第3話 ギルド最強、人類最強に出会う
俺は目の前のテーブルに乗っている、真っ二つに割れた魔力水晶に目をやる。
これってあれかな? 賠償請求とかされちゃうのかな?
魔力水晶っておいくら万円するんでしょうかしら。でも俺はただ魔力を流しただけだし、別に俺が悪いわけじゃないんじゃね? という感じで、俺が悩ましげな表情を浮かべていると、部屋の扉が勢いよく開いた。
バタンッ! という音に驚いて俺が目を向けると、そこには銀髪セミロングの女の子が立っていた。
異世界美女3人目の登場です。
今回の少女の注目すべき点は、やはりその髪でしょう! 日本はおろか、海外でだってなかなか拝む事ができない、そのナチュラルシルバーヘアーは美しいの一言に尽きる。透き通るような白い肌と銀髪の相性は抜群で、それは目の前の少女を神秘めいた女性にしていた。
「レビュー、今この部屋から異常なほど濃い魔力を感じた。一体あれは何?」
勢いよく部屋に入って来た割には、静かで抑揚の少ない口調で話す少女。
「メリー、貴方来ていたのね」
レビューさんは、銀髪少女の方を向いて、眼鏡をクイっと上げる。
あの女の子の名前はメリーって言うのかな?
「今のは勇者であられるケイ様が魔力放出を行なったのです。なので特に心配するようなことはありません」
レビューさんの言葉を受けて、メリーと呼ばれた女の子はテーブル上の割れた水晶を一瞥してから、俺の方へと近付いてきた。
うん、まるで猫のような切れ長の目と無表情が合わさって、人形のような可愛さです。
俺が彼女の美貌に見惚れていると、どんどんと距離を詰めてくる。俺の目をしっかりと見ながらどんどん近付いてくる。どんどん近……ってちょっと近付き過ぎません?
いやこれ、俺がちょっと顔を前に倒したら直ぐにキスできる距離なんですけど? この子にパーソナルエリアってものはないんでしょうか? 俺的には美少女が近付いてくれるのは、全然ウェルカムなんですけどね。
でもこんなに整った顔を至近距離で見せられたら、流石に照れます。
大丈夫かな? 俺今顔真っ赤になってない? てかこの子、さっきから俺のことガン見なんですけど、瞬きしないの? ドライアイになっちゃうよ?
「両手、出して」
銀髪少女が急に言葉を発する。顔は相変わらず無表情。
「え? えっとこうでいいのかな?」
俺は言われるがままに両手を彼女の前に差し出した。
するとなんと、いきなりこの銀髪娘は俺の手を握ってきた。それはもうガシッと情熱的に。
どうしましょう、ついにこの俺にもモテ期が来ちゃいました。初対面の女の子に手を握られちゃうとか、もうこれ人生に三回あると言うモテ期が一つにまとまって来ちゃってない? 大丈夫これ?
「魔力、流して」
手をつないでいる女の子が、冷めた声で言う。
あ、はい。すいません、俺今めっちゃニヤついた顔をしてました。
この子はどうやら俺の魔力量を知りたいだけらしい。
いいじゃない、少しくらい夢見たっていいじゃない。女の子から手を繋がれるとか、人生初体験だったんだから、勘違いしたっていいじゃない!
俺は心の中に湧き上がる悲壮感と共に、自身の魔力をセイヤッと銀髪少女に流し込んだ。
「……ぅあ、んんっ……」
俺の魔力が通った瞬間に、目の前の女の子はなんとも艶かしい声を漏らした。
……エェッッロォ!! 何今の超絶エロかったんすけど! てか今も若干頬を赤くして、呼吸もちょっと乱れているし……エッロ!! なんなんですかこの子? 俺はどうすればいいんですか? 狼ですか、狼になればいいんですか?
「もう大丈夫、手、離して」
若干震える声で言う銀髪少女。
そんな艶のある声、出さないでください。
俺は彼女の要望通り、すぐに手を離す。
若干気まずい感じで視線を泳がしていると、銀髪少女が呼吸を整えてから話しかけてきた。
なんかさっきよりも一歩程度距離が縮んでるんですけど? もう密着状態ですよこれ?
「さすが勇者、あなたの魔力量は規格外。すごく大きいのが、私の奥まで入ってきた……」
魔力ですよね? 魔力量の話ですよね? 分かってます。分かっているんですけど、なぜか背徳感を感じてしまうのは男の悲しい性のせいです。なので、あなたも最後の方だけ頬を染めて、恥ずかしそうに言うのをやめてください。
「メリーシュカン・ソウクレ」
「……え?」
いきなり銀髪少女が単語を発してきた。
俺はいきなりの発言の意味がわからずに、ポカンとした表情をしてしまった。
「私の名前。でもフルネームは変だから嫌い。メリーで良い」
成る程、自己紹介だったわけか。
この銀髪少女あらためメリーはちょっと、と言うかかなり言葉足らずな所がある。
「俺はケイだ。ケイ・ナロ。えーっと、よろしくメリー」
俺はちょっと躊躇った後に、右手をメリーに差し出した。女の子に握手を求めるのは、ちょっと緊張してしまう。
メリーはチラッと俺の右手を見た後、両手でギュッと握ってきた。
「私は強い。でもあなたはもっと強い。あなたこそ人類の希望」
はいわかりました。ですのでそんな情熱的に手を握りながら、見つめてこないでください。顔近付けないでください。もう、キスしちゃうぞッ!
調子乗りましたごめんなさい、そんな勇気ないです。
と言うか、自分の事を強いって言うメリーは一体何者なのだろうか?
そんな疑問が俺の表情に出ていたのか、彼女についてレビューさんが説明してくれた。
「メリーはギルドに所属している冒険者の中で頂点に立っています」
「そう、私はギルド最強。そして序列三位」
んん、序列三位? 何だそれは? さっきギルド最強って言ってなかったか? それだったら序列は一位になるのではなかろうか。それとも強さとはまた違う基準みたいなのがあるのだろうか。
その事について聞いてみようとした俺は、不意に隣からクイっと腕を引っ張られた。
「メリーシュカンさん。そろそろケイ様を離していただいてもよろしいですか?」
隣を見ると、少し頬を膨らませたアリスが、俺の腕を引きながらメリーの方を見ていた。
え、この子もしかして嫉妬してる? やっぱりモテ期きてますかこれ?
「む、アリス・ブクマクレ・テンプレート」
メリーは視線を俺から外して、アリスの方を見る。
「勇者は人類の宝。独り占めは、ダメ」
「わわ、私は別にケイ様を独り占めしようなどとは……」
一瞬で顔が真っ赤なってしまったアリス。うん、とても可愛いです。
「私にはこれからケイ様をお父…国王様に会わせないといけませんので、そのようにくっ付かれておりますと、いつまで経っても案内できませんわ」
アリスさんや、あなた今、国王のことをお父様と言おうとしましたね? わかるよその気持ち、俺も小学生の頃、担任を呼ぶ時に間違えてお母さんって言ったことあるよ。それから三ヶ月間俺のあだ名はマザコンでした……なんか目から汁が出てきそう。
「ですので、メリーシュカンさん。良い加減にケイ様を離して……っ下さい!」
アリスはそう言いながら、ちょっと強引にメリーと俺の手を引き離した。そして今度はアリスが俺の手をギュッと握ってくる。ふむ、モテる男は辛いね。
いや〜異世界感謝! ハッピー異世界、ビバ異世界!
メリーは無表情のままだが、心なしか目を細めて俺とアリスが繋いでいる手に視線を向ける。
「勇者を謁見の間に連れて行くのに、手をつなぐ必要は皆無」
「い、今は人通りが多いので、こうして逸れないようにする必要が有りますの!」
「馬車を使えば良い」
「うぅ、け、経費削減ですわ!」
「王族なのに貧乏……ぷっ」
「今侮辱しましたわね!」
「事実」
「うぅぅ〜〜ッ!!」
何だろう、この二人は仲がいいのかな? お互いに初対面って感じではなさそうだ。
でも、そろそろ争いを納めてくれませんかね? もう俺の為に戦うのはやめて!
と、俺の願いが通じたのか、アリスがプクッと頬を膨らませながら俺の方を向いた。激おこプンプン丸ってやつですか? 可愛いです。
「ケイ様、こんな女は放っておいて、さっさと行きましょう!」
王女様、少し口調が荒くなってますよ。
俺は半分アリスに引き摺られるように扉の方へと向かう。
あのアリスさん、俺の腕を抱えるように掴んでるせいで、ちょくちょくやわっこいのが当たるんですが? 自分のが大きいという自覚ありますアリスさん?
そんな感じで、部屋を退出しようとしたその時、再び扉が勢いよく開いた。
何なんすか、この部屋は勢いよく扉を開けないといけない、なんてルールがあるんすか? あるなら先に言ってよ、俺普通に入室しちゃったよ。
扉を開けたのは汗だくになった、おっさんだった。
なんだ、おっさんか。興味ねぇや。
「大変です! この王都に魔物の大群が接近中とのことですッ!!」
なに! 魔物の襲撃だと! それは興味あります、大有りです!!