18.冒険者ギルド。
いつもより少し長めです。3000文字くらい。
ギルドは町の中心部にあった。
二階建ての建物で、周りの家に比べて三倍くらいの大きさがある。
マーサが観音開きの扉の片方を押しこむと、
木製の扉はギィッと軋んだ音を立てて開いた。
そのまま続いて中に入る。
入って左手には受付カウンター、右手にはいくつかのテーブルが
並んでいる。奥には大きな掲示板があり、依頼票らしき紙が
いくつも貼り出されている。
テーブルにはちらほらと人が座っている。
仲間と談笑している人、書類を前に頭を抱えている人、
それぞれが自分たちのペースで時間を過ごしている。
「さて、マコト、登録はこっちよ。」
マーサが受付に俺を案内してくれた。
「こんにちは、リック。今日はこの子の登録を行いたいのだけれど……」
マーサが声をかけると、受付の男性がこちらに目を向ける。
「こんにちは、マーサ。ええと、お子さんは確かレミちゃん一人だったと
思うけれど、そちらのお嬢さんは?」
「レミの友人よ。こないだ森でレミを助けてくれたの。
この年とは思えないくらいしっかりとしている子よ。
私が保証人になるわ。」
実際は成人していますからね……。
これで年相応と言われると、俺の精神年齢は小学生低学年
ということになる。
「はじめまして、リックさん。マコトと申します。
不慣れで手続きなど、知らないことばかりですが、
どうかよろしくお願いします。」
就職活動の経験もあるし、一通りの敬語は使えるつもりだが、
年齢から考えると敬語を使いすぎても変だろう。
かといって砕けすぎると丁寧さを失う。
このくらいなら自然だろうか、と思って挨拶をすると
リックさんは少し目を見開いてこちらを見つめたあと、
笑顔で話しかけてくれた。
「確かに。しっかり、というか年に似合わないほどの丁寧さだね。
そこまでかしこまらなくてもいいよ。
改めまして、僕はリック。このギルドで受付の担当をしています。」
彼はそういって笑いかけてくれた。
リックの見た目は二十歳そこそこだろうか。
一重まぶたの線が細いその目は、笑顔を作る前から
微笑んでいるようにも見える。
「ありがとうございます。町にはあまりきたことがないので、
おかしなところがあれば指摘してもらると嬉しいです。」
「了解。わからないことがあったら、マコトも遠慮なく聞いてね。
さて、これが登録用紙だけど、字はかけるかな?」
用紙に目をやると、見たことのない文字が並んでいる。
見たことない……はずなんだが、見ていると意味がわかる。
じっと文字を見つけていると、ゲシュタルト崩壊するというが、
その逆だろうか。見ていると理解できる。
というか、普通に書ける。
異世界あるある、の力だろうか。
ひとまず読み書きができるのは助かる。
「大丈夫です。ここに名前を書けばいいんですね。」
所定の箇所に記入し、あとは保証人のマーサに書いてもらう。
記入を終えた用紙を渡すと、リックが印鑑を押して書類を
ファイルのようなものに綴じた。
「よし、これで登録の書類手続きは完了だよ。
じゃあ、ギルドの仕組みについて説明するね。」
リックの説明によると、ギルドの依頼には区分とランクがあるそうだ。
区分は、A区分とB区分。
A区分には、魔物の討伐や、遺跡の調査、人の護衛など、危険が発生するもの、
失敗によって依頼人に影響が大きいものが含まれる。
ちなみに、動物と魔物の区別ははっきりしているわけではなく、
危険度が高い動物や、人に危害を加える動物を総称して魔物と呼ぶそうだ。
B区分には、探し物、素材の採取、ちょっとした作業依頼などの作業が
含まれる。
それぞれ難易度は,原則、aからfに分けられている。
区分に応じて、A-aや、B-fという風に表記される。
達成した件数や難易度、達成・失敗の状況によって、
受注できるランクが異なるらしい。
B-fが最も簡単で、登録したばかりでも受注できるとのことだ。
受注制限は、冒険者ランクによって管理される。
ランクはAからFが割り振られる。
D以上になるには、昇級試験があるそうだ。
一通りの説明を終えた後、リックが奥の部屋に案内してくれた。
書類確認のあと、本人の魔力を認証して、冒険者の証を発行するそうだ。
「マコト、登録したら冒険者の証として、メダルが発行されるんだよ。
メダルには名前とランクが刻み込まれるんだ。」
そういって、リックは胸元からメダルがついたペンダントを取り出した。
メダルの中央に小さな石が嵌め込まれていて、黄色の光を放っている。
「ランクEから順に赤、黄、緑、青、菫の色が割り当てられているんだ。
一番高いランクAが菫色になる。一応枠組みとしてはランクSの虹色
というものあるんだが、現在は割り当てられていないはずだよ」
「あれ、ランクFは?」
確かランクFが始まりだと説明してくれたはず。
「ランクFの石は光を放っていないんだ。光だすのはEになってからだね。」
魔力の波形は人によって異なり、誰一人として同じものはないそうだ。
それを認証することで、冒険者の証は唯一無二のものとなり、
偽造を防いでいるらしい。
一度認証された波形は、冒険者ギルド間で共有され、
どのギルドでも同様にメダルから各情報を調べることができるそうだ。
「悪いことをして捕まったら、すぐに知れ渡りますね……」
ボソッと思ったことを口にする。
これは恐ろしいほどの正確なシステムだ。
冒険の成果だけでなく、家族構成だろうと、犯罪歴だろうと
偽造できず正確に伝わる仕組みになっている。
その情報は消すことはできない。
たとえ、姿を変えようと、名前を変えようと、
場所を変えようと、メダルを調べれば過去が全てわかるのだから。
「そうだね、だからこそ冒険者は信頼を得ているんだよ。
悪事を叩いたらメダルは剥奪され、再発行するに足ると認められない限り、
冒険者には戻れないからね」と、メダルを準備しながらリックが言う。
「……心得ます。」
「はははっ、そんなに構えなくても大丈夫だよ。
依頼を失敗したからといってメダルは剥奪されないからね。
さぁ、ここに手をかざして……」
透明な石が置かれた台座に向かい、手をかざす。
石は一瞬、色とりどりに輝いたあと、再び透明に戻った。
「これで完了だよ。さぁ、これがマコトのメダルだ。」
リックはそういって、メダルのついたペンダントを渡してくれた。
メダル表面には名前と、透明な石が見える。
「無くさないようにね。といってもマコトの魔力が込められた
魔石がはまっているから、身から離れると感覚でわかると思う。
そして、メダルは本人の魔力が注がれている時しか、輝かない。」
なるほど、他の人もメダルを奪い取って身分を偽ることはできない
ようになっているようだ。
「これで手続きは完了だけど、どうする。早速依頼を見ていくかい?」
「はい。先立つものがないので、まずはお金を稼ぎたいんです。」
「わかったよ。けど、無理はしないようにね。気になる依頼があったら
受付に声をかけてね。」
リックはそういって受付の席に戻っていった。
マーサは昼食の準備をするため、帰りに家に寄るようにと言い残し
自宅へ帰っていった。よった際に、お下がりの服を用意しておいて
くれるそうだ。ありがたい。
俺は、掲示板の前に立って、Fランクでも受けられる依頼がないか、
端から順番に見ていくことにした。




