22.新たな生活。
この姿になってから、半月ほどが経った。
家の裏手の果物のおかげで、食料には事欠かない。
今では魔法の扱いも手馴れたもので、家の中にいても
魔法で果物をもげるようになった。
窓の外に見える果物を、魔法でもぎって家の中に運んでくる。
はじめは四角い空間で囲って切り取っていたのだが、
いまでは空間を手のように操って、もぎることができる。
日に日に精度が上がっているように感じる。
日中は、森を散策したり、時々町に行ってレミとあったり、
気が向けばギルドで依頼をこなしたりして過ごしている。
好きなときに働ける、家でゴロゴロしていても責められない、
衣食住に困らない。会いたい相手がいる。
できることが増えていく。
なんと素敵な生活だろう。
もう、元の姿に、世界に戻らなくてもいいような気がしてきた。
いままでの生活に未練はない。
あの世界は、自分には生きづらかった。
働こうとすれば、多くの他人と比べられ、評価される。
認められなければ、仕事につくことすらできなかった。
ただ、生きているだけで、お金はかかる。
無職の自分に、世間の目が冷たいように感じていた。
それが、この世界ではどうだろう。
家はある。
食べ物もすぐに手に入る。
町で話す人たちは気の良い人ばかり。
もしかしたら意地悪な人もいるのかもしれないが、
無理に関わる必要もない。
不思議な力が使える。
空気は美味しいし、家も快適。
仕事をしたければいつでも働ける。
自分はここにいていいんだと思える。
俺は、いや、この姿なのだから「私」か。
私は、この世界で人生を終えたいとすら思う。
気ままに、のんびりと心安らかに生きていくんだ。




