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第4話 人類最強、魔物を爆破する

 異世界にはいくつかの欠かせない要素がある。

 一つ目は美少女。これは、最も重要な要素である。

 そして、冒険者ギルドだ。理由は言わずもがな。その他には、盗賊や冒険者崩れの輩というのも異世界を盛り上げるのに一役買っている。また、これらには裏路地がセットになっている場合が多い。


 ふらっと立ち寄った裏路地で、荒んだ男どもに襲われる美少女。颯爽と現れる俺! くぅ〜、早くこんな場面に遭遇してぇ〜。もはや異世界において、その出会いは偶然のような必然である。


 とまぁ、このイベント発生はまだ先の楽しみとして置いておいて。

 異世界において重要な要素はまだある。それが『魔物』の存在だ。

 異世界と魔物、この二つは一心同体といっても過言ではない。異世界にやってきたチート持ちの主人公が、最初にその力を振るう相手、それが魔物である。常識はずれの魔法で爆砕するのも良し、圧倒的剣術で一方的に切り刻むも良し、討伐方法は選り取り見取りである。

 そして、それを見た周りの人が「あ、あの魔物を瞬殺だと……!」と驚愕し、それを主人公が「あれ? 皆んなどうしたの?」と白々しくポカンとするのだ。


 俺も今のうちからポカン顔練習しとくかな?


 取り敢えず、今のところ異世界テンプレを爆進している俺も、例に漏れず魔物と戦うことになった。


「まぁ戦うのは全然構わないんだけど……数多くない?」


 今俺の視界が魔物で一杯なんですけど。そりゃもう、小さいのから大きいのまで大量なんですけど。何すかこれ? 8時だヨ! 全員集合! 的な感じですか? ちょっと古過ぎるか。今の若者には通じないなこれ。……俺も今時の若者なんだけどね!


「確かに数が多い。これは異常」


 俺の斜め後ろにいるメリーが、俺の言葉に同意を示す。


 やっぱり異常なんですね。せっかく城壁の上で仁王立ちして、腕組んでビシッと魔物を待ち受けるポーズとってるのに、若干足が震えてしまってますよ。俺の格好良さ半減ですよ。


 俺は今、王都を守る城壁の上にいる。

 他には、テンプレート王国の第三王女のアリス、冒険者ギルド最強のメリー、それと王国騎士団の方々が多数。

 それら全員が城壁の上に布陣して、魔物の大群を迎え撃とうとしている。


 てか城壁めちゃでかい! 高さは目測十メートルくらいで、幅も七、八メートルはありそうだ。それが何百メートルも王都を囲う様に伸びてるもんだから、最初見たときは「うひょ〜」って変な声が出ちゃいましたよ。

 そして今、ハイテンションで城壁の縁で仁王立ちしたのを後悔してます。十メートルの高さってあれですね。死を実感する高さなんですね。実は俺、高所恐怖症なんです。


 俺の足の震えの原因は、魔物三割、高さ七割です。高い所にいるときに下を見ると、スゥーって吸い込まれそうになるのはなんでなのだろうか?


「こんな魔物の襲撃、生まれて初めての経験」


 メリーは基本的に無表情で、声の抑揚も少ないから怖がってんのか、それとも勇んでるのかよく分からん。


「ケイ様……」


 うん、逆にアリスは不安にかられているのが非常に分かりやすくて、大変よろしい。心細げにチョコンと俺の袖を掴んでいるのも高ポイントです。可愛いです。


 ここはあれだ、俺の男気を見せるチャンスだっ!


「アリスさん、こんな魔物なんて俺が一蹴してやりますよ。だから安心してください」


 俺のイケメンボイス炸裂ッ! そして、ここで間髪入れずに右手を持ち上げる! 狙うは彼女の頭の頂点! 秘技『頭ナデナデ』発動ッ!!


 説明しよう。秘技『頭ナデナデ』とは、異世界にやってきた主人公が持つチート能力の一つである。なんかそれっぽいセリフもしくは雰囲気の時に、優しく頭を撫でることによって、ヒロインを一瞬にしてチョロインへと変貌させてしまう、それはもう恐ろしい能力なのである。御使用の際は、用法用量を守り、正しくお使いください。ポンピーン。

 

「あっ……」


 案の定頭を撫でられたアリスは、顔を真っ赤にして俯く。


 決まったぁ! 秘技『頭ナデナデ』クリティカルヒット!


 アリスは暫く顔を俯かせたあと、少し顔を上げて俺を見てくる。

 頬を染めての上目遣いは、反則ですぜ。


「アリス……と呼んでくださいませ、ケイ様」


「え⁉︎ でもさすがに一国の王女様を呼び捨てにするわけには……」


「だめ……ですか?」

「ダメじゃないです。呼ばせていただきます」


 こんな美少女に、上目遣いでウルウルと懇願されちゃあ、断れませんよ。そりゃ即答ですよ。

 ふへへぇ、という内心の気色悪い笑いを悟られぬ様に踏ん張っていると、俺の左腕がグイッと引っ張られた。


「私も、魔物怖い。すごく、不安」


 俺が振り向くと、そこには無表情銀髪娘が間近に迫っていた。


 いやメリーさん? あなた、言ってる内容と表情が全然一致していないのですが?


 そんな俺の内心ツッコミをよそに、メリーは自身の頭の頂点をグイッと俺の方に向けてくる。


 これはあれですよね? 撫でろって事ですよね?


 俺は徐に左手をメリーの頭に乗せると、ゆっくりと左右に動かす。

 なにこれ! 髪の毛めっちゃサラサラなんですけど! 触り心地最高なんですけど!


「とても気持ち良い。心が安らぐ」


 俺がワッシャワッシャと頭を撫でていると、メリーはスッと目を閉じた。


 う〜む、この反応は喜んでるのかな? 相変わらずの無表情だから分からん。でも若干口角が上がっているような、いないような………うん、分からん。分からんけどあれだな、なんか猫みたいだな。思わず喉元も撫でたくなっちゃうなこれ。さすがにそれやったら変態か。


「ケ、ケイ様……」


「ん?」


 俺が夢中でメリーの頭を撫でていると、隣から遠慮がちに名前を呼ばれた。視線を向けてみると、頬を染めたアリスが、少し俺の方に頭を傾けながらこっちを見ていた。


 あ、はい。撫でろという事ですね。


 俺は彼女の思いを汲み取って、頭を撫でてあげる。

 俺の左手は今、美少女の頭を撫でている。右手もまた、美少女の頭を撫でている。二人の美少女の頭を撫でている…………異世界最高っス!! 俺を轢いてくれたトラック、マジ感謝!! いや、やっぱ轢かれた後有り得ないくらい痛かったから、トラックへの感謝は取り消し。


 にしても、なにこの状況? ここ本当に異世界? 天国の間違いじゃなくて? は! 実は俺が頭撫でているこの二人は天使! 天使ちゃんなのか⁉︎ 


 そう考えるとしっくりくる。やっぱり俺は、トラックに轢かれて異世界に転移したんじゃなくて、成仏して天国に来たんだな。日頃から良い行いを心掛けていたおかげだな。拾った一円玉を交番に届けていてよかった。あの時のお巡りさんちょっと迷惑そうだったけど。


 本当にもう、これで目の前に大量の魔物っていう地獄のようなシチュエーションじゃなかったら、ここが天国って思い込んでましたよ。


 というか……魔物の存在を忘れてました。

 そうでした、俺魔物の討伐に来てるんでした。美少女の頭撫でてる場合じゃなかった。


 王国騎士団の皆さんも、俺たちをスルーしてないでちゃんと注意してくださいよ。もう魔物が城壁のすぐ前まで来ちゃってるじゃないですか。もう姿形がはっきり分かるまで近づいてますけども。一番前にいる魔物なにあれ? ベヒーなモスって感じなんすけど。あ、目が合っちゃった。ちょー怖い。


「ケイ様、魔物達が……」


 今まで気持ち良さそうに頭を撫でられていたアリスが、怯えたように俺の腕をギュッと掴んできた。

 アリスさんや、あなたがそういう事するから、俺は魔物の事を忘れちゃうんですよ? だからもっと強く握っても良いですよ?


「大丈夫だよ。問題ない、俺に任せてくれ」


 良い感じのセリフが決まったぜ。今の俺の格好良すぎ。


「勇者の力。お手並み拝見」


 おう! よく見とけ無表情娘! その無表情を驚愕の顔に変えてやる! そして俺に惚れろ! いえ、惚れて下さい。お願いします。


 と、そろそろ真面目にやらないと不味そうだ。魔物の群れの先頭が、もうすぐそこだ。


 えーと、とりあえず魔法で蹴散らせば良いかな? やっぱり最初はド派手に爆発魔法といきますか!

 爆発といえばやっぱり水素でしょ。これを酸素と混ぜて着火、ドッカーンと大爆発。魔物たち木っ端微塵。うん、これだ。これでいこう!


 まずは、俺の中に渦巻いている魔力を外に解放する。どんだけ魔力使えば良いんかな? なんか幾ら魔力放出しても全然底が見えんのですけど。


「な、なんだこれは⁉︎」

「凄い! 凄い魔力量だ!」

「勇者の力とはこんなにも凄まじいものなのか……」


 ふむ、なんか王国騎士団の方々がざわついてますな。


 なんすかなんすかぁ? そんなにビックリしちゃってぇ〜。驚くにはまだ早いっスよ? これから、この放出した魔力を水素に変換して、周りの空気から酸素を拝借してっと。良い感じに混ぜて混合気体にして、これで準備完了です。


「魔物どもよ。この俺と対峙してしまった己の運命を嘆くが良い……」


 カッコ良いセリフとともに指をパチっと鳴らす。それと同時に水素に着火!


 ドッッゴオオオオオォォォォーーーーーーッッ!!!!


 はっはっは! 見たかこの爆発っ! ハリウッド映画も真っ青の超巨大爆発だぜ! ……って、あっっっつ!! めちゃくちゃ熱いんですけどっ!!  凄い熱気がここまできたんすけど! そりゃこんな大爆発起こしたら、普通は熱気が来るのは当然だけど、そこはご都合主義でなんとかしてくれよ。自分の魔法の熱気で悶えるとか、かなりダサいじゃん。


 でもまぁ、今の魔法であらかたの魔物は炭と化したな。

 辛うじて生き残った魔物も、今の大爆発にびっくらこいて、向きを180度変えて一目散に逃げている。


 ふぅー、これにて一件落着。


 俺は満足そうな顔をして、みんなの方を振り返る。するとそこには、呆然と立ち尽くしていらっしゃるアリスにメリー。そして、王国騎士団の方達。


 は! これはあれだ! くそ、練習せずに一発本番でやる事になってしまうとはっ!


「あれ? 皆んなどうしたの?」


 俺の渾身のポカン顔、炸裂!!

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