10.ご飯だ、ご飯。
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「一人で暮らしているので、両親への連絡は大丈夫です。」
できるかぎり朗らかに、悲しいそぶりは見せずに、そう言った。
そう言ったのだが・・・・
「こんなに小さいのに、一人で暮らしているなんて。
無理をしてそんなに明るい顔を作らなくていいの!」
と、涙を浮かべたレミのお母さんが、ぎゅっと抱きしめてくる。
精一杯の朗らかな笑み・・・は逆効果だったようだ。
うーん、アラサー人妻の柔らかな体が心地いい。
見た目は少女になっても、やはり心は男のままだ。
ニヤつきそうな表情筋を抑えつつ、努めて冷静に話を続ける。
「レミのお母さん、ありがとう。私は大丈夫です。
暮らしには慣れていますし、今日はこうやってレミと知り合えたし。」
「ええ、そうね、そうね。レミとこれからも仲良くしてね。
ここを自分のうちだと思って、いつでも遊びに来ていいのよ。
私のことはマーサと呼んでちょうだい。」
そう言いながらマーサは、俺の頭をぐりぐりと撫で回している。
「はい、マーサ。これからもよろしくお願いします。」
「そんなに丁寧にしなくていいのよ、もっと気楽にしてちょうだいな。
さぁ、もうすぐお父さんも帰ってくるでしょうし、夕食にしましょう。」
そういって、マーサは夕食を用意してくれた。
木の器に盛り付けられた、ホワイトシチューのような料理。
大きく切られた野菜や肉がごろごろと入っている。
そして、一口サイズに切り分けられたパン。
「さぁさぁ、どうぞ召し上がれ。」
「いただきます!」
森から歩いてきたこともあって、お腹は十分に減っている。
夢での食事というと、あまり味を感じた記憶はないのだが、
目の前の食事は、夢とは思えないくらい、香りや温かさを感じる。
スプーンでシチューを掬って口に運ぶ。
シチューの熱が口から、胃の中まで温めてくれる。
ほのかな甘みと、塩味がきいた味。
素朴だけど、飽きのこない家庭の料理だ。
コツコツと、木のスプーンと器のあたる音が小気味好い。
そういえば、色々と木製品が多い。
森が近いからだろうか。
お腹も膨れ、そんなことを思っていると、キィッと
ドアの開く音がした。
「レミッ!!!」
若い男性の声が、家の中でよく反響した。
うん、お母さんと同じ反応。
夫婦は似るものなんだね。




