を取ることもできるよ。
だけど、イノシシは危険な動物だから一人でやるのはやめたほうがいい。」
「心配ありがとう。ただ、もう倒してもってきちゃったんだけど……」
そういって、カウンターの前にイノシシを、ドサッと展開する。
奥のテーブルにいた冒険者が、目を丸くしてこちらを眺めている。
リックはしばらく絶句していた。
それから口を開き、
「わかった。とりあえずもう一度バッグにしまってもらえるかな。
裏手に素材の解体、保管場所があるからそこで引き取ろう。」
ギルドの裏手に回ると、そこは庭のようになっていた。
解体するための作業台や、保管用の倉庫が備え付けられている。
イノシシを引きわたし、手続きを行った。
「あの、リック。できればお肉を食べたいので、すこしお肉をもらう
ことってできるかな。」
リックは苦笑し、
「まさか、食べるために狩ってきたのか。
いいよ、夕方には解体できているだろうから、あとでおいで。」
こうしたイノシシは肉は食料に、毛皮は素材として、牙は装飾品や
武器・防具などに、活用されるそうだ。
依頼の報奨金とは別に、素材の買取代も支払われる。
これだけ大型のイノシシは珍しいらしく、合計で小金貨一枚になった。
おおよそ十万円。
すごい、これで当面ちょっとした買い物には困らない。
せっかく大金が手に入ったんだ。レミを誘って買い物に行こう!
そう持ってルンルンと、ギルドから出て行った私は気がつかなかった。
ギルドにいた人たちの愕然とした視線に……。
「あの子は、一体……」
「急にイノシシがでてきたぞ。」
「小さい子一人でイノシシは狩れないだろう」
「この前、町を飛び去る不思議な少女がいたらしいぞ。
もしかしたらあの子じゃないか……」
ギルド内では、ざわざわと会話が展開されていた。
リックは頭を押さえ、ため息をついて
「だから、あの魔法は人前で使うなと行ったのに……」
と呟いていた。




