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第9話 人類最強、晩餐会に参加する

 晩餐会とは、夕食の時間に正餐を供する宴である。正式の場合は、人に敬意を表し、あるいは祝賀その他の目的で催され、宴会の内で一番鄭重で厳格なもので儀礼は重視される。by Wikip○dia


 でも儀礼なんて、ぶっちゃけどうでも良いです。もう、ご令嬢達が可愛過ぎます。ドレス最高っす。


 俺は酒の入ったグラス片手に、会場内をゆっくりと歩く。


「まぁ! 勇者様、初めまして。私、シバリワ伯爵家のシシリーナと申します」


 たまたま近くにいて目が合った貴族令嬢が、パッと表情を明るくして話しかけてきた。ふむ、本物の貴族令嬢が行うカーテシーは大変気品高くでちょっと魅入っちゃうよね。

 シシリーナと名乗った貴族令嬢は、キラキラと表情を輝かせながら俺に話しかけてくる。内容は魔物の大群を討伐した事に、どれほど感謝しているだとか。魔王に勝つことが如何に凄いことか。などなど、俺を褒めちぎる内容だ。


 もっと俺を褒めてシシリーナさん。褒めちぎって! 俺は褒められて伸びるタイプです!


 彼女の俺に取り入ろうとしている下心は、完全に分かりきっている事だが、それでも褒められると言うのは気分が良い。

 ある程度シシリーナから話を聞くと、俺はさりげなく断ってまた会場内を歩き出す。するとすぐに、他の御令嬢さんが話しかけてきた。内容は、またしても俺を賞賛するものばかり。ニヤニヤが止まりませんよ。


 勇者サイコー! さっきから俺モテモテ!


 晩餐会が始まってから、ずっとこんな感じである。ちょっと移動しては美女に話しかけられ褒められる。その会話が終わったら、また次の美女が話しかけてくる。そして褒められる。


 ここ本当に晩餐会の会場? キャバクラとかじゃないよね? 輝く表情で俺に話しかけてくるこの美女達は、可憐に舞う夜の蝶とかじゃないよね? 終わり頃に黒服を着た厳つい兄ちゃんにお金請求されたら俺泣いちゃうよ?


 あまりの幸せ空間に、俺が若干の疑心暗鬼に陥っていると、不意に後ろからまた別の女性に声をかけられた。


「ケイ様、やっとお話しできますわ」


 その声に俺は振り返って、目を見開く。


 ついに真打登場ですか!


 俺が振り返った先には、ドレスで着飾ったアリス。そしてその隣にはメリーがいた。

 アリスのドレスは鮮やかな青色で、彼女の瞳の色と合わさってとても綺麗だ。腰のくびれの所がキュッと締まっていて、そこから下のスカート部分がフワッと広がっている。そして何よりも魅力的なのが、大胆に開かれた胸元と、そこから溢れ出しそうになっている大きな谷間である。


 これはブラックホールですか? 俺の視線が勝手に吸い込まれていくんすけど。


 必死に視線を下げない様に抗っていると、抑揚のない声が俺の耳に入ってくる。


「師匠の変態。おっぱい勇者」


 おいコラァッ!! 誰がおっぱい勇者じゃ!! 


 勘違いされちゃ困るぞ? 俺は大きいのも好きだが小さいのもいけるッ! そもそも一番重要なのはバランスだ。その体型に合った一番魅力的な大きさ、形をしている事こそが、何よりも大切なのである。

 だから俺はメリーの慎ましいのも大変魅力的だと思います。

 メリーのドレスは深緑色だ。スッと体のラインに沿ったデザインは、彼女の細く引き締まった体を魅力的にしている。


「やぁ、アリスとメリー。ドレス姿が似合い過ぎていてビックリしたよ。今夜の二人はとても綺麗だよ」


 ふぅ、いきなりこんな台詞をスラスラと言える俺。イケメン過ぎて困りますわ。こりゃ麗しの貴族令嬢達もほっときませんわな。


「まぁ、ケイ様ったら。お上手なんですから……」


「そんなお世辞、通用しない」


 俺の褒め言葉に、アリスは頬を染めて恥ずかしがるが、その口角は上がっていて嬉しさを隠しきれていない。うん、可愛いです。

 メリーの方は相変わらずの無表情だ。


 全くこの弟子はブレないなぁ。俺が羞恥を捨てて歯の浮く様な台詞を言ったんだから、もうちょっと喜んで……ん? よく見るとこいつの頬、若干赤みを帯びてるな。


 パッと見ではいつもと変わらぬ無表情。がしかし、彼女の頬をよくよく見てみると、そこだけ他の場所よりもほんの僅かに紅くなっているのがわかる。


 ははぁ〜ん? そうでもない振りして、実はちゃんと嬉しがってんじゃんよ〜。


 ここは師匠として、弟子に対してしっかりと教育をしなければならん! 嬉しさは表情にきちんと出さないとってな!


 俺はなるべく柔らかい笑みを心掛けて、メリーにスッと近付いた。


「お世辞なんかじゃないさ。普段のメリーも可愛いけど。今夜の君は格別さ。本当だよ?」


「んな! なななな、何を言っているか、分かりゃない」


 無表情ながらにも慌てるメリー。うん、これはこれで面白いし可愛い。分か『りゃ』ないだってさ。これはちょっとハマってしまいそうだな。


 キョロキョロと視線を泳がすメリーに、俺の悪戯心が疼き始める。

 しかし、俺が次の口撃をメリーに仕掛ける前に、パーティー会場の前方の演台に国王が姿を現した。それを見た晩餐会出席者は皆一様に静かになった。


「今宵はよくぞ集まってくれた」


 国王は一旦言葉を区切り、会場内をグルッと見渡す。


「皆も知っての通り、今日は魔物の襲撃という事件が起こった。しかし、それは迅速に対処された。それはひとえに、我が王国の召喚に応じてくれた勇者。ケイ・ナロ殿による功績だ」


 俺の方へと手を向けながら話す国王。その瞬間、俺の周りにバッと一瞬でスペースができる。


 もう辞めてよそういう紹介は〜。そんなに注目浴びたら俺照れちゃうじゃん。


「そしてケイ殿には魔王殿とも戦ってもらった」


 今度は自分の隣へと手を向ける国王。すると会場の脇から、黒いドレスを身に纏った魔王が姿を現した。


 ウオォォォォーーッ!! でたッ! 魔王!! 可愛い! 美しい! 素晴らしい!


 突如の魔王登場に俺のテンションは爆上がりしてしまった。

 てか、今の魔王は反則級の美しさだ。只でさえヤバいのに、それがドレスで着飾りなんてしたら、それはもう可愛いという名の兵器だ。……いや、意味分んねぇな。何言ってんだ俺。


 とにかく今の魔王はやばい! あのドレス似合いすぎだろ! スタイリストさん誰だよ、マジでグッジョブ!


 黒を基調とし、所々にアクセントとして赤が入っているそのドレスは、上半身はピチッと肌に密着していて、彼女の細くも悩ましいプロポーションを強調している。そして腰から下のスカート部分はふわっと広がり、まるで黒薔薇のようだった。


 俺は国王の演説などそっちのけで、只々魔王のその姿を見つめ続けていた。


「ケイ殿の強さは、魔王殿も認めた。皆喜べ! 今まで我が人類は、永く冷たい夜を過ごしてきた。しかし! それも今日までだっ! ケイ殿という希望の力を手に入れた我らは、明日よりかつての栄光を取り戻すための戦いを再開するっ! 今日はそれを祝う場だ! よく食べ! 良く飲むがいい」


 国王は熱弁の勢いそのままに、自身の右手を高々と掲げる。その手にはグラスを持っている。


「人類の新たな夜明けを祝して。乾杯!!」


『乾杯!!』


 国王の乾杯の音頭に、会場の人達も習ってグラスを掲げ、そして中の酒を煽る。


 え? もしかして乾杯まだだったの? 俺もう飲んじゃってたんすけど……なんかすんません。は! てか俺普通に飲んじゃってるし! 未成年なのにお酒飲んじゃったよ!!  ……ま、いっか。ここ異世界だし。


 乾杯前に一人だけ飲んじゃうという、ちょっと恥ずかしい思いをしていると、先程まで演台の隣にいた魔王が俺の側まで来た。それだけで俺はもう心臓バクバクです。


「勇者よ。お主の名はケイと言うのだな」


 魔王は朗らかな笑みを浮かべて、俺に話しかけてくる。


 もう辞めてよ〜。俺にはその笑みが辛いんだよ〜。可愛すぎるんだよ〜。


 というより、なんでアリスとメリーはちょっと遠慮した感じで後ろに下がってんの? 魔王って敬意を払うべき相手なの?


「ケイよ。改めてもう一度言わせてくれ。お主の戦いは見事であった」


「君も中々に強かったよ。あの槍さばきはかなりのものだった」


 それと微笑みね。あれに俺は、瀕死状態まで持っていかれました。


「ふん、お主にそう言われても嫌味にしか聞こえんな」


 魔王は、俺を睨むようにして言った後、すぐにその表情を崩し、悪戯っぽい笑みを浮かべる。もうそれ反則! 俺、心臓発作起こしますッ!

 と、今度は不満そうな表情に変える魔王。コロコロと表情を変えて、可愛いな! もうっ!


「ところでケイ。お主、妾に何か言うべき言葉があるのではないか?」


 え? 言うべき言葉? 結婚してください? 人生の伴侶になってください? Will you marry me? う〜ん、一体どれを言えばいいのだろうか?……って、違うか。


「魔王、そのドレスとても似合っている」


「うむ。お主も格好良いぞ」


 はうッ! 魔王に褒められると威力百倍だぜ。

 そんな感じで、俺が悶絶していると、会場内に音楽が流れ出した。その音楽を聴いて、魔王が俺に意味ありげな視線を寄越してくる。


 辞めてくれ! 俺をそんな目で見ないでくれ! 君はそんなにも俺を殺したいのか! でもこれってあれだよね? 誘わないといけないやつだよね?


 俺は全身全霊の勇気を振り絞って、魔王の前に跪くと彼女の前に手を差し出す。


「どうかこの俺と、一曲、踊っては頂けないでしょうか?」


 僅かな間の後、俺の手に少しひんやりとした柔らかい物が乗っかる。


「喜んでお受けしよう」


 そう言って微笑む魔王は、俺の目にはもう女神のように映っていた。


 いや、魔王なんだけどね!

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